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がん患者さんと筑紫哲也さんと。

 今夜は京都のホテルにいる。明日の木曜日は、金沢で講演のため、診療を終えてここまでやってきた。広島から金沢往復、日帰りだと少しつらすぎるので。

 また、例によって、ホテルで駅弁を一人ぼそぼそと食べた。前、京都の駅で何もお弁当がなく、ひどい目にあったことがあるので、広島駅で買ってきたお弁当だ。

 今日お昼時間に、あの患者さんが入院している病院に行った。きっと筑紫哲也さんが亡くなってショックを受けているだろうと思ったので。この前、峰岸徹さんが亡くなったときもそうだったので。案の定、すっかりうつ状態となっている。やはり昨夜の追悼番組をはじめから終わりまで見たのだそうだ。

彼女は頑張って、今4クール目の抗がん剤の治療を終えたところだ。すっかり食欲もなくなって、お昼も一口も食べなかったと。これから5クール目を始めるまでにしばらく休みがあるので、また食欲が出てきたら、何か食べに行こうね、と約束してきた。

 彼女も筑紫さんの大ファンで、あのニュース番組は欠かさず見ていたと。そして、「まあ、筑紫さんが癌じゃと。」と、気の毒に思っていたと。そしたら、今度は自分がこうなってしまったと。でも、3月に余命3ヶ月といわれていたのに、11月まで頑張って生きちゃったんじゃねえ。私も言った。筑紫さんは、ずっと笑顔じゃったねえ。いろんな人にいろいろな笑顔をされていたよ。すごい人じゃねえ、と。

 私は、あの筑紫さんがどのように「死」を受け入れられたのか、それが知りたい。今日の毎日新聞には、筑紫さんをインタビューした人の記事があった。それによると、「結局生きている間に、どれだけ楽しむか、ではないかと思う」と言われたようだ。病を得た後も、何にでも興味津々で、笑顔で人と会話をしていたあの姿は、結局すべてを楽しもうと思われた、それ故だったのだろう。

 最後まで緩和ケア病棟を拒否して、治療を希望していたという、その姿に涙し、同時に勇気ももらった。闘病記を書かれていたようなので、きっとそれが出版されるだろう。絶対読もうと思う。

 彼女は、今日はうつで「もう、死んでもいいやと思うようになった」と言っていたのだが、抗がん剤の効果があるし、どこがいけないという訳でもない。6コースの抗がん剤を希望を持って頑張ってもらいたい。そんな話しをしてきた。

 それにしても。京都まで来たのに、紅葉のひとつも見ず、京料理のひとつも食べず。金沢でも講演だけの時間しかなく、せめて兼六園くらい行ってみたいと思ってもかなわず。いえ、そんな愚痴を言ってはいけない。呼んで下さるところがあるというのは、とてもありがたいことなのだから。


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広島ブログ

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コメント

河野先生お久しぶりです。
 あまり良い話題の時にお便りしなくて申し訳ありません。しかし今回もです。緒形さん峰岸さんそして筑紫さんと、立て続けに大好きな人たちが亡くなって非常に大きな喪失感の中にいます。「風のガーデン」を観ながら毎回泣いています。緒形さんの台詞がいちいち胸にこたえます。ドラマのワンシーン、寝たきりの在宅患者の役を織本順吉さんがされてますが、緒形さんは往診に来た町医者。緒形さんは身内以外誰にも癌のことを知らせていなかったそうなので、ドラマ上では診られる立場だった織本さんは、突然の訃報にふれ、どんなふうに思っただろうかと想像するとまた泣けてきます。このドラマを見ているある癌患者の言葉を読みました。「人間はどれだけ長く生きたかよりも、どれだけ自分の生き方に納得するかが重要なのだと思う。」と書かれてました。納得できたかではなく、納得するかというフレーズにぐっとくるものがあります。どんな人生であれ納得しなきゃいけないんだろうな。などと思ったりしています。
筑紫さんは私にとって灯台のような人でした。じぶんの考えを確認したり修正したりする教師でした。彼も闘病生活1年余りで逝ってしまいました。常に少数者への熱いまなざしの元、権力に立ち向かう。でもその雰囲気は落ち着きがありゆとりがあり穏やかでしたね。眼光は鋭いのに、決して相手を叩き潰さず、相手の言い分を聞きながら、決してひるまずゆるぎない。そんな人間に私などは到底なれるはずもなく、それだけにそんな筑紫さんが大好きでした。おりしも田母神前航空幕僚長の論文問題が世間をにぎわせていますが、筑紫さんなら「多事争論」でどんなふうに語っただでしょう?軍人である自衛隊員が国民に銃口を向ける日はそう遠くないと感じます。生きていて欲しかった。深い悲しみの中で悔しさを噛みしめています。残念です。本当に残念です。

投稿: おとぎぞうし竹本 | 2008年11月13日 (木) 08時26分

結局生きている間に、どれだけ楽しむか・・・・

私もそんな状況で 笑っていられるかどうか
自信はないです。

河野先生も 忙しい毎日を送られているんですね。
子どもが学校から 河野先生の公演の案内を持って帰りました。 いつもはその会場でヨガ教室に参加して心と体のリフレッシュをしています。
20日は会場が変更になりますよ~と言われていたのですが 河野先生の公演があるからだったのですね。
20日は 大好きなヨガ教室をお休みして お話を聞きに行きます。楽しみにしている人が たくさん待っています。県北は寒いです。この2日 朝は霜が降りています。暖かくして着てくださいね^ー^*
             茶種

投稿: 茶種 | 2008年11月13日 (木) 08時48分

京都まで・・・来られたのですね。
毎回、ホテルで・・・冷たいお弁当とは・・・(以前の記事もそうでしたね)。
食い意地だけで生きている私からすると・・・あまりにも悲しすぎます。
次回、関西へ来られる時は・・・美味しい関西の味へお連れしたいです。
是非、ご一報ください!!!

投稿: さくらこ | 2008年11月13日 (木) 10時17分

おとぎぞうし竹本さま
痛恨のコメントを戴いたのに、なかなかお返事を書かなくてすみませんでした。本当に悲しいですね。私、竹本さんの書かれたこと、まるごと私とぴったり同じ思いです。ただ、筑紫さんは、私たち一人ひとりにもっとしっかりしてほしかったのではないか、と思います。その分、頑張らなくっちゃと、やっとそう思うようになりました。いつか、ゆっくりお会いしたいですね。コメントうれしかったです。ありがとうございます。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2008年11月16日 (日) 19時49分

茶種さま
コメントありがとうございます。ええ、私もなんか今回の筑紫さんの生き様は、ひとつの指標を与えられたように思います。わたしも穏やかでありたいと。庄原での講演お会いできればうれしいです。少し早めに行って、お風呂でも入ろうか、なんて思っています。どうぞよろしくお願いします。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2008年11月16日 (日) 19時54分

さくらこさま
そうなんです。一人で、ぼそぼそとお弁当を食べるの、もうちょっとあきています。では、お言葉にあまえましょうか。でも、夜だから、ご迷惑をかけるしなあ、と迷うところです。ありがとうございます。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2008年11月16日 (日) 19時57分

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