「性教協中国ブロックセミナー」から。③こんな時どうする?
昨日のリスクシートの一つ一つを中井さんたち職員は、子どもたちと共にティスカッションしながら考えます。
職員は、就職するとトレーニングを受けます。
生活の中の性に関する場面(事例集)
参考事例Ⅰ(1対1の対応例)
①小1の男の子が。一緒にお風呂に入っているときに「どうして大人は、おちんちんに毛が生えてるの?」と聞いてきました。あなたなら、どう答えますか?
②小1の女の子が、一緒にお風呂に入っている時に、「赤ちゃんは、どこから生まれるの?」と聞いてきました。あなたなら、どう答えますか?
③子どもたちと一緒にテレビを見ていて、小2の男の子が、生理用のナプキンのCMを見て「あれ、何なん?」と聞いてきました。あなたなら、どう答えますか>
などなど。まだまだシビアな質問も沢山あります。
参考事例Ⅱ(複数対応やドラマ的な対応例)
①小4の女の子、体格がよく、初経を迎えたようです。まだ、誰からも月経について教えられていません。泣いている彼女に、あなたなら、どう、対応しますか?
②小5の男の子が、スカートめくりをして、女の子を泣かしてしまいました。あなたなら、どう対応しますか?
③中2の男の子が、無声で汚してしまった下着をベッドの下に隠していたのを掃除のときに見つけてしまいました。あなたなら、どう対応しますか?
④洗濯のため衣類をより分けている時に、中2の男の子のズボンのポケットからコンドームが出てきました。学校から帰ってきた彼に、あなたなら、どう対応しますか?
⑤子どもの部屋を掃除しているとき、中1の男の子のベッドのフトンの下からポルノ雑誌が出て来ました。男の子を呼んで、あなたなら、どう対応しますか?
などなど。
実際、これらはすべて、子どもたちを育てる場では、両親のいる家庭でも起こりうることです。
今、施設にいる子たちの6から7割の子が虐待で入っていると初めの回にお話ししています。虐待には、身体的虐待、精神的虐待(おまえなんか、生まれなければ良かったなどとひどい言葉をあびせたり)、ネグレクト(無視、育児放棄など)、それに性的虐待の四つに分けられます。
が、実は、私の現場ではよくある性的虐待で入ってくる子は、実は少ないのだと。でも、このようなディスカッションをしているうちに、「私、こんなことされたことがある」と、ポツッと言って、発覚することがよくあるのだと。それまで言えなくて、ずっと一人胸に抱えていたのですね。
虐待された子に対しての施設での対応なのですが。実は、今、施設で国から決められているのは、こども6人に対して一人の職員なのだそうです。6人に一人と言っても、24時間、365日、ずっと。それに職員の休みなども入れると、毎日がとても大変で。たとえば、中井さんは、夜当直で泊まりの時は、朝一人で34人の子の世話をしなければなりません。着替え、洗面をさせ、御飯を食べさせて学校などに送りだします。中には、なかなか起きない子や、お腹が痛いという子もいたりして、それは大変だと。なかなか丁寧に、虐待された子への特別な対応などできる余裕がないといわれます。それはそうでしょう。私など、たった二人の子だって、朝は戦争のような騒ぎでしたもの。34人だなんて、気が遠くなるような状況でしょう。
アメリカでは、以前、虐待された子は、里親の元で育てられるようにしていたと。そしたら、またそこで虐待されたりという問題が起こったりして、今は、ケア・ホームで育てています。そこでは、子ども一人に対して、職員3人なのです。その中には、ケースワーカーなどの専門家や、育ちを観察する専門家もいると。
また、中井さんたちは、性教協の児童養護施設サークルで、年二回、二泊三日の研修をしています。そこには、全国の施設から、いつも定員100人満員、お断りをしなければならないほど、人が殺到します。さまざまな施設で問題が起こったりして切実なのでしょう。それでも、全国の養護施設は560。その施設の内、毎年職員が入れ替わって研修を受けに来るのは、60から70の施設からの参加者に過ぎないのだそうです。
私たちも、広島で中井さんをお招きして、児童養護施設の職員の方たちの研修を行いました。沢山の方に来ていただきましたが、それでも、継続していません。もっと私たちが努力をしなければなりません。
施設の子は、小さい頃の写真があまりないと。それなのに、学校で、赤ちゃんの時の写真を持ってきましょう、というような先生が結構いたりして。将来、恋人が出来たときに、子どもの頃の写真を見せ合うということもあるでしょう。だから、施設に入ってくると、すぐから、写真係などを作って、一生懸命に写真を撮るのだそうです。
思春期を乗り越えて大人になるということは、どういうことなのか、とか。もっと一杯貴重な話を聞きました。一線のエリート技術者を辞めて施設の職員になったという、中井さんの暖かさもしっかり感じとりました。本当に行ってよかったです。
