若者の無知⑥月経前の体の不調について。
ホルモン的に成熟して、月経周期がキチンとした人には、月経痛に加えて、また困ったことが起こりがちです。月経の前になると、体がだるい、眠い、いらいらする、うつになる、食欲が増す、性欲はなくなってしまう、というからだの不調が起こってしまいます。
卵巣からは二種類のホルモンが出ています。いわゆる女性ホルモンといわれる卵胞ホルモンと、主に排卵した後に出る黄体ホルモンです。このに黄体ホルモンが曲者なのですね。黄体ホルモンは、体温を上げ(だから排卵後の基礎体温は高温になります)、かつ体に水を溜め込む働きがあります。尿の出が悪くなったり、便秘したり、体がむくんだり。さらに脳もむくみますので、眠かったりいらいらしたりするのですね。
この症状がとてもつらい人は、PMS、月経前緊張症候群と言って治療を要する場合もあります。治療には、むくみをとる漢方薬や、それだけでは不十分な人には心の安定を図るようなお薬を出す場合もあります。よく、この症状の人が「ホルモンのバランスが悪いのではないか」、と言ってこられるのですが、そうではなく、逆に「ホルモン的に成熟しているから」こそ起こる症状なのですね。
こんなつらい症状も、月経が始まるとまたけろりとよくなるのです。これは、一体何なのでしょう。それは、私たち人間も「生殖動物」であることに起因します。私たちはほかの動物に対して偉そうな格好をしていても、所詮、「生殖動物の一種」なのですね。
生殖動物は、いえ、この世のあらゆる生き物は、すべて自分たちの子孫を残そうてします。まるでそのために生きているかのような生き物だっています。
人間の女性のリズムも、これはひたすら生殖のリズムなのですね。毎月、排卵をして、妊娠をしようとします。そのときは、卵胞ホルモンが沢山出て性欲も最高にに高まります。そして、排卵をすると、ぴたっと性欲をなくし、それ以上の生殖の行為はストップさせます。そのかわり、食欲が増えます。しっかり食べて、ぐうぐうと寝て、体を安静にさせようとするのですね。
そして、その排卵も妊娠しなくて月経が来ると、さあ、もう一度、と卵を作り始めます。まるで毎月毎月妊娠せよといわれているような、そんな体のリズム、これが月経の周期なのですね。
だから、排卵の後のPMSも理由があることなのです。食欲については、月経の前と後で体重が二キロは違う人なんてざら。私の接した人では五キロ違うという人もいました。
そんな症状は別に大変なことではありませんので、「自分の体が成熟している証拠」と捉らえて、何とかやり過ごせばいいのですね。でも、もしとてもしんどければ、どうぞ、産婦人科に相談に行ってください。思春期の女性など、この時期に暴れてしまって回りが大変、と言う人もいます。そういう人は、治療をしてあげた方が本人も楽でしょう。
自分だけが特別なのではありません。多くの人がこのリズムが当たり前のことであるということを知らないからこそ、悩んだりするのです。全く科学的に理にかなったこと、と知れば、知っただけでも心が軽くなるものなのですね。
それから、男性も、自分のパートナーにこんなリズムがあるのだということを知ることは、パートナーシップを良くするためにも必要なことなのだと思います。

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