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今クリニックで起こっていること⑬CAP:こどもへの暴力防止プログラム

 私が初めてCAPの講義を受けたとき新鮮な感動を覚えました。ずいぶん前ですので、いろいろとシステムとしては変わっているかも知れません。

 その時の講義で言われたこと。「川があって、よくそこで子どもがおぼれて死ぬ、だから川に近づかないように子ども達に教えましょう。そして、川に柵をしましょう。それでも川に近づく子がいる。そこで、もし川に落ちても、おぼれないように泳ぎを教えましょう。」と。まずこれに感動しました。

 CAPは「Child Assault Prevention」(子どもへの暴力防止)プログラムです。「すべての子どもに安心・自信・自由を!」をテーマに、子どもへの暴力防止/人権教育プログラムが大人に向けてまた子どもたちに向けての異なるバージョンが作られています。

 具体的に、たとえば大人に話しかけられたときに、手をまっすぐ前に伸ばした距離を保つように。相手が一歩近づいたら、一歩下がる。もしも口をふさがれたときには、相手の小指を口と反対側に引っ張ってはずしましょう等の訓練がありました。それに、もしもどこかにつれていかれそうになった時の声の出し方も訓練しました。このようなことは、訓練して置かないと、いざというときには、なかなか実行できないことでしょう。

 さらに、もしも暴力の被害にあったなら。加害者は必ず「だれにも言うなよ。」と言います。「だれにも言ってはいけないという約束は、悪い約束です。悪い約束は守ってはいけません。」と、はっきりと言いきります。これにまた、感動しました。

 このCAPを是非とも学校で取り組んで欲しいのです。もしも、幼児性愛の教師がいたとしても、その彼らは、このプログラムで学び、自分がもし生徒対象に加害者としての行動をとったなら、どんなことになるのか思い知ることができるでしょう。

 ここにCAPセンター・JAPANのホームページがあります。こに詳しく出ていますが、CAPの研修をうけ、トレーニングをして資格のある人が学校などに出かけていきます。

 学年によっていろいろとプログラムが異なりますが、一番最近私が受けたのは、中学校バージョンでした。これには、男の子が男性から被害を受ける場合も盛り込まれていました。さまざまな場を想定して訓練しておくことは、決して無駄ではありません。子ども達のエンパワメント、力をつけることが何よりの防衛となるでしょう。

 CAPだけとは言いませんが、様々に生徒も教師も保護者も学ぶ機会を積極的に作ってほしいのです。それこそが、子どもたちを守る唯一の方法であると思います。

 今は、あまりにひどい状況です。周りは危険がいっぱい、その中に子どもたちを放り出したままといえるでしょう。

 それに、被害にあった子をまるで被害者に責任があるかのような行動は決してとってはいけないのです。今は、被害者が攻められています。せっかく勇気を持って教師に被害を訴えたのに、信じてもらえなかったり、逆にしかられたり。こどもは、こんなことで作り事を言うのは、とても稀なのだということも知っておかなければなりません。

 「言ってくれてありがとう」「打ち明けてくれてありがとう」という姿勢で謙虚に受け止めることが必要です。事実を知った母親が泣きじゃくって、何の助けにもならなかった姿も見ています。被害に会った子がその母親の姿をじっと乾いた目で見ていました。ああ、彼女はさらに傷ついている、と思いました。

 子育てをする上で、自分の子どもが暴力の被害にあうかも知れないと考えるのは、嫌なことかも知れません。でも、そうは言っておられない状況が作られているのです。それが自分の子にも起こることかも知れないと考えた上で、事前の対応を考えて欲しい、そう思います。

 それにしても、今回の小学校の教師の事件、教育委員会の声明や処分など、なんにも出てこないのは、一体どうしたことでしょう。これだけの子どもたちが被害にあった、それも信頼していた教師によるレイプという、体だけでなく、心の傷もとってもひどいと思います。彼女達への立ち直りに向けてのケアと、再発防止をどのように考えているのか、教委の話しをぜひ聞きたいものです。


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ぜひ、覗いてみてください。

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コメント

CAPは、息子が小学生の時にPTA行事として参加して知りました。
中学校でも是非取り組んで欲しいと思い、PTAに働きかけたのですが、学校や執行部の理解が得られず。
色んな事件が多発する世の中。自分の身は自分で守る事が大切ですね。

投稿: r s | 2010年3月26日 (金) 14時57分

rsさま
このような暴力防止のプログラムでも、「過激な性教育」だとバッシングを受けたりすることもあるのですから。理解が得られなかったのは、そういう社会的な事情もあるのだと思います。政治的な問題ですね。いつもありがとうございます。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2010年3月28日 (日) 09時11分

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