医療崩壊、私のクリニックも赤字転落です。
銚子市立総合病院が閉鎖されました。同病院のホームページを見るととても立派な病院です。昭和25年設立以来の歴史も記されています。スタッフと市民の生き生きとした交流の姿も垣間見えます。閉鎖に向けての「ごあいさつ」を読むと、無念の思いが伝わってきます。
後期高齢者医療だけでなく、医療全体が危機に陥っています。先日舛添厚労大臣が「医療の問題もちゃんとやった」と胸を張って言うのを見て、こけそうになりました。マスコミも、銚子総合病院だけでなく、医療危機についてはいろいろと述べています。
医師不足、絶対数が足らないというのが一つ。それと、新人医師の研修体制が変わって、大学病院に医師が残らなくなったというのがもう一つ。そのために大学が地域の病院に医師を派遣していたのが、医師がいなくなって派遣できなくなりました。
確かに、そうだと思います。でも、大切なことが抜け落ちています。社会保障費の削減の方針に伴い、医療費がどんどんと削られているその現実です。いま、総合病院の80%近くが赤字だと言われます。周辺のどの病院に行ってみても、患者さんが沢山いて、外来はごった返しています。これだけ患者さんがいて、なぜ赤字なの?と思ってしまいます。
それは、医療費削減の大きな方策が「診療報酬の引き下げ」に寄っているからです。診療報酬の点数が引き下げられ続けました。これまでと同じことをしていても、入ってくる収入が減れば、経営する側としては、どう対応すればいいのでしょうか。たとえば、リハビリの点数が下げられれば、リハビリに携わるスタッフの報酬を下げなければなりません。ひとり一人の給料を減らすか、人数を減らすかのどちらかで対応せざるを得ません。リハビリそのものにも制限がされました。
私がしつっこく言っていることですが、医療の現場では、「脳卒中のリハビリ」は発症後原則半年で打ち切りとされてしまいました。でも、患者さんをそこで放り出すわけには行かないので、後は無料奉仕としてリハビリを続けているといった医療者もいます。時間外にやって、時間外の給料は戴かないといった人も。
私は、開業以来、「医療は必要最低限であるべき」と思って来ました。収入を上げるために、無駄な検査はしてはならないと。でも、同じ方針で診療していると、厚労省の決めたとおりに、まことに素直に収入が下がっていきます。当初あった黒字もどんどん少なくなって、ついに赤字転落です。私の休みの日に講演に行っていただく講演料もすべて経営のためにつぎ込みます。経営のために従業員の給料を削るなんて出来ません。人数を減らすことも出来ません。
ある大先輩にそのお話をしました。そしたら、「収入を増やす努力をしなさい。無駄だと思っても、ちょっと超音波エコーを沢山診るとかしなさい。患者さんに悪いと思っても、倒産してクリニックを閉鎖することの方が、患者さんのためにならないでしょう」といわれました。なるほど。で、そう思っても、ぜんぜんダメです。必要ないけれどこの検査をしておこう、なんて思っても、もう患者さんを三人診ればそのことは忘れてしまいます。私は経営者には向いていません。
私のところのような小さなクリニックでもそうなのだから、まして、病院の経営者は大変だろうと思います。やっぱり普通に、それも忙しく診療をして、それでも赤字になる医療の構造がおかしい、そう思います。
国民の命にかかわる部分、医療や年金などの社会保障にまで構造改革の名の下に削減をすることそのものがおかしい。おそらく、これからもどんどんと倒産、閉鎖する病院は増えるでしょう。困るのは、結局患者さん、国民なのだと。弱い人たちにそこにしわ寄せが来るのだと。国民がみずから選び続けた、国を司る人たちが、こんな状況を作っているのだと、つくづく思い知っています。
はい、北海道展です。「潮騒の宴」本当に豪華でおいしいお弁当です。もっと小さいのを二個買って食べました。そしたら、診療中に夫から電話があって、またあのお弁当を食べたい、買って来て、と。今度は、このデラックスにしました。もう、超豪華。これを二人で食べましたが、食べ切れなくて、苦労しました。タラバガニの下には、ズワイガニの身がぎっしり。見えませんが、その下には、錦糸卵がびっしり敷かれています。これで2100円。一人1000円ちょっとでこんな新鮮な海の幸がたらふく食べれるのはありがたいと思いました。北海道展ももうすぐ終わりです。ちょっとさびしいです。
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コメント
美味しそうお弁当につられて、
また来ました(^^)
私も、厚生省管轄の仕事(医療ではありませんが)
をしておりますが、世に言う規制緩和の波に
さらされております。
地元の市立病院も最近建て替えをしましたが、
早速何億の赤字を計上しています。
こちらでも、医師不足で里帰り出産も
出来ない状況に陥っています。
地元の産婦人科の医師の方ですが、
新聞に載っていた
コメントを思い出しました。
医師3人で、地元で唯一の分娩施設。
年1200人の出生数を扱い、診療、婦人科の手術も行う。不眠不休でお産から診察を行い、ついに1人倒れてしまった・・・・倒れるトキは、共に倒れようと仲間同士で頑張っていますとの事でした。
産婦人科の医師の方々には、
頭が下がる思いです。
先生もお体に気を付けて。
投稿: ある | 2008年10月11日 (土) 11時34分
どこの診療所もそうなのですね。
歯科医院(歯科衛生士です)も、診療所の数も多く、状況は悪化しているみたいです。
そして、患者さんの立場から見ても、診療負担が増えて・・・
私が主に行っている、予防歯科治療も患者さんにとっては、かなりのご負担なのだろと思います。
それでは、逆効果なのに・・・
日本は赤字国家とよく聞きますが、国民に負担を強いる前に出来ることは、山ほどあると思うのですが。
自分たちが苦労するのは嫌なのでしょうか?
