「子どもの虐待死」
また幼児の虐待死が報道されて胸が痛いことです。今回の二歳の子が餓死した件。これとそっくりなことを私も経験したことがあります。この夫婦には他にも何人も子どもがいたようです。今回の妊娠、出産もほとんど健診を受けず、飛び込みのような出産だったと。
これと同じような出産は産婦人科医であれば誰しも経験のあることでしょう。そのようなときには、この赤ちゃんをこの女性が育てることができるのか見極めなければなりません。
私は、危ないと思うときには、直ちに児童相談所に連絡を取って、施設に預かってもらっていました。子どもの命がかかっている問題です。今でも、人工中絶が間に合わなくて、産むしかない、でも育てられないというケースはそうなります。一部、私はよくよく話し合い、考えてもらった上で、養子縁組のお世話をすることもあります。
でも、今回のように自分で育てるふりをするケースはとても厄介です。ある程度強引な力が必要になります。強引に説得して施設へ、というケースもありました。その見極めをしなければ。ますます産婦人科医の役割も大きくなります。
先日の性教育指導セミナーの県民公開講座での北村邦夫氏の講演で示されたデータです。
虐待による死亡は、0歳が一番多いし、その中でも0ヶ月の子が、そしてその中でも日齢0日の子が一番多いとなっています。
生まれてすぐの赤ちゃんの死亡です。その中の母子手帳をもらっていなかったというのが81.3%にもなります。
孤独な出産、赤ちゃんをどうしていいか分からずの行為なのでしょう。そう考えると、本当に胸が痛みます。
妊娠SOSの設置、さらには妊娠した行き場のない人が身を寄せられるシェルターなどの設置、その前に避妊の教育も・・・。課題は沢山あります。
昨日は、診療がとっても大変でした。患者さんの総数141人。いろいろな人がいました。人工中絶の紹介も三人。その一方では不妊の治療での人工授精の人。風俗で働く女性、子宮体がんの可能性のあるお年よりや、更年期でとてもしんどい人も・・・。性同一性障害の人へのホルモン治療や、早産しかけて緊急に紹介入院の人も、卵巣腫瘍の手術の紹介の人も・・・。
必死で診療をして、そしてきょうから夏休みです。今から、のびのびになっていた歯医者さんに行きます。私の体のメンテナンスをして、夕方から大分の河野の実家に帰ります。老いた母が一人でいますので・・・。
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コメント
要らない事ですが、この日に特定出来て様子が分かれば自分の事かと心配される方もある気がするので、ご配慮を・・・
投稿: とまと | 2011年8月12日 (金) 04時07分
虐待を取り上げていただきありがとうございます。
現在0ヶ月児の虐待死亡例が増えています。この問題は分娩後の啓発だけでなく、妊娠中に産科医・小児科医・行政による取り組みが大事と思います。妊娠中に小児科受診によるペリネイタルケアが少しは助けになるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
投稿: ひさまつ | 2011年8月12日 (金) 08時08分
こんにちは。人を産み育てることは重大な責任が発生することですので、自分がそれらの責任を果たすことができるかどうかを考えて行動して頂きたいです。
投稿: リラックマ | 2011年8月12日 (金) 19時24分
とまとさま
具体的にはどのことかと・・・。私はすべてのことを患者さんとその家族の方にはお話ししていますので・・・。ご忠告感謝です。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2011年8月14日 (日) 10時25分
久松先生
ありがとうございます。小児科医ですね。うーん、小児科医への妊婦の受診・・・。また小児科の先生への研修が必要になりますね。産婦人科への未受診、母子手帳ももらっていない人が圧倒的なので、小児科にわざわざ受診する人は0日での虐待死にはならないと思うのですが・・・。今一つ、産婦人科でできること、行政の仕事の整理をするのが先決と思います。また議論したいですね。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2011年8月14日 (日) 10時33分
リラックマさま
その通りなのです。それを世の男性達にもしっかり伝えたいと思います。コメントありがとうございます。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2011年8月14日 (日) 10時37分