中井さん推薦の本を三冊買って帰りました。右の本は、以前にも紹介しました。「クリエイツかもがわ」の「子ども達と育みあうセクシュアリティ〇児童養護施設での性と生の支援実践〇」先ほどあげた例の対応法など、丁寧に述べてあります。何冊あってもいいので、また買いました。真ん中が、「季刊セクシュアリティ」。この度の特集は、「子どもと性・児童養護施設からのメッセージ」です。左は十月社の「性の貧困と希望としての性教育~その現実とこれからの課題~」これは、共著です。中井さんの話もありますし、この度のスピーカーでもあった上村先生の携帯の話、アダルトビデオの話など。また、ここから裁判の原告団による障がい児への性教育の取り組みなど、現代の社会で無視できないことが満載です。買ってすぐ、必死で読みました。多くの方に読んでいただけますように。
長くなりましたが、主に養護施設の性教育についてのご報告でした。私は今日は診療を終えると、名古屋に行きます。明日、三重大学で、大学生への講演です。

コスモス薬局のHPの中に私の「体の相談室」と「著書」の販売があります。
ぜひ、覗いてみてください。

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コメント
明日の三重大学講演よろしくです。
やあ先生になりかわっての「御礼」です。(笑)
投稿: shiozy | 2010年11月24日 (水) 07時45分
先日、子供条例に反対する署名活動をしてました。
車の中からだから詳しくはわかりませんが、この条例で親子の絆がだめになるとか、保護者や教師がどうのこうのと……。
子供のことはどこ?って感じでしたが。
子供を虐待する親は、既に絆なんて放棄しているでしょうに。いじめで自殺する子供が後を絶たないのに、保護者や教師にどんな立場があるのだろうか?
先日自殺した子供はアンケートにいじめは無かったと記していたと、学校は発表してましたが、いじめられて教師に相談できない学校環境や支えになれない教師に、いじめを訴えられないのに、名前を記入するアンケートを実施するなんて、まったくもって無能な教育者たちです。自分達の立場を守るためだけのアンケートでは、子供は守れないですね。
子供を守り育て知識教え学ばせるのが教育者なのでしょうから、彼らは先生と呼ばれるに値しないですね。
話は変わりますが、障がい者の「がい」という漢字変えないで、いままでの「害」を使い続けるとされてましたが。
なぜに漢字にこだわり平仮名ではいけないのでしょうか?
また名称を変えることはしないのでしょうか?
政治家は、中身も変わらないのにイメージのためだけに政党名をコロコロと変え、政党助成金を貪っているのに。
公的な表記で心が傷ついている人に、優しい気持ちになれない社会を変えなければいけませんね。
死刑を実行する命令を下す権力を持っている法相に、あんな軽い気持ちで就任を受ける政治家は、必要ないですね。また、そんな人を選ぶ政治家も。
能力でなく、功労者として大臣を選んでいた自民党を批判してきた政党も、同じ穴の……。
投稿: やんじ | 2010年11月24日 (水) 13時01分
教育は国の根幹、子どもは国の未来なのです。しかし今の政治家は 政権争いのための揚げ足取りの議論ばかり 完全に旧態の野党に成り下がった自民党 。人としてこの国の未来をどう構築していくのかを 党を超えて 真剣に取り組んでほしいと願うばかりです。長年、非所属の立場を貫き "是々非々"の立場で地方政治に関与した仲間として 政治家の資質にとっても不安を感じる昨今です。
投稿: yuumin | 2010年11月26日 (金) 07時30分
shiozyさま
言って来ました。yaasanには、本当にお世話になりました。今度、ご一緒されるのですね。shiozy様からも、お礼を言っておいてくださいませ。しかし、yaasanは、本当にいい教師ですね。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年11月28日 (日) 19時27分
やんじさま
私が裁判をした相手の人たちがボスで署名活動をしています。本当にひどい。そんな人たちに引っ張られるPTAって一体何なのでしょうね。それから、あの人は、元々法務大臣などするタマではなかったと思います。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年11月28日 (日) 19時30分
yuuminさま
本当に今、政治家の質が悪くなったと思います。確かに、昔からひどい人たちが力を持って日本をこんな国にしたのですが。でも、権力者に対して、良心を持って対峙した政治家もいましたよね。今は、本当にそのような人たちが見当たりません。絶望しています。いつもありがとうございます。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年11月28日 (日) 19時33分