若者の無知⑨風俗は危険がいっぱいです。
風俗で働く若い女性の来院がとても増えて来ました。いえ、以前から来てはいたのですが、その中身というか、人が変わっています。以前は、風俗といえは、ソープランドで働く人がほとんどでした。そして、それなりにプロの意識と知識を持っていました。お店も結構厳しく彼女たちに性感染症の検査などを義務づけていました。それに、ほとんど全部の人が避妊を確実にするためにピルをのんでいました。例外的に、ソープで働きながらパートナーとの間で妊娠を望む人は、仕事の時には確実にコンドームを使い、彼との間ではフリーで、という人もいました。
彼女たちは,プライドもあり、プロ意識に徹していたと言えるでしょう。
でも、現在風俗で働いているという人は、圧倒的に「ヘルス」です。ヘルスなら、本番はないのが建前ですので、避妊はしていません。でも、建前が現実そうなのかというと、決してそうではなく、結構本番もあっています。でも、してはならないことになっているので。ピルを飲むとか、コンドームほ持参するとかが出来ないと彼女たちは言います。
それに、何よりも病気に対して全く無防備です。ヘルスで働く女性には、とっても性感染症が多いのです。これも、以前書きましたが、石鹸で洗えば病気にはならないと経営者にうそを教えられ、本気で信じている女性もいました。いくら表面を洗ったって、男性の中まで洗えるわけもなく、それに菌やウイルスを殺してしまうような石鹸なんてありません。
妊娠して、中絶も時期を失っして、産むしかなくなったヘルスの女性もいます。それに、何より私の胸が痛むのは、とても若くて、田舎から出てきた女性が多いということです。まだ純朴なにおいのする彼女たちがヘルスで働いています。なぜ?と言っても、やはりお金のためなのでしょう。せっかく進学のために広島に来ても、そうして風俗で働くことで、やがて学校に行かなくなり、退学してしまうと、そんな子も決して少なくありません。
田舎の親の扶養に入っている保険証を見ると、胸が痛みます。親は知らないだろうなあ、と。
まるで素人の彼女たちは、自分の身を守る手段を知りません。本当に無防備ですし、お店でなく、デリバリーの場合は、自分の知らないところで男性と二人っきりになってしまいます。まさに、命を危機にさらしているといえます。妊娠や病気や、命そのものまで危険なのです。
本番がないということでまだ自分に対して免罪符を与えているのでしょうか。でも、考えてみれば、手と口で一方的に男性を満足させるというこの行為は、とてもいびつなものです。自分自身のプライドを捨ててしまわなければとてもできることではありません。人間としてとても大切なことを捨ててしまっているようで。だから胸が痛みます。
そして、男性たちも、本番のない風俗なら、病気にはならないだろうと考えていたら大間違いだと、警告しなければなりません。口の中、のどにも淋菌やクラミジアが住み着きますし、ヘルペスも梅毒も唾液で感染します。風俗でそんな菌やウイルスをもらったことに気づかないで、妻にうつしてしまって、彼女が大変なことになってしまったという人にも出会います。
そもそも先進国で、これだけ風俗で、それもパートナーのいる男性が性行為をしているというのは、とても珍しいことなのです。これを見ても、やはり日本は三流国なのだというしかないでしょうね。
少なくとも、高校を卒業して進学したり就職したりすると、すぐに風俗が身近になるはずです。だから、私は高校生には風俗の危険についても話ておきたいと思っています。もちろん、男性にも女性にも、です。
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コメント
河野先生の講演会を宮崎の看護協会で聴いてから、ブログをみています。今のシリーズ、是非是非みんなに知ってもらいたいです。私は、里親として子供を養育しています。子供がほしくても授からなかったのですが・・。
3歳で我が家にきた女の子は、愛着形成に問題のある子供でした。今は、愛情をいっぱい表現できる子供になりました。望ままい妊娠で児童施設で過ごす子供たちも何人もみてきました。人を信じられない子供たちをたくさんみてきました。とても辛いです。先生応援していますので、本当に頑張ってください。
投稿: | 2009年3月10日 (火) 15時41分
若者の無知シリーズ、大変勉強になります。私は若くは有りませんが(笑)。
生理痛のとき、癖になるからと我慢している人って確かに結構おおいですよね。痛いのを我慢するって精神的にも・・・、つらいと思うけど・・。それから妊娠周の数え方も若い人たちはホント知らない人がおおいです。母親から教わったりしないのでしょうか。
私は、風俗の世界のことも知らなくて・・・、20年くらいかもっと前、婦人科で友達がアルバイトをしていてソープで働いている人が毎月検査に来る話をしていたのは覚えています。今は、そうじゃ無くなってきているんですね。ってことは、ある意味命がけの仕事になっていますよね。
避妊をしないSEXに「NO」を言えない女性。辛い思いをするのは女性です。一体、どうしたらいいのでしょう?私たち大人は何をしたらいいのでしょう。
学校での性教育の不十分さがいけないのでしょうか?親は自分の子どものことをどこまでわかっているのでしょうか?
