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シンポジウム「大学生とセクシャル・ハラスメント、加害者を出さない教育」

 午後はシンポジウム『大学生とセクシャル・ハラスメント、加害者を出さない教育』と全体会が行われました。全体会では、「キャンパス・セクシャル・ハラスメント等 処分報道資料」2010.9ー2011.8と「裁判資料2011」も配布され、説明もされました。前者では39件の、後者では119件の報告がありました。これは、大学など高等教育の場でのことであり、高校までの学校での件は含んでいませんし、裁判資料には提訴・起訴報道は含まれず、裁判のみです。私は、その数の多さに、改めて仰天しました。

 また、キャンパス・セクシャル・ハラスメント全国ネットワークは、2002年、第8回全国集会で提言「被害を受けた人の権利保持と権利回復のために」が、採択されています。そして2009年、第15回全国集会にて改めて提言をしています。大学に対し、また学会、日本学術会議、高等教育評価機関、文部科学省、内閣府男女共同参画局、司法機関・弁護士会、マスメディア、医療機関等にたいしても。これらを詳しく読むと、現場で多くの人々がこれについて尽力していることがわかり頼もしく思いますが、一方、それでも日本においてのこの分野は本当になかなかなのだということもわかります。

 そのような頼もしい会ではありますが、それにしてはどうしたの?というようなシンポジウムで、これにはがっかりしました。

シンポジストは今注目の京都教育大学関口久志さんの「被害・救済教育から加害防止教育への発展を」
高等学校養護教育のすぎむらなおみさんの「正しい性知識」「科学的な性教育」で、学生はかわるのか?」
首都大学東京の江原由美子さんの「どう進める?大学のジェンダー教育・性教育」

 受験勉強ばかりしていた大学生がほとんど性教育を受けていないというのは、村瀬先生の「恋人とつくる明日」の中にもしっかり書かれています。村瀬先生の講座には、受講希望の学生たちが殺到して抽選になっているほどです。大学生だって教育を 受けたがっていると私は考えています。でも、全国的に大学生に対してはほとんど出来ていないのが現状でしょう。

 私がとくに唖然としたのは、高校養護教諭の発表でした。「進学校の生徒はきっちり避妊ができている」「定時制の生徒は・・・」などなどのステレオタイプ的な学校や生徒の捉え方には本当にびっくりしました。「科学的な性教育」の科学の捉え方はまったく間違っています。

 卵子に精子が入って受精するという教え方も、「卵子が精子に向かって行って、勝者が入りこむことができる」から「卵子の殻が弱いところにいた精子が入る」から「それではあまりに女性が受身ではないか、卵子だって自分で動くんだ、動いて精子を選別しているんだ」という風に変わって行っている、こんな風に科学が変わっていると説明しました。

「それでは女性があまりに受身ではないか」というのは、科学ではありません。卵子が動くのは、卵管の繊毛の働きや圧の関係であって、自ら動く器官を卵子は持っていません。

 「生徒たちはよく知っている」の発言も??でした。この情報社会で沢山の性に関しての情報が撒き散らされており、ネットなどでそれらの情報にふれてはいても、私は若者たちは無知であると思っています。たとえば「コンドームなんて生徒は知っている、知ってはいても使わないだけ」と彼女はいいましたが、使わないこと、行動もちゃんとしなければならないということを若者は知っていない、行動をしなければならないのだということを知っていないということではないでしょうか。コンドームなんて、言葉では小学生だって知っています。

 私のデータで、避妊しなかったものの妊娠率、コンドームを使ったり使わなかったりした者の妊娠率、コンドームをきっちり使ったものの妊娠率、それらを数値として出すと、若者はびっくりします。使っても13.5%のものが妊娠するというデータには「使えば大丈夫と思っていた」とか。

 性感染症、検査をして全部の性感染症にかかってなかったという人がいます。でも、尖圭コンジローマや性器ヘルペスの検査は出来ないということはほとんどの若者は(大人も)知っていません。

 性交からどれだけたったら出産の予定日になるのか、いつまでが人工中絶ができるのか、女性にとって切実なこの数え方も教えられていません。10ヶ月でうまれると思っていた、まだ中絶は出来ると思っていたけど、間に合わなかったという若者たちがどれだけいるか。

