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ある不器用な男の話・つづき。

「ああ、そうそう。10万出したと思うよ。20万貸してと言ったのを半分だけ出したと思うは。」 

「電話があったんじゃ。借りた金を返すと。僕は電話があった時びっくりしてのう。何年も姿を消した後じゃけえ。久々にまた金を貸してくれ言うんか思うて。そしたら、金を返す言うんじゃ。どうしようか?あんたの、そこに返しに行かすけん。いつ行かそうか?」

「いやあ、返してくれるんじゃ。それはすごい。でも、ここには来なくていいから。あなたが預かってよ。それで、あなたがいつか持ってきてよ。」

 次の日、彼がお金を持ってきてくれた。

「はい、これ。10万じゃなくて20万じゃと。あんた背広も買えいうて、出したんじゃろう。」

 その後、姉が借用書を見つけてくれたら、やっぱり20万だった。彼の記憶力は正しい。

 男は、その後ちゃんと就職してまじめに働いていると。借金をこつこつ返して、これで最後だそうな。何千万もの借金だと。初めにサラ金から返したと。それから、彼に一番投資して、そして亡くなってしまった友人がいる。そこには、二年前に、サラ金の次に真っ先に遺族に返しに行ったと。

「奇跡じゃ。」

と私は言った。彼が働いている。そして、多額の借金もコツコツと返してしまったと。

「私も自分がお金を返せるとは、思っていませんでした。自分にこんな仕事ができるとも思っていませんでした。」

と、友人に語ったと言う。医師免許をとってはいても、研修も何も受けていないのにと。

「でもね、その分野だけでも初めから習ったら、それが研修なんよね。頭はいい人なんだから、仕事も覚えるわね。」と私。

 彼は、いろいろと診てあげて、見つけたことも患者さんに一生懸命話をする。そしたら、その雇い主は、彼だと時間がかかり過ぎるからと嫌がられると。でも、患者さんからは、そこに行くと、丁寧に診てくれて色々と教えてくれると、けっこう評判がいいのだと。

「ああ、それなんよね。そうして人とつながって、人にも喜ばれるということが、彼の喜びになればね。これまで、ずっとずっと孤独だったんじゃろうから。家族もいないし。一人なんじゃもんね。」

「そうなんよ。それで、これで借金は全部返して、これからはちゃんと今後のために金をためとけよ、言うたんじゃ。だって、年金なんて何も入ってないんじゃけん。」

「あなたも良かったねえ。お金が返ってきて。奥さんにもこれで申し訳が立つでしょう。」

 「ウン、そうなんよ。女房にもちょっとだけ分けてあげたし。これで、全部のカードの借金を払うたわ。」

と言う。聞くと、男が今度はいくらと貸してくれと言ってくる度に、カードでお金を出しては、渡していたと。それが積もりに積もって、何百万となって、それが今だに彼の懐を圧迫していたのだと。彼も人がいい。人のために一生懸命してあげる人だからこそだ。

 これで、一件落着。お金を貸すと言うことは、あげるということだと思わされてきた。これまで返ることは本当になかったから。中絶のお金がないというアメリカ人の留学生は、10万円返さないままに帰国してしまったし。突然お金を貸して下さいと言った、産婦人科のそうそうたる先生は、返さないままに亡くなってしまったし。数え切れないほどだ。

 だから、今回のことは、私は感動すら覚えた。6月から、また給料が減って、懐がさびしくなった私には、何か思わぬボーナスをもらったようで、単純にうれしかったことでもあるが。

両方とも今日です。よろしくお願いします。

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コメント

コツコツ働いて返しちゃったんじゃ。
予想が外れました。
なんかすごいもんを発明して、特許料で返済したと思ったんですがw
まぁ、方法がどうあれ返したのはスゴイ。

投稿: ⑦パパ | 2010年8月28日 (土) 09時27分

 今まで読ませて頂いたどの記事よりも心に響きました。私にもお金を貸した人が二人います。「あげた」つもりにもなったりしましたが、でも、やはり、確かに貸したのです。忘れてしまったずっと先のある日、突然現れて、「返します」ということがやって来ることもあるかもしれないなと思った次第です。人は本当は素晴らしい力を持って生まれたのだと思います。
つゆまめさんのところのクラフト祭での「にんまり写真コンテスト」で、今は亡くなった私の両親の写真がグランプリになったのですが、その写真の笑顔を見ると、この世に生み出してくれた両親に感謝しなければと、思った記事でもありました。映画にもなりそうな話ですね。有り難うございました。

