今クリニックで起こっていること。⑤男性は逃げられる。
悩んでいるうちに時が経ってしまった、という少女達。もう少し早く誰かにS.O.S.を求めたなら、といつも悔やまれます。身の回りに一人として相談を持ちかける人がいないというのも現実なのですね。
彼女達の多くが、「妊娠週数、月数の数え方、いつごろが出産の予定日なのか、いつまで中絶が可能なのか」そんなことを本当に知らないということもあります。よくマスコミで芸能人の誰かが妊娠何ヶ月だと公にした、という事など言われますが、その数え方などだれにも教えてもらっていません。特別な数え方をするということも知らないのですね。
私の講演はあれもこれもつたえなければ、と、盛りだくさんになってしまいます。「性交から二週間で妊娠二ヶ月という」なんて言うと、中学生も高校生もざわざわとびっくりしています。
今回の17歳の彼女は、すでに相手の男性と別れています。一人で育てる意志も持っていません。付き添ってきた父親は、本人に育てる意志があれば、何としてでも援助をするのだけれど、といわれます。
その彼女のいい加減さが私はとてもいやでした。これまでの少女達は、「なんとか自分で育てたい」と言い、ではどうやって育てようかという段で、壁にぶち当たってしまっていました。私は、彼女達親子にどこか施設で預かって頂くように、児童相談所で相談を、と言いました。
でも、考えてみれば、生まれてくる赤ちゃんに罪はありません。親の態度がどうであっても、それは赤ちゃんの責任ではないのです。そう考えて近藤さんにお話しすると、二つ返事で引き受けてくださいました。近藤さんに励まされて、私も目が覚めたように思い直すことが出来ました。生まれてくる子は幸せになる権利があると。
もちろん、産む少女は、まだまだしんどい思いをしなければなりません。「あなたは、赤ちゃんを元気に産んであげる義務があるよ。それが赤ちゃんにしてあげられる最大のことだからね。頑張ってね。」と話しました。養子として行き先が決まったことを告げると、親子で泣かれました。
そして、いつも思います。もしも妊娠の相手の男性が「よし、頑張って二人で育てよう」と言ってくれたならと。このように、養子縁組をするケースは、決まって男性が逃げた場合です。もしも二人の仲が続いていたなら、決して養子縁組のお世話はしません。
赤ちゃんポストにしても、預ける人は無責任だと、世間は女性ばかり責めています。私は、その一歩前に先に逃げた男性がいることを知っています。男って逃げられるのですね。もちろん、多くは間に合って人工中絶に終わります。出産、養子縁組というのは、全体から見ると小数です。
数々の少女達に接していて、つくづく男性の教育も大切だとそう思うのです。

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ぜひ、覗いてみてください。

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コメント
私は赤ちゃんポストにしろ、先生達が行われている養子縁組にしても、素晴らしいことだと思います。無力な子供に対する、死に至るほどの虐待や、産みたくなかった子供に対する言葉などによる精神的な虐待の報道などに接する時、なぜ、実の親子にこだわるのだろう、と、悲しくなります。愛のある他人の方が、憎しみや後悔しかない血縁より、子供を幸せにできると思っています。
つらいことが多いでしょうが、先生達の活動を陰ながら応援します。
投稿: ミセス・セブン | 2010年3月15日 (月) 19時47分
落ち着いて読み直すと、ずいぶん的はずれな事を書いてしまったと反省しきりです。私は望んで生まれた子を先天的病気で失いました。だから、せっかく五体満足で生まれた子を親が暴力などで傷つけることが、本当に許せないのです。
せっかく元気で生まれた子は大事に育ててほしい。それができないなら、できる最善の方法を考えてほしい。その思いが強すぎました。
今日もうっかり(?)子供を死なせた母親のニュースを見て悲しいです。
考えなしの若い者が増えてるんですかね。
投稿: ミセス・セブン | 2010年3月16日 (火) 22時08分
児童虐待やネグレクトのニュースを見るたび思うのは、父親の「不在」です。
そこにいるのは母親の「オトコ」であって、「親」ではない。
あまりにもふがいない男性の現状です。
そしてメディアの採り上げ方も、父親の責任についてすごく甘いのは、何か意図があるのではないかとさえ疑ってしまいます。
投稿: 六郎 | 2010年3月17日 (水) 09時40分