「私と性教育」⑧「さらば、哀しみの・・・」
出版当初の勢いはとんでもないことですが、ロングセラーとなって、それなりにボツボツと売れていた「さらば、」です。それを絶版にしようと思ったのは・・・。
ある日、編集者の方から電話が入りました。新しく本を出す人が、どうしてもタイトルを「さらば、哀しみのドラッグ」にしたいと言われると。私の「さらば、悲しみの性」が好きで、そのタイトルが欲しいといわれると。びっくりしました。この「さらば、悲しみの性」というタイトルは、私自身、必死で考えたタイトルです。本文の中に「悲しみの性」という言葉が出ており、その言葉を使おうと思っていました。出版社から、「さようなら、悲しみの性」はどうかといわれた時、いえ、さようならではなく、もっとすっぱり、男っぽく「さらば」がいい、と私が考え、そう主張しました。
以来、大切に大切にしてきたタイトルです。「悲しみ」が「哀しみ」になってたっておんなじ。まるでブラックジョークだと思いました。同じようなタイトルの本はこれまでもいくつも見ています。でも、それは同じ著者が第二弾、第三弾として書いたもので、全く別の人が、そっくりなタイトルで、それも同じ出版社から出すというのとは、違うんではないの?と思いました。
それでも、まだその人本人から何か一言あるかと思ったけれど、何もありません。それから、その本の中に、このタイトルを使うにあたって、あとがきか何かに書いてあるかと思ったけれど、それも何にもありませんでした。
結局、それで私は切れてしまいました。私は文庫を出します。同時に私の高文研の「さらば、」は絶版にして下さい、と言いました。もったいない話しではあるけれど、私のプライドがそう言わせました。
以来、その方は続いて「さらば、哀しみの青春」という本も出され、すっかりそのタイトルが定着しているようです。時々私がその方のタイトルをもじって「さらば、悲しみの性」という本を書いたのか、と質問されることがあります。本家はこっちなんだけど、と苦笑しています。
私は今、出版社に対してはなんにも思っていません。それどころか、私を世に出して下さった恩人と思っています。それでも、その本を書いた人には、嫌悪感を持っています。社会では立派な人のように、大ブームを起こしているかも知れないけれど、私のタイトルをもじっても何の一言もない、その人間性が嫌です。
ということで、高文研の本、あの出産の感動的な写真が載っている初代の「さらば、悲しみの性」は絶版となり、代わりに「新版さらば悲しみの性」が形も文章も新しくなって集英社から出版されました。写真はないけれど、文庫ですので、高校生でも一人で買うことが出来る値になって、それはそれでよかったと、今思っています。
こうして振り返ってみると、ろいろいとしんどい思いをしたこと、とても悔しい思いをしたことが節目のようにぽつぽつとあるものだと気づきます。そして、それを抜きに出来ないので。愚痴にならないように、また、読んで下さっている方を不愉快にさせないように、ボツボツと書きますね。
植物公園の温室で、睡蓮が清楚で可憐な花を咲かせていました。心が和みます。

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コメント
初めまして。
私は広島育ちの28歳の女です。
高校2年の時、河野先生の講演を聴きました。
その後学校(皆〇です)の図書室で「さらば、悲しみの性」を見つけて読みました。
絶版にされた本だと思います。
巻頭に出産の写真が載っていたのをはっきり覚えています。先生の笑顔が印象的でした。
図書室には1冊しか置いていなくて、探さないと見つからないような場所にありました。
私には2歳の息子がいます。
男性女性両方の仕組みを理解して、女性の体を大事にできる大人になれるように教えなければと思っています。
投稿: 藤野 | 2010年4月12日 (月) 08時25分
愚痴とも思いませんし、不愉快でもありません。先生のあり様は、きちんと筋が通っていますし、シンプルで言うなれば男らしく?(すいません)、憧れます。渦中は精神的に大変だったことと拝察いたします。
先生の気持ちの整理の付け方を、支持します。
投稿: ヨボG | 2010年4月13日 (火) 00時28分
藤野さま
皆〇高校には何回か行っていますので、その中に藤野さまもいらっしたのですね。皆さんが親になった時には、ちゃんと子どもたちに体や性を伝えていけるように、という願いも持ってお話したつもりです。こうしてコメントをいただくと、とってもうれしいです。これからもどうぞ、このブログも覗いてみてくださいね。ありがとう。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年4月13日 (火) 08時27分
ヨボGさま
ありがとうございます。先日、歯医者さんでマウスピースを作っていただきました。使うのは、大変。昨夜はついはずして寝てしまいました。反省です。私が行っている歯医者さん夫妻は、ヨボGさまのことをよく知っていらっしゃいました。本当にヨボと呼ばれているのですね。どうしてでしょう。これからもどうぞよろしくお願いします。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年4月13日 (火) 08時30分