今日はFMはつかいちさんのお手伝いで廿日市市宮内で「風船王子」になります。
(河野さまのお好きでないエレクトロニクスの会社の関連会社に勤めておりますが)転職してコツコツ苦節18年、やっとお客様にも恵まれて、社会や地域にも貢献しないと!と、夏祭りや子供会などに出掛け、日々、顔晴(がんば)って喜んでもらっております。

まだまだ暑い日が続きます。お体に気をつけて、いい話を発信してくださいませ。

投稿: はるく | 2010年8月28日 (土) 10時21分

なんだかすごい話。

人は生まれ変わることができるんだぁ〜と
少し感動しました。
先生の手がラストチャンスとなって、
再生を誓ったのでしょうが、
並大抵の苦労ではなかったでしょう。

不器用かもしれませんが、
心まで腐ってはいなかったのですね。

お人好しの主人もいろいろあるみたいです。
だから人ごとながら
とてもスッキリしました。

投稿: nancy | 2010年8月28日 (土) 12時09分

生き方を真面目に悩んでいたのかもしれませんね。
人生の方向が見つからず、人の情けにすがるしかなかったんでしょうね。
心根は良いから、友人も助けていたのでしょうね。
普通の人ならどこかて妥協してしまうのに、それができなかったから誰もが付き合いきれなくなる。
損得でなく感謝される仕事を見つけられ、やっと人生の道が繋がったんですね。
お世話になった人を忘れることなく、知らないふりをすることなく、ちゃんと返済できて、その人もほっとできたのでしょうね。
たくはつしながら修行をしている修行僧みたいですね。
大切なことを失わず、人生に迷いながら生き、感謝される仕事を得る。
自分の生き方に納得できたなら、幸せなことですね。

投稿: やんじ | 2010年8月28日 (土) 20時48分

感動です。
うまく 言えないけれども・・・ 人はやっぱり ”何歳になろうとも変わろうって思った時 変われるんだ”ってコトと、今 学校という 狭い社会の中で 競争させられ、レッテル貼りされ 自分自身を否定してしまっている 子ども達を思います。
ダメ・ダメって言うのではなく 見守り 手助けをするコト そして 見返りを求めない愛情って言うのが一番なんだって・・読みながら思った次第です。

友人を見捨てず 人にお人好しと言われても 手を差しのべられたお友達 素敵です。そして悩む河野先生の背中をおされた 先生のご主人も素敵です♪
良い医者さんって 患者にとってやはり話しをじっくり聞いてくださる方だといつも思っていましたゆえ、変わられた そのお友達 テクニックうんぬんではなく患者さんにとってホントに安心できるお医者様なんだろうなぁって思いました

投稿: はるめ | 2010年8月29日 (日) 14時26分

何だか、うるってくるお話ですね…。weep

点取り教育の申し子のような方ですね♪

それでも、大いなる回り道をされて
今があるのでしょうね!!

こうして、長年、支援してくださったご友人や河野先生のような方とのご縁を持たれていることは、その男性の持つ運なのかもしれませんね!
今流行りの自殺という選択をされなくて、
本当に良かったです♪

先生方の慈愛の心が支えていらっしゃったのでしょうね!!

ところで、土曜日のシンポジウム、
急用ができて残念ながらいけませんでした…。
会のメンバーの方に、どのようなお話だったか、様子をお聞きしてみます!!

また、子どもたちの育つ環境についての情報など、ブログにどしどし、
ご紹介いただけるようお願いいたします♪

投稿: おやイスト みんと | 2010年8月29日 (日) 23時30分

何だか人を信じられるようになりました。
我が夫、変り者ですが同じように後輩にお金を貸したそうです。私には黙っていたのですが行方不明になり数十年、意外なことに近所にいることが判りいつか必ず出会うだろうからとこちらから訪ねていきました。声も出ないくらい驚かれましたが何とか仕事も順調そうなので彼にできる返し方で戻してもらいました。
彼もほっとしたようで昔のようにお付き合いしています。でもとある有名人に若い頃に貸した数千円~数万円は未だに返ってきません。知らんぷりしているのですがちょっと人を信じられなくなっていただけに心温まるお話でした。

投稿: 初ちゃん | 2010年8月30日 (月) 10時58分

⑦パパさま、はるくさま、nancyさま、やんじさま、はるめさま、おやイスト みんとさま、初ちゃんさま

皆様、コメントありがとうございました。今回のことは、私の胸にほのぼのとした物を残してくれました。彼には会うことはしませんでしたが、いつか会って話しをしてみたいと思います。医師としての仕事などを。皆様のコメント、感謝します。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2010年9月 5日 (日) 07時27分

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