長野市渡邊智子医師の性教育の紹介①小学校で牛を飼う
渡邊智子さんは、長野市の丸山産婦人科医院の医師です。以前から「避妊教育ネットワーク」を通じて知っています。若くて行動力があり、以前から尊敬しています。
私が長野に講演に行ったときには職場を訪ねて行ったこともあります。中でも、彼女の実践で、すごいと思ったこと。それは、出産をするときに上の子も一緒に入院をしてもいい(そこまでだったら広島にもありますが)その上の子が幼稚園に行くのだったら、お弁当を病院が作って持たせるということでした。また、若い女性が妊娠、出産を希望するときに、体験入院をさせます。そして、お掃除やお料理の実習、三時間ごとに授乳の訓練。それらをさせることで、本当に自分は親になれるのかを考えさせます。
私のクリニックでも、中学生が「絶対におろすのはいや。産んで育てる」と言い張っても、実は子育てということがどんなことなのか、全く実感できていないことがよくあります。この体験入院はとても有効だと思います。
その彼女が自分のお嬢さんのいる小学三年生と四年生の二年間に渡って担任の先生と共に性教育をした、その報告です。松本市で彼女がした講演が掲載されている「思春期ネットニュースレター」と、彼女が保護者の方たちに配布した報告集もいただきました。彼女の許可を得ましたので、その両方から転載させていただきます。(少し要約するところもあります。)
「ぼくたちはどうやって生まれてきたの?」子どもたちの問いに向き合う性教育
小学校二年生の娘のクラスで、今年の課題が決まりました。「みんなで牛を飼おう」です。でも本当に小学校で牛なんて飼えるの?授業参観日にみんなで話し合ったとき、当時妊娠中だった私は、担任の先生から助言を求められました。
「牛を飼うということは、みなさんが牛の親になるということですよ。どんなに大変でも、うんちが臭くても、親になったからには放り出せません。」子どもたちは長い話し合いの結果、親になる決心をしました。子牛は四羽(よつば)と名づけられました。
それから一年。立派に育った牛の四羽さんは、月経が来て発情を迎えました。子牛を産ませたい子どもたちは、人工授精か自然受精にするかで意見が分かれました。子どもたちは、どんな選択をしたか。そして四羽を通じて本当に知りたかったこと、「ぼくたちはどうやって生まれてきたの?」の問いに、共に学んだ記録の発表です。
昔も今も変わらない性教育 「男女に分かれ、女子は生理について勉強した。男子は何をしたか分からない。(10代学生)」「女子だけが集められ、ナプキンの使い方などを教わった。(40代女性)」など、内容は大きく変わりません。つまり20~30年の間、携帯電話の普及を初めとしてた子どもたちの交流のツールが大きく変化しているにも関わらず、性教育の内容はほとんど変わっていないということです。性に関して、事実を子どもたちに伝えるのが悪いことであるかのような考え方が教育現場でなされているのが現状で、周りの大人は性教育に関して及び腰であることが多いようです。
(以下、少し要約します。私が娘のクラスで性教育をしたいと考えた訳・日ごろから心がけていたお母さんたちへの働きかけー渡邊先生の父親は産婦人科医で、性教育にも熱心であったにもかかわらず、娘である自分には何にも教えてくれなかったこと。自分の娘にはちゃんと性教育をしたいと思ってきたこと。そして、普段からお母さんたちに生理や性教育への関心を起こすような働きかけをしてきたことなどです。)
いよいよ娘のクラスで性教育ー四羽が月経が始まり、発情を迎えました。「赤ちゃんを産めるようになった」ということを子どもたちは喜び、次の目標はいよいよ「妊娠・出産」です。どうやって四羽を妊娠させるか、それがきっかけとなり、娘のクラスで性教育を始めることになりました。
実践に当たっては、まず親たちの同意を得ることからです。なぜ性教育が必要であるか、早ければ4年生で生理が始まってしまう子もいるので、何も知らないまま生理を迎え、出血を病気だと子どもが怖がるような事態を避けるためにも、事前の教育の必要性を話しました。そして、子どもたちのニーズにこたえる性教育をするということで、親達の同意を得ました。また、子供達は学校での授業の内容を家で話さないことが多く、それが親の不安の原因にもなるので、性教育終了後に内容や様子をまとめたものを渡すことにしました。
第一回目の授業テーマ「四羽の幸せって何だろう」目的:これから四羽の成長と共に、自分たち自身の体の成長を学んでいくことの大切さを知る。(以下、明日に続きます。)
コスモス薬局のHPの中に私の「体の相談室」と「著書」の販売があります。
ぜひ、覗いてみてください。
| 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)
最近のコメント