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子ども手当てと保育園

 私は、日ごろコンクリートの小さな診察室にこもっている。時には外は大雨ということすら何にも知らないで診療をしていることもある。

 そのコンクリートの診察室に、患者さんそれぞれが自分の社会を背負って来る。患者さんに向き合うことは、社会に向き合うことでもある。私は、小さな診察室から社会を見る。

 女性は派遣の人が多いので、簡単に職を失う。正社員であっても、リストラされる人たちは多くあった。職員リーマンショックの前から、多くの女性たちが職場を首になった。首切りを逃れて、残った人も少ない人数でそれまでの仕事をこなさなければならないので、仕事に追われた。深夜までの残業をしなければ仕事が終わらない。働く人は、切られるのも、残るのも地獄の様な状況に置かれていた。

 そこにこのリーマンショックだ。妊娠中、もう少しで子どもが生まれるというときに、夫が職を失った。子どもが三人、育ち盛りなのに、失業した。母子家庭でそもそも厳しい家計なのに、正社員からパートにされた。そんな人がぞろぞろと続いた。

 そういう状況に中で、産むつもりだった妊娠を諦めて中絶しなければならなくなった人もいる。奨学金とアルバイトで頑張っていた大学生の母子家庭の長女は、ついに授業料が払えなくなって退学した。まだ中学、高校生の妹たちのために働くという。

 診療の中身についても、金額を事前に言って了解を得なければならないことも日常となった。

 そんなこのごろ。産むか諦めるか悩んでいる人たちに「26000円の子ども手当てが出るようになるよ。」というのは、とても大きな福音となっている。二人目を悩んでいる人には、「二人分、56000円が出るよ」と伝えると、顔が明るくなる。経済的理由で子どもが埋めないというのは、本当にあることなのだ。

 少子化で、将来高齢社会を支える若者がいなくなるという心配があるのなら、子ども手当てに反対しないほうがいい。子どものいない人の負担増になるといっても、将来はその子どもたちが社会を支えてくれるのだから。結局は今から生まれる子どもたちにお世話になるのだから。

 妊婦健診の補助も出産手当金も、ずいぶん増えて出産しやすくなった。ばら撒きと言っても、これが将来につながることなのだから。これが政治というものだと思う。

 もっとも、待機児童が沢山いるという、保育所の整備。これも頑張ってしなければならないことである。これは、これまでの自民党政権が全く本気でしなかったつけだ。子どもは家庭で育てよ。母親は家にいるべき、そんな主義主張が保育所を本気で作らなかった理由になっていなかったか。保育園増設のための補助を国が地方に本気でしなかったということの現れではないか。

 その昔、私が保育所の申し込みに行ったとき、「なぜはたらくのですか」と質問されて戸惑ったことがある。夫が病気だから。家計が苦しいから。いろいろと理由が書かれていたが、どれにも当てはまらない。「働くのが当然だから」と口で言ったら、顔をまじまじと見られた。そんなことを思い出す。

 今や、家計が逼迫して、女も働かなければやっていけなくなった人たちが増えているのだから。

 そんなことを、小さなコンクリートの中で、日々実感している。

2009_10170004 昨夜は47会でした。昭和47年、共に広島大学の産科婦人科学教室に入局した仲間です。一人、S君が数年前に倒れ、療養中ですが、後の全員が集まりました。一番左の日浦さんは松山の国立がんセンターの部長です。今や、癌治療、特に卵巣がんの化学療法では日本のトップの成績の、私たちのホープです。右から二人目の田中さんは、県北、比和町の地域の医療を一身に背負う、内科医です。右から三人目の久松さんは、この中でも、ただ一人お産をしている正真正銘の産婦人科医師です。後の三人、砂掘さん、温泉川さん、そして私はクリニックを開業しています。まるで今の日本の産婦人科の現状を反映しているような内訳となっています。私以外は全員ゴルフをしますので、ゴルフの話しで盛り上がっていました。私は蚊帳の外です。でも、久々に昔の仲間に会って、うれしかったです。S君の話ではちょっとしんみりしました。いつまでもみんな元気で働けますように。


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ぜひ、覗いてみてください。

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コメント

 元気に仲間が集える事って,これも幸せの一つですね。体もですが精神的にも元気にしておきたいと思います。私の仲良し3人組で1番頑張っていた友人が,やや疲れてしまって,本当に驚いています。開き直ったり,少々不真面目だったりの私くらいが,長続きするのかもしれないと思っているところです。
 先生に頑張ってくださいと言いたいのですが,長く医師を続けてくださるように,少し頑張って,いっぱい息抜きをしてください。

投稿: momoko | 2009年10月18日 (日) 21時02分

私は9月初めに、中国新聞の「広場」へ投稿しました。内容は民主党がマニフェストに書いた“子ども手当”のことです。

将来を担って貰う子どもを育てるための手当、そのものを不満だと言うのではなく、不妊治療や保育園の充実、そして子どもを育てようとしても、生活が苦しいなど、助けを求めている家庭への支援を考えて欲しいのです。

26000円は“はしたがね”というような高額所得者もいます。そんな家庭にまで一律にお金を配る必要があるのかと、疑問に感じるのです。
そして財源を確保するために、扶養控除や配偶者控除を無くすることは、新たな生活困窮者を生み出すことにつながると思うのです。

国民の多くが民主党を支持し、政権が変わりました。しかし、国民はマニフェストを全て理解して民主党を選んだのではないと思うのです。国民の多くが理解してくれるようキチンと説明し、理解を得てからマニフェストの実行に移っても遅くはないと思います。それを実行しなかった場合、自民党は公約違反だと責めるかも知れませんが、国民の思いに沿って見直すので有れば、違反ということでは無いと思います。