とりとめなくてすいません。
投稿: momoko | 2009年3月10日 (火) 16時29分
親に相談できなくて、養護の先生に妊娠の相談をした女子中学生の話を思い出しました。

各高校にも、年に1回は「性教育」の時間はあるようですが、どんな内容だったのか、保護者には不明。
産婦人科医ならではの実態(避妊・風俗の危険について)を、中・高校生はもちろん大人も知る必要性を感じています。
広島の教育現場での性教育は後退?
先生の講演は、広島の学校でも可能ですか?
河野先生は普段の診察で超多忙だから、PTAとして希望しても当分無理でしょうね。
どうぞ、御自愛くださいませ。
投稿: r s | 2009年3月10日 (火) 18時20分
こんにちは、風船マンです!
いやあ、みんな悩んで大きくなったのですが、高校の頃、先生のような方の話を聞いていればよかったと思いました。
ところで週末は、子育てマガジン「ファンファンファン」のモデルオーデイションで風船マンしています。前回は180人くらいのちびっ子がやってきましたよ。ブログに案内を書いております。よかったらご覧ください。
投稿: 風船マンはるく | 2009年3月12日 (木) 15時53分
初めまして。
東京では養護学校で教師と当事者(保護者等)で同意してオリジナルのコンテンツで行っていた「性教育」を脳味噌がポルノ雑誌・アダルトビデオの塊のような「都議会議員」という名のオッサン(カルト宗教とかナントカ神社を崇拝するようなイカれた)連中が「3K新聞記者同行」のうえ大騒ぎして教材をいかにも如何わしいものとして撮影させ3K新聞に公表しその「教育」自体できなくし「性教育」を行ったという理由だけで教育委員会が懲戒処分を行って裁判となっていたが当然の結果が出ました。
http://kokokara.org/index.html
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正しい性教育(=第二次性徴以降性行為を行うと妊娠する可能性がある、性行為を行うと妊娠のほか命に関わる病気に感染するリスクが増える、望まない性行為を行わない・させない、性を金銭を得るための道具として使わない・させない、そのためのセルフコントロール方法を学習する)を行わないから望まない妊娠や性風俗産業に抵抗なく接触してしまうのでしょうか。
日本の社会がそういうものを拒絶せずなんとなく受容し放置している結果なのでしょうか? 外国では性風俗産業は「売春」という犯罪行為で処罰の対象もしくはそういう行為を営むことを禁止する法律があるぐらいですから。猥褻な内容な雑誌(文字通りビニールに入った本、立ち読み絶対不可にするため)は人を介して(コンビニの店員にレジの後ろにあるタバコの銘柄を指定して購入するのと同じ要領)購入する意思表示をしないと買えない)でないと購入できない国もあります、日本の風営法は全ての風俗営業に対してザル法です。
(但し、普通のダンススクール(いわゆる社交ダンスや競技ダンスを行う場所)が風営法に定義されてしまっているのも問題ですが。)
投稿: ぷに | 2009年3月15日 (日) 12時00分
宮崎の方?でしょうか。
コメント有難うございます。今年また宮崎の看護協会に行かせて戴くことになりました。皆様にお会い出ること、とてもうれしいです。どうぞよろしくお願いします。私も何人ものお子さんの養子縁組のお手伝いをしてきました。もう一番上の子は大学を卒業して、社会人になっています。さぞご苦労も多いことと思います。お子様、幸せになられて本当に良かったですね。また、行きましたときにはお声をかけてくださいませ。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2009年3月16日 (月) 01時17分
momokoさま
いろいろとコメント有難うございます。これからも情報を発信していきます。たとえ子どもたちに直接伝わらなくっても。読んでさった大人の方たちが少しでも意識してくだされば、と思います。どうぞ、これからもよろしくお願いします。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2009年3月16日 (月) 01時20分
rsさま
もちろん、私は広島の学校でも可能です。むしろ近くだと、行く時間がかからなくって私は楽です。ただし、講演は木曜日か日曜日の診療がない日だけなのです。土曜日に、といわれることが多いのですが、診療をサボって講演をということはしたくない物ですから。ヒロシマの性教育は明らかに後退していますよ。いつかゆっくりお話したいですね。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2009年3月16日 (月) 01時23分
風船マンはるくさま
お久しぶりです。
相変わらず、お忙しそうですね。でも、はるくさんのお仕事(本業は別にして)は夢があって素敵です。今日もにぎやかだったことでしょうね。多くの子どもたちに囲まれて。ちょっとうらやましいです。コメント有難うございました。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2009年3月16日 (月) 01時27分
ぷにさま
ここから裁判の応援をしていた者として、今回の判決は、とてもうれしかったです。でも、あの事件で傷ついた先生、保護者、それに何より子どもたちの心の傷は傷ついたままでしようね。本当にこの国の政治、行政は間違った方向に行っていると思います。これからもここに情報を発信していきますので、どうぞ時々は覗いてくださいませ。コメント有難うございました。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2009年3月16日 (月) 01時33分