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今クリニックで起こっていること⑮アフターピルの失敗

 昨日、大変気の毒なことがありました。二週間ちょっと前に緊急避妊のくすりを求めて来た方です。その人が、くすりを飲んだにも関わらず、妊娠してしまっていました。

 緊急避妊の効果は100%ではないと、説明していたので、覚悟はしていたようです。でも、しょんぼりでかわいそうでした。実は、5日前にも同様のことがあったのです。その時の女性は、妊娠とわかったとたん、大泣きでした。

 「緊急避妊」。アフターピルとも言われます。レイプされた、またはコンドームが破れてしまったというハプニングが起きたときに緊急避難として使用するものです。それが、どうも誤解されているようです。「避妊しないでセックスしても、後で薬を飲めばいい」と。

 最近特に目立ちます。「避妊していなかったので」それも、男性が「病院に言って薬をもらって」と言ったと。

 実は、日本は、アフターピルとしての薬は認可されていません。世界中で使われている薬は、日本では厚生労働省が認可していません。それを認可すると性の乱れを招くという、低用量ピルがなかなか認可されなかったのと同じ理由だといわれます。それが認可されていない国は、今北朝鮮とイラクと日本だけだと先日の研修会で聞いてびっくりしました。

 日本では仕方なく、中用量ピルを代用しています。それも、普通一日一錠の薬をどーんと二錠二回と大量に飲みますので、なかなか大変です。吐き気がしたり、だるかったり。それでも、レイプされて、妊娠、中絶という二重三重のダメージよりは、ということで処方されるものです。世界中で認可されている薬に比べて、うんと副作用が強く、かつ、効果も低くなります。

 今回のお二人とも、避妊なしで性交をしてしまったというものでした。

 また、別の方ですが、昨日アフターピルを求めてきた人は、薬を求めて来院するということを、相手の男性には言っていないということでした。女性一人で悩んで、ひっそりと薬を飲む、それも効果が絶対ではありませんので、次の出血があるまで、ずっとびくびくしっぱなしになるでしょう。

 ここのところに、男性と女性の決定的な違いがある!男性は、事がすんだらそれで終わりにすることが出来ます。でも、女性はその後のことをずっと恐れなければなりません。だから、その前に、妊娠しても生むことが出来ないのなら、ちゃんと避妊をしなさいと、何度もずっと言い続けているのですが。こんな当たり前のことが、全くダメ。そんな毎日です。

 一回目に書いた、生もうとしている高校生の一人。双方の家族の猛反対で、結局中絶することになりました。中絶して、そして予定通り大学に行くことになりました。それもまた、彼女の選択です。

 このシリーズ、15回になりました。あっという間でした。一旦、ここで中断します。少々くたびれました。また、不定期に掲載しようと思います。沢山のコメントありがとうございました。

 ここに掲載したのは、作り事でも、大げさなことでもありません。本当に同時進行で私のクリニックという小さな閉鎖した社会で起こっていることです。事実を淡々と書いたつもりです。このような現場から、「性教育を!」と訴え続けているのですが・・・。


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ぜひ、覗いてみてください。

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