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海原純子さんのエッセイからー経営ということー

 海原純子さん、私より少し若いドクターだ。以前女性専用のクリニックを開業していたし、現在は大学の教授であり、ハーバード大学の研究生でもある。今、彼女は毎日新聞の日曜版に「心のサプリ」というエッセイの連載をしている。これが好きで、どんなに忙しくても、どこかに行っていても、必ず読むことにしている。彼女の言うことには、すべて共感ができる。全く違和感がない。

 その一番最近の、二月の最終日のエッセイは「JAL破綻に思う」というタイトルだった。今、彼女はボストンにいて、日本と行ったり来たりしているが、外国にいて、JALが飛んでいる場所に行くと、ホッとすると。外国の飛行機会社に比べて、JALは本当に親切だと。それは、海外には旅行に行くのみで、生活はしたこともない私だって、感じることだ。その「利用者への共感性」ゆえにJALは破綻したのではないか、と書かれている。

 その記事の中で、びっくりしたことが書かれていた。少し引用を。

「〝人間"とかかわる仕事は、経営と仕事の質の保持が相反することが多く、それは医療ととてもよく似ている。/かつてクリニックを経営していた時、クライアント(患者)にきちんと説明できるようスタッフを増やし、各専門家に給料を十分払っていたら、いつも赤字だった。いい医療といい経営とは、はっきり言って別物だ。」

 本当にびっくりした。私がこの間、苦労して、考え続けていた、そして時にはいやになることもあって。彼女も同じ苦労をしていたのだと初めて知った。テレビなどで活躍していた彼女からは、本当にハタから見ていたのでは、分からなかった。

 四月から診療報酬が改定されるという。病院の勤務医と開業医の格差をなくす、故、開業医の再診料を下げ、病院の再診料を上げると。他にもいろいろあるらしいが、これは今度ある説明会に行ってみなければ分からない。

 分かることは、ますます経営が厳しくなるだろうということだけだ。私の給料はドスンと下げ、理事の給料も下げても、やはり経営が厳しいことに変わりはない。少し余分なことをして、報酬をアップさせるような努力は、どうしても出来ない。良心的な医療をしようとする、それは私のプライドでもあって、医師として生きる最も基本である。それをゆがめようとすることは、プライドを捨てることでもある。

 勤務医は、いろいろと苦労があることは分かる。開業医だって、みんな勤務医の経験者であるのだから。でも、勤務医時代は、私は経営に頭を回すことはなかった。人を雇う、どんな人を、どれだけの給料で、と頭を悩ます必要もなかった。どの薬、どの機械をどこからいくら買えばいいのか、こんなのは、みんな診療の時間外にすべき経営者としての仕事である。そんな苦労をしなくて済む勤務医がうらやましいのも事実である。

 海原さん。アメリカと日本をいったりきたり、若い学生を相手にして、時には歌手としてのコンサートもして、すっかり生き生きしている今の生活が、私にはとてもまぶしく見える。クライアント、患者さんを毎日診療をしていた生活と、今の生活と、充実度はどうですか?と聞いてみたい。


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ぜひ、覗いてみてください。

広島ブログ

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コメント

同感です。
売り上げを考えながら接客することはどうにも苦手で、あっという間に最初の仕事をやめてしまったのはそんなところです。(根性ありません…泣)
でも、雇い主の立場からすれば、そこを何とかしなければ会社は潰れてしまうわけで…。
ボランティアだけしていては生活していけないですし。
難しいところです。
ただ誠実に生きたいものです。

投稿: うさこ | 2010年3月 5日 (金) 09時30分

うさこさま
きっとね、商才に長けている人というのは、とても冷静にお金を見ることが出来る人だと思うのです。自分はそれに向いていない、ということだと。誰かに雇われるといいのでしょうが、でもそうすると自由もなくなるのですよね。どうしよう。宇佐子様の「誠実に生きたい」というの、本当に、そうですね。いつもありがとう。大丈夫ですか?こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2010年3月 7日 (日) 11時14分

送信ミスで2度目かもしれません。

私は性教協の会員で、河野先生の大ファンでもあります。
この春、読売新聞の人生相談で海原先生を知り、書かれていることに大変共感していたのですが、そのほかの情報がないので、どんな方なのかな、と思っていました。
そして、今日このブログで河野先生も海原先生に共感、というのを知り、嬉しくホッとしたのです。
時分の好きな人と好きな人がつながっているって、いいですよね。
今日は良い日♪

投稿: 安藤和佳子 | 2011年8月11日 (木) 18時38分

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