息子が彼女を妊娠させたなら(3)避妊を教えるということ。
結果的に産めない、育てられない妊娠をしてしまった彼らだって、何もはじめっから「おろせばいい」と思っていた訳ではないと言いました。そうでなくって「妊娠する」と思っていなかっただけなのです。だから、私はここに教育の問題を見るのです。
彼らを責めないで下さい。知らないかった彼らの責任ではない、ちゃんと教えなかった大人の責任だ、と、そんな彼らに出会うたびに私はずっとそう思って来ました。
今、文科省のカリキュラムでは、「避妊」は「家族計画」ということで高校で教えることになっています。中学では「性感染症」を教え、高校では避妊です。私は、義務教育のうちに教えるべきだと考えています。だって、高校でだと、高校に行かない子、中退する子は、何もちゃんと学ばないままに性を実行するようになってしまいます。
私のクリニックでのデータでは、中学生の妊娠の相手の男性は、中学生か社会人、高校生の妊娠の相手は高校生か社会人でした。「社会人」。ちゃんと仕事をしている人たちです。しかも、年齢も半数は二十歳以上の成人でした。大人であったら、ちゃんとわかっているか、いいえ、そうではありません。成人し、仕事もしている社会人たちが十代の女性を妊娠させている、この事実を知らないといけません。
社会に出た人たちに誰が教えてくれるのでしょう。巷にあふれている、雑誌やアダルトビデオ、こんくな物で性や避妊を学び、そして大間違いをしている、その結果が若い女性たちの体に起こっている、そういうことなのですね。
社会に出てしまうと誰も教えてくれないから。だから、私は学校教育の中で教えて置くべきだと考えるのです。
私が先日の中学生に話した内容です。
「将来、この中のほとんどの人が避妊が切実になるときが来るからね。時期はみんな違うでしょう。子どもを何人か産んだ後かも知れない、前かも知れない、間をあけたいときかも知れない。それから、もしかしたら、この中にも、一生性交をしない人もいるかも知れない、それはそれでいいのですよ。個人の選択なのだから。みんなが必ずしなければならないものでは決してないからね。
それから、今はまだ分からないけれど、この中にも将来子どもができない体の人もいるかも知れない。それから、中学生にもなれば、自分で分かることなのだけれど、この中にも、人を好きになるときに異性をではなく、同性を好きになる人もいるかも知れない。それも、個人の選択ですよ。人を好きになるときに、男は女を、女は男をしか好きになってはいけないというものでは決してないからね。ただ、同性同士だと、赤ちゃんを作る、妊娠を目指すというのには、いろいろとハンディがあることは確かだね。
そういう人はいるかも知れないけれど。それでも、ほとんどの人がいつかはきっと避妊が切実になるときが来るから。そのときのためにこの話しをしておくからね。」
こんなことを言うと、必ず私にバッシングが来ます。「中学生に避妊を教えると、中学生が興味を持つではないか。中学生に避妊をしてセックスをするようにとそそのかすことになるではないか」と。違うのです。彼らは、避妊を知って行動をとっているのではないのです。知らないからこそ、行動を取っているのです。避妊を教えるということは、避妊の困難さを教えることなのですから。
内容については、次回話します。
昨日、ギブスが取れました。働き続けたたくましい腕が現れました。もう、本当にうっとおしかったのです。やっとギブスが取れたら、腕が軽いのにびっくり。まるで手がないのではないかと思うくらい、軽かったです。この腕でまた働きます。皆様には、ご心配をおかけしました。数々のお見舞いのお言葉、大変ありがとうございました。
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コメント
えっ!
もう治ったんですか。
エネルギッシュに動かれていますから、細胞が若いんですね。
日曜日から、本格的に働き始めます。
投稿: やんじ | 2009年9月12日 (土) 08時57分
ギプスがとれたそうで、よかったですね!おめでとうございます。
河野先生のご活躍をお祈りしています。
リレーフォーライフでお目にかかれるのを楽しみにしております。
投稿: 緩和ケア薬剤師 | 2009年9月12日 (土) 10時05分
おはようございます。
家庭教育って大切だと、先生のブログを読みながらいつも思います。学校で親も子も お医者さんからお話を聞くってコトは、恥ずかしいってコトすっとぶので
異性に興味をもつ中学生や小学校高学年から正しいことを知るって大事だと思います(とっくに興味津々で子どもたちだけで話しをしてるんですものね)
先生のおかげで、我が家も家族で(とうさんも一緒に)、子ども達と話しができるようになりました。
AIDSのコト学校で学習したときに、家で質問されたんですよ。先生の講演を聴いてなかったらば、きっとお茶をにごして終わりだったと思います。
県北で先生の講演がある日がないかなぁ・・っていつも楽しみに待っております。できれば高校生にもって思うですけどね。
投稿: はるめ | 2009年9月12日 (土) 10時50分
中1の息子をもつ母親です。
本人にはまだ性に対しての興味はないようですが、いつ教えるべきか悩んでいます。
自分が学生の時ちゃんと教わった記憶はありません。
正しいことを教える大切さ。大人がちゃんとしていかなくてはいけませんね
主人と相談してそろそろ教えていこうと思います。
投稿: miyu | 2009年9月12日 (土) 11時04分
河野先生は、子供を信頼し過ぎてはいませんか?