 科学をちゃんと教えることがいかに大切なことか。

 それに、進学校の生徒がちゃんと出来ているのであれば、多くの大学での、多くのDVや人工中絶を受けなければならなくなった学生たちのことはいったいどう考えるのでしょうか。

 私は、進学校であれ、定時制の高校であれ、底辺校であれ(彼女が言った言葉です)、どんな学校で学ぶものにも、等しく性教育をして欲しいと思っています。彼女の発言に対して、フロアから涙ながらの抗議があったことを大会関係者はどう考えるのか、知りたいところです。

 それに、「性教育とともにDVについても教育しなければ」というフロアからの発言にも私はびっくりしました。DVは、性教育の大切なテーマです。性教育と別ものでは決してありません。人と人とのいい関係作りが性教育の究極のテーマであるといってもいいでしょう。

 そんなこんなで、私は今回のシンポジウムは??だったのです。最初からどうしようもない会であればそれほど期待はしないのですが、期待が大きかっただけに、後味が悪いものになりました。


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コメント

 先生こんにちは。
せっかくの会が、そのような内容だったとは・・・。
今県内一番の国立大学の学生カップルの妊娠をみていますが、出産が近くなり、男性は逃げ腰です。「公務員試験を受けるから。」と家に帰りません。自分の子供の責任を果たせない人間に、公務員になる資格があるのかわかりません。

でも、同じ大学の学生が、育児体験に目を輝かせて通ってきています。(男子学生含む)いつか子どもを持つ自分を想像すると、誇らしい気持ちになると言ってくれました。どんな教科より、これからは生活に根差した「性と生」の教育が大切ではないかと痛感しています。

投稿: ワタナベ | 2011年9月 7日 (水) 21時56分

先生、こんばんは。
以前、先生の滋賀での研修会の件でコメントさせてもらった高校の養護教諭です。
今回の、養護教諭の発表内容驚きです。
高校生は、どこの学校の生徒でもきちんとした性教育を受けていないと、性について無知です。
彼らには、コンド-ムの使い方などは具体的に教える必要はないと思います。
最低限教えないといけないことは、妊娠週数の数え方・性感染症には誰にでもかかる可能性があること・健康な男女が性交したら1度で妊娠する可能性があることだと思います。
授業時間の確保を言われる中、頑張って時間をとって性教育を実践しています。
それでも、妊娠する子はいます。
時々、情けなくなりますが、できるだけ頑張っていきたいです。
また、先生のお話を聞きたいです。先生のお話は私の意欲の元ですので。

投稿: ジェンダ-フリ- | 2011年9月 8日 (木) 21時13分

「性交したら妊娠する」、「妊娠すれば自分の人生だけでなく、相手や自分の家族、相手の家族まで巻き添えになる」という、そんな当たり前のことが何故わからないのか。それなのにどうして「性について知っている」などとは。私にもわからないことや知らない世界がたくさんありますので今後も勉強して行きたいです。

投稿: リラックマ | 2011年9月 8日 (木) 22時29分

ワタナベ先生
コメント有難うございます。医療の現場にいる私たちは大学生たちがほとんど教えられていないということを知っていますね。お互い、地方で地に足をつけてがんばりましょうね。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2011年9月 9日 (金) 08時08分

ジェンダーフリーさま
以前のコメントもよく覚えています。有難うございます。私は私でこのようなコメントをいただくのが、力になります。感謝です。困難な中での現場での実践。うれしいです。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2011年9月 9日 (金) 08時12分

リラックマさま
私たちが思うそれ以上に、社会には反対の情報があふれている。それにより多くの人たちの(大人も子どもも)
意識が作られているということなのでしょうね。いつも有難うございます。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2011年9月 9日 (金) 08時14分

こうのさんも、すぎむらさんも、とても大切な取り組みをされていると思うので、この記事に戸惑っています。
この春に出た、すぎむらさんの「エッチのまわりにあるもの―保健室の社会学―」(解放出版社)を読んでみていただきたいです。
シンポジウムでの発言がどういう流れの中でのものかは分からないのですが、すぎむらさんはとても丁寧に現実に向き合っておられると思います。

「どんな学校で学ぶものにも、等しく性教育をして欲しい」とおっしゃる際にイメージしておられる性教育を、すぎむらさんの現場で実践できると思われるか(生徒さんたちに届くと思われるか)、本を読まれたうえでのお考えをうかがってみたく感じました。

投稿: k | 2011年10月 5日 (水) 00時37分

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