「私と性教育」⑦「さらば 悲しみの性」文庫に。
「さらば 悲しみの性」は学校現場でもよく使われました。本は書き手の意志とは異なっても、使う人の意志によって、様々オリジナルな使われ方をします。
本を50冊購入して、一クラスずつ本全部を読ませるという方法をとって下さるところも多くありました。が、一番使われたのは、一部をコピーして配られるというものでした。
私は、最後に「16才の母たち」という章を立て、若くとも産んで頑張って育てている人たちのルポをも書いています。が、ここは使われません。
使われるところは、ほぼ決まっていました。「人工中絶」のかわいそうなところ。それから、このシリーズでもちょっと書いたおなかが膿だらけのひどい腹膜炎になった15歳の高校生。彼女の入院中に起こったひどい出来事。まずそんなところです。
何かといえば、やはり脅しとなるところ。「セックスをするとこうなるぞ」という意図が見え見えでした。性の危険性ばかりが強調されてしまい、性というのは、喜びの面もあることが教育現場ではなかなか伝えられません。一番手っ取り早い性教育、脅すために私の本が使われるという現象がつらくなってきました。特に、中絶を強力に脅したために、産んでも育てることも出来ないのに、おろせなくなってしまう子も出てきました。
時が経って。本を書いた頃にはまだなかった「HIV」エイズという強力な性感染症、「援助交際」という思ってもいなかった奇妙な名前の売春が高校生を中心に広まったこと。低用量のピルが認可されて、より安全で確実なな避妊が出来るようになったこと。それら、書いた当時にはなかったこと。それらに触れないままだと、時代に合わなくなったこともありました。
いつか、新しく書き直さなければ、と思っているときに集英社から、文庫の話しがありました。それも、これまでの文庫化のお話しがあった出版社と違って、話しを今から振り返る形でリライト、書き直したらどうか、という新しい発想のお話しでした。それにエイズや援助交際などを付け加えること。さらに、中絶について、女性の救済策としてあるということをも提示すること。それなら出来そうだと思いました。
高文研のその本をリライトして高文研から新たに出せばよかったのかもしれません。でも、それは出来ない、その上、文庫化すると同時にそれまでの高文研の「さらば」は絶版にしていただくことにしました。まだまだ売れていた当時、絶版というのは、出版社だけでなく、私自身にも若干抵抗があることでもありました。でも、そうせざるを得なかったのです。それだけの理由がありました。(このシリーズ、時に人の悪口を書くことにもなります。躊躇するところもあるのですが。でも、それを飛ばすと、自分でなくなるので。)
一昨日、神原の枝垂桜を見に行った後、広島市の植物公園の桜も見に行きました。そこの桜も素晴らしかったのですが。他のお花達も。
まず入園したところに咲いていたパンジーとポピーです。ポピーは好きなお花です。風に揺れて可憐でした。本文の話しが硬っくるしいので、お花を一枚ずつ載せようと思います。
| 固定リンク
コメント
河野先生初めまして。
私は中学生の時に(既に20年近く前です)母親から先生の著書「さらば悲しみの性」を渡されました。読んだ時の衝撃は未だ忘れません。出産シーンの写真、10代の少女の妊娠中絶など、あの本から沢山のことを学び、後の生き方に確実に影響を受けた一冊です。
今大人になってこうして河野先生のブログに辿りつけたこと本当に嬉しく思っています。
先生の真摯な記事をいつも大切に読ませてもらっています。
これからも応援しています。
投稿: 藤原駒子 | 2010年4月10日 (土) 08時53分
初めまして、いつも先生のブログを読ませて頂いております。私は、私立の女子中高で養護教諭をしているものです。
先生の「さらば悲しみの性」の中の腹膜炎の女の子のエピソード、私も中学時代の性教育の時間に読んで衝撃を覚えたのを思い出したのと同時に、確かにそこのページだけ採りあげられていたなと苦笑です。
昨年、初めて生徒対象に性教育をしましたが、性の素晴らしさよりSTDのことなどばかりが多く、偏った授業になっていたのかなと反省です。なかなか素晴らしさを語るのは難しいですね。でも、今年初めて自分が出産を経て、今度は少し自信を持って自分の言葉で性の素晴らしさを語ることができるかなと思っています。
昨年、私の勤務校に新任でいらした家庭科の先生が、「新版さらば悲しみの性」を生徒へのおすすめ本としてとりあげたことから、生徒への貸出文庫にそれが加えられ、大変嬉しく思いました。また、一緒に性教育授業したいねと意気投合し、同僚に河野先生を知っている仲間ができたことを嬉しく思いました。長くなりましたが、性の素晴らしさも伝えていける養護教諭を目指したいと思います。これからも、このブログを楽しみに読ませていただきたいと思います。
投稿: T.SAITO | 2010年4月10日 (土) 12時58分
藤原駒子さま
ありがとうございます。中学生ですか。そうですね、あっという間に時が経ってしまいました。でも、まだまだ元気です。ブログもがんばって更新しますので、これからもまた覗いてくださいね。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年4月12日 (月) 07時47分
T.SAITOさま
大変うれしいコメントをありがとうございます。性教育の今の課題などもこれからも取り上げていきますので、また覗いてくださいね。どの地域ですか?お近くに行くことがあったら、ぜひ講演も聞きに来てくださいませ。感謝です。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年4月12日 (月) 07時52分
私は高校生のときに担任の先生がこの本の内容のコピーを配って考えるように言われたことを思い出しました。娘が中学に入った今、文庫になったとのことでいつか手渡したいと思います
投稿: obaba | 2010年5月22日 (土) 09時29分
私も15年前ですが中学3年の性教育の授業でこの本が取り上げられました。
>使われるところは、ほぼ決まっていました。「人工中絶」のかわいそうなところ。それから、このシリーズでもちょっと書いたおなかが膿だらけのひどい腹膜炎になった15歳の高校生。彼女の入院中に起こったひどい出来事。まずそんなところです。
まさにこの通りでした。
その後、更に生々しい出産のビデオを見せられたのですが、とても感動的な映像ではなく…
動物的というか「臭そう」というのが正直な感想でした。
吐き気を催して保健室へ運ばれた生徒も居ました。
この授業からしばらくの間は妊婦さんを見ても「知性を持った女性」ではなく「メス」という感じがして気持ちが悪かったほどです。
当時の性教育はとにかく中学生が性に対して嫌悪感と恐怖心を持つ様にするのが目的だったんですね。
もっと結婚して子供を望むようになってから役に立つ情報を教えれば良いのに…
それなら妊娠・出産を肯定的に受け止められるようになったんじゃないかと思います。
投稿: みらい | 2010年7月 6日 (火) 20時15分