そうとしか思えませんね。
投稿: youko | 2008年10月11日 (土) 16時53分
お久しぶりです。
医師として不必要な検査も、患者からみれば安心できる検査もあると思います。
エコー検査も、体にあまり負担なく、もしかしたら患者としては、受けてみたいと思われる人もいらっしゃるかもしれませんね。
「必要ないと思うけど、検査してみる」と言う一言で、患者さんに選べる機会があってもいいと思います。
皮下脂肪の厚さもわかりますからね。(笑)
投稿: 山路 | 2008年10月11日 (土) 19時25分
こんにちは,
病院の経営とかはよくわかりませんが
患者さんも過ごしやすい病院を
目指していただきたいとおもいます。
患者数が増えると違うのかな?
そうそう
北海道展は天満屋がまた始めますよ
投稿: ciao | 2008年10月14日 (火) 00時08分
あるさま
本当に日本中、どこでも医療の問題は大変です。それは、やはり政策そのものに問題があると考えないと、と思います。国民の命に関することです。最優先してほしいと思います。コメントいただいたのに、お返事遅くなってすみませんでした。お送りしたの、届きましたか?河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年10月15日 (水) 08時16分
youkoさま
確かに。私が行っている歯医者さんも患者さんが多くて大変なのに、収入が落ちてしまって、経営が大変だといわれています。人も沢山雇わないと、診療がこなせないので、人件費が大変なのですね。うちとおんなじです。しんどいことです。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年10月15日 (水) 08時21分
山路さま
コメントありがとうございます。お元気ですか。ええ、そうですね。患者さんにたずねるというのも、一つの方法ですね。でも、癌健診一つでも、「いくらかかりますか」と聞かれる方も多くなりました。どなたも、お財布は大変なのだと思います。そろそろお薬がなくなる頃だと思いますが。お返事遅くなってすみませんでした。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年10月15日 (水) 08時24分
ciaoさま
そうですね。医療者ももっとスービス業としての自覚を持たないといけませんね。大学病院も、市民病院も新しくなって、ホテルみたいにきれいで、ナースも親切で。だから、多くの患者さんでごった返しています。それでも、大赤字なのですね。それが、一般の企業と違うところなのでしょう。ものが沢山売れればもうかるというのと。診ても診ても赤字だと。うちもそのパターンにはまってしまっています。コメントありがとうございます。天満屋ですね。昼休みに行くには、ちょっと遠いですが、、、。覗いてみましょうね。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年10月15日 (水) 08時29分
いつも記事を拝見していると、ほんとうにおっしゃっていることがわかります。わかりすぎるほど良く分かります。しかし大多数の人がその現実に妥協し、迎合して生きています。私もその一人です。
かかりつけ医で、どう思ってもあまり必要のなさそうなお薬をもらい続け、定期的な検査を受け続けています。なぜならその病院が好きで、経営の一助になればと思っているからです。こんなことでしかお国の「医療費削減政策」に対抗・反対できないとは、大変なさけない次第ですが!! 力のないものにはどうしょうもありません。
投稿: しの | 2008年10月16日 (木) 13時24分
しのさま
いつもありがとうございます。素敵なブログ、また見させていただきました。大根島、一度行って見たいとおもいながら、果たせずにいます。いつかお会いできるといいですね。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年10月17日 (金) 08時45分