22年度予算編成で徹底的にムダを排除するということには大賛成です。でもそうして確保したお金を、無差別に配るような、知恵のない政治をして欲しくないのが、私の思いです。

投稿: なんでも辛口 | 2009年10月18日 (日) 23時36分

momokoさんの「いっぱい息抜きをつつ・・・私たちの素敵なお医者様でありつづけていただきたい。」のコメントに大賛成です。コンクリートの中のガラス張りの狭い薬局の中での仕事に 窒息しそうになって 辞めてしまった私には
言う資格はないのですが・・・(笑)
すてきな47会のメンバーに遠くよりエールをお送りします・ フレーフレー47会!
保育園と幼稚園の一元化と充実,学童保育の充実は今後のこの国の未来に向けて とっても大切ですよね。新政権に期待するところです。

投稿: 遊民 | 2009年10月19日 (月) 05時49分

momokoさま
ありがとうございます。そろそろとマイペースでやりたいところですが。なかなか、適度にというのができないで、結局は不器用なのでしょうね。やめるときを考えるのも必要だと今思っています。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2009年10月20日 (火) 08時22分

なんでも辛口さま
そのようなご意見があることはよく承知しています。でも、お金もちは、とてもたくさんの税金を払っています。何もしないで給付してもらうのではなく、それをうんと超えるほどのお金を払ってもらっているのですから。子ども一人ひとりにとっては、親の経済状況に関係なく、平等だと、そう思います。親の収入で判断するのは、所得税や住民税を基準で考えるのですよね。リアルタイムで今の経済状況を捉えるのは、とても難しいのです。それに、その人件費は膨大になるでしょうし。おじいちゃんおばあちゃんと同居の人は家族全体の総収入をどう考えるのか、とても難しくなります。お金持ちは、という発想は子ども手当てについては、しない方がいいと思います。扶養手当の代わりに子ども手当て、いいではないですか。これからの時代を支える子どもを社会で育てるのです。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2009年10月20日 (火) 08時31分

遊民さま
本当にいつも励ましをありがとうございます。子どもが産みにくい社会、それに派遣の給料では、結婚もしにくい社会、何とかしなければ、と思います。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2009年10月20日 (火) 08時32分

子供手当ては、職を失った人や母子家庭などの低所得者にはとてもありがたい制度だと思います。
でも、これを実行するにも多額の費用が必要になると思います。
私は、税務申告で処理すれば税の計算項目が一行増えるだけですから、人件費などの費用はあまりかからないと思います。
会社で働いている人は、給料に子供手当てを加算し、年末調整で税金を支払うか還付するかでできると思います。会社は支払った子供手当を法人税で処理すればいいと思います。
また、そうでない人は役所に行って子供手当てを支給してもらい、収入と子供手当てを税務申告すればいいと思います。
自営業の人なら、青色申告の時に住民票を添付して処理すればいいし。
扶養控除がなくなり、その代わりに子供手当てとなるのはいいのですが、年金が少なく後期高齢者とか介護とかの負担金を払っている年寄りや、子供でない障がい者を扶養している家庭にとっては、どうなんだろうとも思います。

投稿: やんじ | 2009年10月20日 (火) 13時25分

おはようございます。子ども手当難しい問題ですよね。どうやっても万人が満足いく結果が出ないと思います。
私は というより 当の子どもの意見は
「借金が残る制度ならいらない」です。
我が家は子ども手当は該当しませんが 高校授業料の無料化(実施されたら)が該当いたします。
子育てで一番 苦しかった時期
それは 保育園の保育料です。共働きせねばならないのに・・・共働きの保育料って控除額いれた額でなく支給額で算定されますので。2人で8万近く払っていました。私の給料は保育料と医者代でちゃら(笑)何のために可愛い我が子と離れて働いているのか?悩みました。小学校に入って 給食費と諸費であわせて1人5千円もかからないことにすごく助かりました。
中学校ではおおよそ7千円+部活をしている子は遠征費なぞ 
高校は公立高校授業料と諸費で月1万5千円これに中学旅行積み立てがおおよそ1万円強です。さらに・・・小中学校の通学バス代金は(3.5k以上の子は無料)ほぼいらないです。が、高校は1月定期で学割使ってもおおよそ2万円です。
そんな事情があって 子ども手当一律支給には反対の立場におります。また、その振込の事務費。おそらく市町村の担当者が該当家庭と子どもを検索し、人の目で照合し電算課へおくり 振込という経緯となるかと思います。幸い児童手当が小学校6年までですのでそこまでは現行のデータ利用が可能。中学生分のデーターを作る作業かな?と思います。されど、それにともなう膨大な事務費と人件費(残業手当)はすごい数字です。認知症の姑をかかえ、かつ 自分もフルタイムで働けず、主人の収入に頼る我が家には 配偶者控除及び子どもたちの控除などがなくなり税金(所得税に市町村民税)があがることは 家計が悲鳴をあげることとなるでしょう。もしかしたら高校へ行かすことも不可能となるかもしれません。いえ 医療費にかかるお金を削る必要がでます。癌検診や脳ドックなど我慢です。働き盛りの世代が倒れてゆくかもしれない・・そんな時代の予感がします。子どもは中学校で社会に出ることは今ではほとんどまれです。
必要なのは 社会に出るまでの制度かと思います。いくら生むことはできても 義務教育以降の生活を考えられないままでは いえ 義務教育までは子ども手当という収入があった。以降は?!貯めることのできる人は子ども手当は必要としないとも思います。
これはあくまで私の個人的な意見です。

投稿: はるめ | 2009年10月21日 (水) 12時01分

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