「生まれて来なければ良かった」
昨日クリニックに、お母さんと一緒に11歳の男の子が来ました。
「今日は、ちょっと心が痛くて、学校に行けないというので、連れて来ました」と。
友だちに、「お前なんか信用できない。おまえなんかいなくていいんだ」と言われたそうです。子どもって、本当に残酷なことを言うものです。そして、彼は、
「僕なんか生まれて来なければ良かった」と言ったのだそうです。お母さんは、
「そんなことないよ。あなたのことは、沢山の人が信じてるよ。」と。そして、河野先生のところに行こう!と連れてきたのだと。
彼は、診察室に、小さく身をかがめるようにして入って来ました。彼と会うのは、3年ぶりでしょうか。私の選挙の時に街頭で演説をしていると、彼が来て、私をハグしてくれたのです。その時から比べて、大きくはなっていますが、全然元気がありません。彼は、少し人とコミュニケーションを取るのが苦手で、その分、とてもデリケートで傷付きやすいのです。
私は、会えて嬉しい、よく来てくれたね、と言って今度は私がハグをしました。そして、屋久島で買ってきていた手帳とボールペンのセットを院長室から取ってきて、渡しました。手帳の表面は、いるかが3Dとなって泳いでいます。そして、お母さんの診察が済むまで待合室で待ってもらいました。
診察が済んで、彼をまた呼びました。そして、お母さんのカルテに貼ってある、彼がお母さんのおなかの中にいるときの超音波の写真を見てもらいました。
「ほら、これ、12ミリ。これがあなたよ。小さいねえ。これが3センチになったあなた。それから、ほら、頭からお尻まで7センチ。大分大きくなったねえ。でも、これでもまだ小っちゃいよねえ。」
「そしてね、あなたを産もうとしてお母さんが頑張っていたとき、あなたの心臓が急に弱ってしまって、死にそうになったの。私は、びっくりして飛んでって。それでね、お母さんのおなかを切って、やっとあなたが死なないで生まれてきたのよ。」
というような話をしました。私は、あなたが無事に大きくなってくれるのがとっても嬉しい、とも言いました。
その彼のお母さんから、昨日の記事にコメントが入っています。彼が手帳に「成」と書いたと。そして、「わずか数cmのぼくをみた」と書いたと。これまで何度も「うまれてこなければ良かった」と言っていたのだと。うるっとしてしまいました。
どうぞ、彼が無事大人になりますように。傷つきながらも、ちょっとずつたくましくなっていけますように。まだまだこれから難しくなって行くでしょう。周りは、どうすればいいのでしょう。お母さんを通してでも、私も彼の成長を見守り続けたいのです。
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コメント
胸がうずく言葉ですね…。どうか、立ち直ってくれまように…。
そんなひどい言葉を投げつけた子の心も、心配ですね…。
あ、すみません。唐突ですが、おたずねさせていただきます。
大学受験生は、インフルエンザワクチンを二回接種した方が、安心だと思われますか?
お忙しいところ、申し訳ございません。
投稿: 美代美 | 2010年12月12日 (日) 00時04分
その男の子のポトリと落した涙がころころと転がって、きらきらきれいな宝石に変わっていくような気がしました。私も心から応援します。そしてたくさんの愛情に包まれたこと、少し羨ましいです。私が特別支援で関わっているのは、母親から、「産むんじゃなかった。」と罵倒され虐待され、学校でも辛いことを言われ、「生まれてこないほうがよかった。」と泣く子です。私は「あなたに毎日会えて嬉しいよ。」と抱きしめるだけです。そして一緒に絵を描いたり、色を塗ったりして過ごします。いつも力のなさに悲しくなりながらです。
投稿: スヌーピー | 2010年12月12日 (日) 07時16分
私の小2の息子も、今、いじめにあっています。
「死ね」「近くに来たら殺すぞ」
どうして命にかかわる言葉をこんなに軽々しく言えるのかと思うと、社会の病巣をみるような気がします。
幸い、私の息子は、今は、自分の命が大切なものだと理解してくれているようで、親も驚くほど心を強くもって、そのいじめっ子と対しています。
でも、心の傷は残るでしょう。
子どもの世界、親も学校の先生も、手が届かないところがあります。
どうすればいいのでしょう。。。
すみません。個人的なことで。
投稿: | 2010年12月12日 (日) 12時28分
何だか胸が締め付けられる内容ですね。
自分もそんな思いをずっと持ち続けていたので
さらに胸にしみました。
さて、息子のことですが、現在2歳半
2歳2ヶ月で妹ができました。
赤ちゃんがえりがあったり、泣き喚いたり、
私も、強く怒ってしまっておちこんだり・・・
が、先週から、急に
何を言っても「ハイ!」と返事をしたり
今時分は~をしているからまってね。といってきたり
意見が通らないときは、泣き叫んだりせずに
おこっとるんよ!といってきたり。
どうしたことでしょう。
急にです。
何か、今までと急にかわってしまって、
驚きです。
こういうものなのですかね?
