「ママ、もし、私が高校生で妊娠したらどうする?」
娘が小学生の時、私にためすように言ったことがあります。当時、私は勤務医で、若い人の妊娠だの、中絶だの、養子縁組だのと奮闘していたころです。
私は言いました。
「ママがどうするという問題ではないでしょう?あなたがどうなのかということでしょう?あなたが、この妊娠はつらい、産みたくない、と思うのか。ああ、うれしい。私はこの子を産んで育てたいと思うのか。それによってママがあなたをどう助けてあげるかが、決まると思うよ。いい?私の問題ではなくて、あなたの問題なのだからね。」
そしたら、娘は、「ふーん」と考え込んでいました。そして、言いました。
「でもね、パパがね。」と。
「そうね、パパはきっと悲しむよう。あなたを殺す!と言うかもしれんねえ。もし、そうなりそうだったら、パパには内緒にしないといけないこともあるかもねえ。」と。
そして、中学生の息子にも言いました。もちろん、まだ彼女なんていない時です。
「彼女を妊娠させたらいけんよ。もし、妊娠させたら、その時、あなたから「おろしてくれ」と頼むことは許さないよ。彼女がもしこの妊娠はつらい。私は産みたくないと言ったら、それはしようがないけれど。彼女が産みたいと言ったら、それはちゃんと引き受けないとね。ちゃんと働いて、親子の生活を支えんといけんよ。」
そしたら、娘がそばから言いました。
「大学はどうなるん?」と。
「行けるか。大学なんか行かずにちゃんと働かんといけん。しっかり働いて、もし、将来生活にゆとりができて、また勉強したいと思ったら、そのときに大学に行けばいい。」
そしたら、娘がまたいいました。
「あああ、お兄ちゃんの人生、真っ暗じゃ!」
そしたら、息子が
「妊娠何かさせんよ。そんなことはせんよお。」
と言ったのです。
私は、あくまでも自分のこととして捉えてほしかったのです。自分のからだ、自分の行動は自分自身のもの。他の誰のものでもありません。親のものでもありません。そう考えてほしいと思っています。だって、結果のすべてが自分自身にかかってくることなのですから。ただ、自分の責任として考えるように、様々な情報は積極的に与えたいと、そう思っています。ここに述べた避妊のしんどさも含めて、ちゃんと伝えておかなければと。
その上で。もしも、自分の息子さんや娘さんに何か困ったことが起きた時。まず、しっかり話しを聞いてあげてほしいのです。自分自身はどう思っているのかと。親が子ども自身のことより、自分の立場で対応すると、それも自分自身の世間体が前面に出るとき、とても子どもの心を傷つけてしまいます。
彼、彼女のためにどうすればいいのかを子どもたち自身と共にしっかりと考えてほしい、そう思います。
これも以前、家庭での性教育のシリーズで述べたことなのですが、
「何かあったら助けるよ。私はあなたの親なのだから、あなたが困ったときには、何があっても助けてあげたいと思う。どうしたらいいか分からないときには、どうしたらいいか、一緒に考えてあげることができると思う。ここに、相談相手がいるということだけは忘れないでね。」
と、何かあったら助けるよ、とのメッセージは機会あるごとに伝えてほしいのです。私は、身近に相談相手を持たず、親には知られたくないがために時期を失し、そのためにもっと悲劇を拡大する、そんな若者の姿を散々見てまいりました。
厳しく禁じていれば、それで行動は取らないだろう、とそう考えていたなら、甘いのです。その結果は、ただただ親に内緒にしようとするだけです。若者自身が賢く行動できるように、自身で納得できる、そんな伝え方をしなければ、と思います。
もしも、二人が人工中絶を望むという結論を出したのであれば、それも個人の選択です。ちゃんとした中絶の仕方ができるようにサポートをしてあげて下さい。親に知られたくないがゆえに、遠方の、安くて、同意書もいらないような、その後の薬も診察もしないような、とてもいい加減なところで手術をして、後が大変だった子もいます。中絶をしたら、それでその子の人生がすべてダメになってしまうわけではありません。また、早く立ち直って強く生きていくこと。そのためのサポートも必要です。私は人工中絶なんて、一回きりのもの。二度と繰り返さないこと、そのために必要なのは何だろう、と、そんなケアをしています。
もしも、二人でこれから産んで育てようという結論を出したのであれば、周りはそのサポートをする、そんな覚悟も必要なのだと思います。ちょっとした親のサポートで、ちゃんと子育てをしながら、二人とも高校、大学を卒業して就職したカップルもいます。
一旦、これでこのシリーズを終わります。いろいろなご意見、ありがとうございました。まだすべての方のコメントにお返事を差し上げていません。ごめんなさい。これから、ゆっくりとお返事をしますので、お許しくださいませ。
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