私なら、息子を全身全霊かけて殴り倒し、半殺しにします。
髪の毛をつかんで引きずって行き、相手のご両親に土下座させ、勿論赤ちゃんは堕ろさず、就職が可能な年齢ならば就職させ、育てさせます。
私は根性論は嫌いなのですが、こういった事に関しては鬼になります。
力愛不二。やはり、力で分からせなければならない事はあります。
正確には「分からない」でしょうし、私に対する憎しみは残るでしょうが、こうしなければならないのです。
結局、今の社会全体が病んでいるのですよ。
何と言うか、外国ならば宗教が精神的支えとしてありますし、道徳的教えの部分に価値があると思います。
しかし、日本にはそれがない。勿論、武士道だの愛国心だのが支えになるとは思いません。
では、どうすれば解決するのか?それは私ごときでは分かりませんが、支えになる物がありませんよね。
本来、中学生や高校生で初体験を迎える事自体が異常です。
何故、異常に早く、そうまで恋愛や性にのめり込むのか分かりません。
この国の人か忘れましたが、ある留学生が、日本の大学生が余りに幼稚で驚いたとか。
考える事、話題は全て恋愛、ファッション、車や芸能人。勉強もろくにせず、毎日遊ぶだけ。社会や国の事は一切考えず、話しても通じない。
彼の国では、若者は恋愛等二の次で、皆社会の事を考えているし、真面目に勉強するそうです。
私は、「若いから」の一言で、正当化させたくありません。若くてもしっかりしている者は、しっかりしています。とにかく若い者には緊張感がなさ過ぎます。
例え右翼でも、国や社会の事を考えず、恋愛しか興味を持たないような腑抜けよりは遥かにましでしょう。
本当は、河野先生が身を粉にして説いて回らなければならないような社会ではだめなのです。
社会が病的だから、河野先生が孤軍奮闘しなければならないのです。
こんな社会を何とかしたいのですが、どうすれば良いのか私には分かりません。
投稿: けん | 2009年9月12日 (土) 16時06分
やんじさま
ええ、すっかり大丈夫。少し腫れてて痛いけれど、これは長い間固定していたので、その痛みと思います。仕事をすることでリハビリになるでしょう。やんじ三も仕事、お気をつけて下さいね。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2009年9月13日 (日) 17時50分
緩和ケア薬剤師さま
ありがとうございます。どうも、おっちょこちょいで、困ったものです。リレーフォーライフ、頑張ってお話ししますね。お会いできるのを楽しみに。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2009年9月13日 (日) 17時54分
はるめさま
コメントありがとう!!少しお元気になられたようですね。美土里中に行くの、楽しみにしています。それまでに、三次や石見の中学校にも次々と行きます。中学で話しができるの、うれしいことです。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2009年9月13日 (日) 17時56分
miyuさま
コメントありがとうございます。本当は、性に興味を持つ前から、体のこととしてちゃんと伝えてほしいのです。頑張って下さいね。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2009年9月13日 (日) 17時58分
けんさま
コメントありがとうございます。おっしゃりたいこと、お気持ちは分かります。でもね、そのようなお父様の行動が予測できるとき、何とか親に知られないように、親に言いたくないから、内緒で中絶してくれ、と女の子に頼む男性も沢山いるのですよ。男の子の親が知らないままの中絶は、とっても多いのです。それから、産む、産まないを決めるのは、男の子の親ではありません。本人たち、それも彼女がどう思うのか、それを尊重しないといけませんね。それから、大学生にもなって、人を好きになることは当然のこと。恋愛をくだらないものと決め付けるのは、さびしいですね。どこの国でも、若者たちは、恋愛と同時に、勉強も仕事もしっかりしています。素敵な恋愛は、人生の充実に結びつくのでは、と思いますよ。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2009年9月13日 (日) 18時04分
先生のブログを通じて色んな考えに触れ、とても勉強になります。
私の場合、実母が厳しすぎて本音が言えず、親の顔色を伺う青春時代でした。
結婚して、義母に出会い、正反対の態度に感涙した事が多々あり。
人それぞれ価値観が異なるから、一概に正しい・悪いと決め付けられないのも仕方ない事。
>素敵な恋愛は、人生の充実に結びつく
大いに同感。恋愛に限らず、信頼出来る人に出会えると、心がホッとしますよね。
投稿: r s | 2009年9月14日 (月) 09時31分