色々受け止めてやれなかった部分があり
内にひめるようになったのかしら?なんて
おもってしまったり・・・
今年もあと少しですね。
先生も、もうひとふんばり
がんばってくださいね!
投稿: N | 2010年12月12日 (日) 13時46分
Hです。
先生,そしてコメントをくださった皆さん,
ありがとうございます。
生まれてこなくても良いいのちなんてひとつもない!
そう信じて,息子にもそう言い続けてきましたが,
何度もくり返しているうちに,
母である自分の方の心が折れてしまいそうになることがあります。
スヌーピーさんが支援しておられる子どもさんのお母さんは,
もしかしたら私の姿でもあったかもしれないと思います。
もしかしたら,私も息子に対して暴力をふるったり
ひどい言葉を投げかけ続けていたかもしれません。
息子の特性について診断を受ける前の私は,
うまくいかない子育ての全ての原因は自分にあると思い詰めていました。
けれども支援して下さる機関を知り,
特性についての正しい知識を身につけていくうちに,
息子と自分に向けていたマイナスな感情を前向きな気持ちに
少しずつ切り替えることができてきました。
何より,出産前に不安になっていた私に
「あなたなら大丈夫よ」とおっしゃってくださった河野先生のひとことが
もうだめだぁ!と思ったときに,心の底の方から甦ってきて,
私をしゃんと立ち直らせてくれるのです。
先生が私という人間を信じてくださったから,
私は息子とめぐり逢うことが出来ました。
「もう誰も信じない」という息子ですが,
「信じる」ことは途方もなくすごいパワーを生み出してくれるんだと言うことを
少しずつでいいから,身につけてほしいと願っています。
思春期の入口で,彼もイライラしている時も多く,
更年期vs思春期のバトルになってしまうこともしばしばですが,
いろんなことを乗り越えながら,
息子と一緒に,私も母親として成長していかねばと
あらためて思いました。
どうもありがとうございました。
投稿: H | 2010年12月12日 (日) 17時49分
美代美さま
せっかくコメントいただいたのにお返事が遅くなってすみません。小さな男の子のためのコメントありがとうございます。どうぞ、たくましく大人になってくれますように。私も祈るような気持ちでいます。
インフルの予防接種、一回で大丈夫です。今年のワクチンは五か月持つそうです。受験は、その間に済むのでは?本当に遅くなってすみませんでした。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年12月15日 (水) 22時26分
スヌーピーさま
ありがとうございます。どんな子でも、生まれないほうが良かったなんてことはないのです。どうぞ、しっかりフォローしてあげて下さいね。そうなんだ。本当に、中井さんの講演を聞いていただければよかったですね。親に育ててもらえない子たちへのかかわりがどんなに大切なのか。また機会があればお知らせしますからね。コメント、本当にありがとうございます。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年12月15日 (水) 22時31分
お名前がありませんが。
本当に胸が痛むことです。そんな厳しい状況にある子でも、親は絶対に味方。どんなときでも、あなたを守るからね、という態度をしっかり見せてあげて下さいね。それに支えられて生きていくことができると思うのです。それから、いじめは許されません。教師ともしっかり連携をしなければ。親子だけで悩んでいてはいけませんね。学校で起こっていることは、学校にも責任があることですので。また、ご連絡ください。お返事、遅くなってすみませんでした。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年12月15日 (水) 22時37分
Nさま
私、とってもいい子ちゃんになった息子さんのこと却って心配です。下の子が出来たときこそ、上の子をしっかりかわいがってあげて下さい。親を赤ちゃんに取られてとてもさびしいのですから。赤ちゃんが寝ているときは、上の子との時間をしっかりとってあげて下さいね。だけど、これは、上の子の宿命ですね。こうして、段々とお兄ちゃんになっていくのですね。ちょっとかわいそうだけど。また、何かあったら、ご連絡くださいませ。お返事、遅くなってすみませんでした。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年12月15日 (水) 22時43分
Hさま
かってに書いてすみません。彼のことがとても気になっています。その後いかがでしょうか。また、機会があれば彼に会わせて下さい。段々成長する彼に会うのが、私の楽しみでもあります。どうぞ、いじめっ子に負けないで!と祈るような思いで、身続けたいと思います。コメント、ありがとうございました。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年12月15日 (水) 22時46分
河野先生、お返事ありがとうございます!
インフルエンザの件も、よくわかりました。
さて、辛い思いをしている子どもさんの気持ちを考えると、胸がしめつけられます。
目を皿にして、子ども達の様子をみていかなければならない。
そう痛感しました。
本当にありがとうございます。
投稿: 美代美 | 2010年12月16日 (木) 23時46分