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高齢の方の産婦人科医療(1)まずその心構えから。

 ある会で、私と同世代の女性が集まって話していると、そばにいた男性が、「ここにおるものは、みんな産婦人科なんか、縁のないものばっかりじゃないか。」といわれました。私は、「そんなことはありませんよ。いろいろとありますよ。子宮がん健診や、更年期の治療や。」と反論したのですが、内心がっかりしました。産婦人科がどんな目で見られているかが、そのコトバでよく分かりました。同時に、年齢の嵩んだ女性をからかうようなその口調がとても不愉快でした。

 産婦人科は、赤ちゃんからお年寄りまで、女性であれば、どなたが来てもいいところです。私のクリニックの月報を見ると、いちばん多いのは、やはり20代。ついで30代、40代、50代。そして10代、60代、70代、80代となります。

 今回は、高年齢の方の受診についてお話ししようと思います。70代、80代の方は、大体月に20人から30人がこられます。

 やはり先ほどの男性のような目を感じていらっしゃるのでしょうか。多くのお年の方が、「私のようなものが来てすみません。」とか、「場違いなところに来たようで」などとおっしゃるのです。私は「そんなことはありませんよ。どうぞ、どうぞ。よくいらっしてくださいました。」と言います。

 中には子宮がんや卵巣がんのような重篤な病気にかかってこられる方もあります。が、もちろんそんな方は少なくて、訴えは様々です。

 高齢の方の病気の話しの前に、心構えをお話しします。

 私は、お年の方に、まるで幼児に話しかけるような対応をするのが大っ嫌いです。私の父が病院にかかったときにそこのナースが、「おじいちゃん、ここに上がろうね。」と言われました。わたしはとても不愉快でした。そのときの父は、決してぼけてもおらず、かくしゃくとした者でした。「〇〇さん、ここに上がってくださいね。」と敬意を持って対応すべきだと思うのです。年齢が上の方には、絶対、敬語を使うべきなのです。どうして年を重ねると、幼児と同じだと思われるのでしょうか。ため口で話すことが許されるのは、家族だけだと思います。

 それから、やはり父のことです。骨粗しょう症があって、だんだん父の背中も丸くなって来ました。そして、腰を痛がりました。かかりつけのドクターが、ある総合病院に紹介してくださったのです。そしたら、そこのドクターは、父に年を聞かれたと。父が年を言うと、笑われたそうです。そして、「もう、年なんだから。しかたがない。これはなおりゃあせんよ。」と言われたと。父は、その晩、私に「わしは、あの医者は立派な人だとは思わん。あそこには行きとうないんじゃが。行かんといけんかのう。」といいました。父のつらそうな姿に、私は、「行かなくていい」と即座に言いました。

 年をとっていても、多少認知症があったとしても、人に馬鹿にされたら、それは胸にこたえます。その人なりに生きてきた歴史やその中で培われたプライドもあります。それらを医療者はちゃんと心して置かないといけません。

 もうひとつ、付き添いがついてこられた場合でも、話しかけるのは、あくまでもご本人に、です。本人を横において、付き添ってきた人とばかり話しをしてはいけないと思います。お薬の話しでも、ご本人に話すのを付き添いの人には、横で聞いてもらっています。お薬を渡すのも、ご本人に。それが原則です。

 若い人の産婦人科の受診については、散々言われてきました。更年期の医療についても、ずいぶん語られるようになりました。今回、私は、あまり語られていない、更年期以後の方、高齢の方の産婦人科医療について、シリーズでお話ししたいと思っています。今日はそのための前置きでした。


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コメント

はじめまして。
お世話になっている「ひまちゃん」の連れです。
今度、安芸高田市でも講演をして下さるそうで、楽しみにしております。
文中の高齢者への接し方は、障害者の場合でも同じことが言えると思います。
側に家族や支援員がおられたにしても、重軽度によらず、障害者本人に話しかけていただきたい。
そして、言語が不自由な人のお話も、ゆっくり耳を傾けて下さるゆとりある診療を望んでいます。
医師の「ゆとり」を育てるための政策も、行政には考え、実行して欲しいと思っています。

投稿: トラ吉 | 2008年10月29日 (水) 20時38分

久しぶりにコメントをさせていただきます。
今日の記事を読ませて頂き・・・フト思ったことがあります。
30年前に、長男を出産した折、産後のトラブルで 暫し、産婦人科へ通ったことがあります。
その折、何となく居心地の悪い思いがありました。
最近も、孫の誕生と共に産科へお見舞いとしてお邪魔していますが・・・やはり、何となく患者としては・・・いかないところだと。
この感覚の原因は・・・何なのでしょうね。

投稿: さくらこ | 2008年10月30日 (木) 11時51分

トラ吉さま

コメント、ありがとうございます。感動して読ませて戴きました。そう、ですね。私のところにも、脳性まひの方が何人もこられます。耳の不自由な方も、知的障害のかたも。それからコトバが全く通じない外国の方も。どなたにも、私の原則は守らせていただいています。一生懸命お話しなさるのを無視してはいけないし、分かる範囲で分かっていただきたいと思います。付き添いの方には、その補助をしていただければ、と思います。安芸高田には、12月4日。午後7時から、向原若者センターでお話しさせていただきます。お会いできればうれしいです。コメント、本当にありがとうございました。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2008年10月30日 (木) 20時15分

さくらこさま
そうでしょうね。来にくい所なのですね。でも、これからいろいろなことを書きますので、どうぞ、読んでみてくださいませ。自分の生活が楽になるためにも、活用していただければうれしいです。コメントありがとうございました。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2008年10月30日 (木) 20時19分

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