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子宮頸がん予防ワクチンについて②反対する人たちへ。

 子宮頸がんの予防ワクチンについて、私は6月29日から何日にも渡って述べています。それでも、あえてもう一度と思うのは、あまりにひどい誤解に基づいた、接種に反対する人たちがいることに、胸を痛めるからです。

 昨日述べたような、不妊になるというような根拠のない一つの宗教がかった人たちのことは問題外として。

 女性の解放運動に関わっているような方たちが反対するのに、びっくりしてます。その人たちの根拠は次のごとくです。

1. 子宮頸がんは、検診を受けることで、早期発見でき、完治するものである。したがって検診率を上げることに金や力を注ぐべきである。

2. すべての発がん性HPVが阻止できるわけではない。

3. 感染前に接種しないと意味がない。

4. したがって、接種するよりも性教育に力を入れるべきである。

 一見もっともな意見のように見えますが、こういうのが一番疲れるのです。

1.子宮頸がんは確かに検診を受けることで早期発見でき、癌になる前に円錐切除などで完治させることは出来ます。しかし、すべての人がそうではありません。私のところでも、高度異型性か、上皮内がん(要するに、前がん状態か、0期のがん)で、円錐切除をと大きな病院に紹介して、やはり同じ診断でいざ円錐切除をすると、実は進行がんであったという人がいます。気の毒なことに、まだ妊娠歴のない若い人ですが、広範性子宮全摘をしなければならなかった人がいました。

 それから、一年前にがん検診で異常なしだったにも関わらず、一年経って、とても進行したがんであったという人もいます。実際、私のクリニックであったことなのです。そんなときには、胸が痛くて、私自身も落ち込んでしまいます。特に、そういう場合は、18型のHPVによる腺がんの場合が多いのですが。

 それから、完治できるといい切る人たちは、たとえば円錐切除をして治った後の患者さんの人生をどう考えていらっしゃるのでしょうか。その人は、もう性交はしてはならないとでも?多くの人がパートナーからHPVが入ってきます。たとえ円錐切除をしても、その後またそのパートナーから同じHPVが入ってくるわけですから、また癌化する可能性があります。子宮頸がんにかかる人の多くが家庭の主婦です。夫との性交にためらいを感じざるを得なくなるでしょう。

 私のクリニックでも、円錐切除をした後、その相手と結婚をし、子どもを産むことを強く望んだ若い人がいます。その彼女に、私は、ワクチンを勧めました。これ以上ウィルスが入ってくるのをブロックさせましょうと。(3は完全に間違いです。すでにHPVに感染した人でも、それから子宮がんの治療をした人でも、それ以上のウィルスが入ってくるのをブロックする意味があるのです。)

 でも、彼女が彼と知り合う前にワクチンをうっていたなら、こんな思いをすることがなかったのに、と残念に思います。

 さらに、日本は、検診率が他の先進国に比べて、びっくりするほど低いのは事実です。

Photo 日本の検診率は23%でしかありません。でも、それは、ワクチンを打たないことにつながりません。たとえば、オーストラリア。ここは、29歳までの女性はこれから二年間、すべて無料にしますからワクチンを接種しなさい。その後は、中学生に無料で打ちます。同時に、検診率をあげることにも力を注ぐ。ワクチンをうって、年一回は検診を受けなさい。この両建てで行くとの方針でやって来ました。どっちか片方ではなく、両方を追求すべきことではないでしょうか。

 日本はワクチンの認可も世界で100番目でした。それに、公費の補助での子宮けいがん検診を二年に一回にしてしまいました。それにより、もっと検診率は下がるだろうと、先日の述べた大学の教授も言われていました。

 まだワクチンに反対する人への反論が続きます。

 今日から、いよいよリレー・フォー・ライフです。私は夜7時から講演ですが、その準備に今もクリニックにこもっています。もうすぐ午前一時です。ほとんど準備はできましたが、ブログを一日分落としてしまいました。ザンネン!!その分、しっかり話しをするつもりでいます。それに、他の先生方の話を聞くのも楽しみです。皆様、会場でお会いしましょうね。


コスモス薬局のHPの中に私の「体の相談室」と「著書」の販売があります。
ぜひ、覗いてみてください。

広島ブログ

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コメント

初めてコメントを差し上げます。
当方も以前子宮頸がんワクチンのことで記事を書いた時、的はずれな誹謗中傷を受けたことがありました。

自治体によってはワクチン接種の全額公費負担してくれるところもありますし、広島県でも厚生労働省に要望書を提出して前向きに進んでいるのに、一部ではこんな反対意見もあるんですね。
参考にさせていただきます。

偶然にも明日臨床検査技師会で子宮頸がんの講演がありますので、しっかり勉強してきます。
では、長々と失礼しました。

投稿: 銀蔵 | 2010年9月19日 (日) 11時01分

有名な女優さんとその娘さんが、子宮頸がんのために、検診するようにとCMされていますよね。
検診を促すためには良いCMですが、もしかしたら検診だけで大丈夫と誤解されてしまうかもしれませんね。
検診は、がんになっているかどうか確認するだけで、けっして病気の予防にはならないですね。
例えが変かもしれませんが、高熱が出て病院で検査してもらったら新型インフルエンザだとわかりましたが、重病になるか亡くなってしまった。となる前に、手洗いやうがい、マスクそしてワクチンで感染を防ぐ方が重要なのと同じようなことだと思います。
命や体を守ることは、まず病気にならないのが大切で、検診はあくまで早期発見に役立つだけですね。

投稿: やんじ | 2010年9月19日 (日) 13時00分

子宮がん検診は受けた方がいいですよね。でも、 検診は早期発見にはつながるかもしれないけど、癌予防にはなりません。私は検診日の状態を確認できるだけだと思っています。
 単純に考えて、公費でワクチンを使えるようにしたらいいのに。苦しい思いをする人もなくなるし、健康保険での支払いも少なくなるように思いまが・・・、将来的に見たらその方がかなりいいように感じます。

投稿: momoko | 2010年9月21日 (火) 12時27分

銀蔵さま
コメントありがとうございます。何よりの応援で、とっても力付けられました。世の中、いろいろと変な人がいます。自分の主義主張で生きるのはいいけれど、うそで人をたぶらかせてはいけないと思います。まだ続けて書きたいと思いますので、読んでみてくださいね。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2010年9月23日 (木) 15時47分

やんじさま
ええ、早期発見はあくまでも早期の発見で、死なないようにすること。それなりに意義はあることですが。予防は罹らないようにすることなので、別物ですね。リレーフォーライフで話したように、この方は、ワクチンの普及にも活動されています。身を持って啓発して下さるのですね。それぞれがそれぞれの立場で意見を言うことが大切と思います。今は、反対する人の声が大きくて。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2010年9月23日 (木) 15時50分

momokoさま
コメント、ありがとうございます。ワクチンを打ちたいけど、お金が高くて、という若い人が患者さんでもとても多くて。公費助成も、中学生対象になるでしょう。私は、親に「将来のお嬢様への親からのプレゼントですよ。」と言っています。これを多くの若者が接種すると、確実に医療費は削減されますね。これからもよろしくお願いします。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2010年9月23日 (木) 15時53分

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