性教協児童養護施設サークルと障害児サークルの本
『子どもたちと育みあうセクシュアリティ〇児童養護施設での性と生の実践〇』”人間と性”教育研究協議会児童養護施設サークル編 クリエイツかもがわ出版
二日にわたってご紹介した、秋季セミナーを開催する性教協全国児童養護施設サークルは、活動を初めて23年になります。その20周年にこの本は出版されました。それまでは1988年に『児童養護性教育ハンドブック』を出版し、それから17年が過ぎました。この間も地道に年二回のセミナーを開催し、それぞれの現場で実践と研究を継続してきた結果が、この本に凝縮された内容になっています。
この本は、単に児童養護施設に関係する人たちだけでなく、「学校・保健・福祉・医療など、すべての性教育関係者に」となっています。目次は
第一章◎児童養護施設の性教育実践のポイント
第二章◎年齢に応じた性教育と支援
第三章◎テーマ別性教育の実践と対応
第四章◎助産師みゆきのワンポイントコラム(科学編)
第五章◎Q&A こんな時、あなたならどう答える
Ⅰ子どもたちの「どきっ」とする発言 Ⅱ慎重な検討を必要とする対応
第六章◎児童養護施設における性教育実践の課題
となっています。実は、私はこれは施設だけでなく、家庭の中でもぜひ読んでほしいと思いました。
中の一部を抜粋します。
「 夕食後の団らんです。低学年の子どもたちがコタツに入ってきて、めずらしく自分の家庭の構成を語っています。「おれんち、お母さんがいなくなって、お父さんと二人だけだよ」「わたしのところは、お父さんもお母さんもいない。おじいちゃんとおばあちゃんがいるの」「ぼくのところは、お兄ちゃんのお父さんとお姉ちゃんのお父さんが違うんだ。ぼくはお父さんは、お姉ちゃんと同じだよ」「ぼくは一人ぼっちだよ」と。家族の形だけでなく、結婚の形や男女の関係、個人の生き方が多様化しています。ー中略ー
社会のあり方の変化と個人の選択が重なり合って、現実に「多様な家族」が増えて来ました。その中で、子ども虐待など家族内問題も注目されています。でも、こうした家族内問題は、多様な家族のあり方そのものが直接的な原因ではありません。ー中略ー
私たちだって、ライフサイクルの中で、そのつど多様な「家族」の構成員となるわけです。どのような場合でも、血縁の有無に関係なく暴力や抑圧がない対等・平等な関係が求められます。幸せに生きる権利は同じですが、そにかたちは、いろいろです。」
「施設内で子ども同士の性暴力場面を発見した時
ー当事者の視点を大切にした「危機対応マニュアル」
1.びっくりしてあわててしかってしまう前に
子どもたちが三々五々遊んでいる休日の午後、押入れの中からも声が聞こえる。かくれんぼでもしているのかなと思い、何げなく戸を開けると、下半身は裸のまま、小学校六年生の男の子と小学校四年生の女の子が抱き合っていた。一体何が起こったのか。頭は真っ白。もう一度戸を閉めて、再び開けたら、お願いだから消えていてほしい。
残念ですが、どこの施設にも起こりうる情景です。幼児同士も報告されています。大人の性交を見ての行為です。性的虐待の被害者の可能性もあります。男の子同士ということもあります。男の子同士ですと、どうしても軽く見がちですが、被害を受けた子どもは、深く傷付いています。
ここでは、このような場面を発見した時に、どのような対応をするのが望ましいのでしょうか。児童養護施設サークルのワークショップで作成した、必ず職員が抑えなければならないポイントを重視したマニュアルを紹介します。」
ここでは詳しくは述べませんが、第一段階、発見時、第二段階、臨時の緊急職員会議、第三段階、第四段階と続きます。私が感動したのは、「被害者も加害者も両方救うための必要なケアを考える」という視点が貫かれていることです。
やはり実践と研究の積み重ねがこの本には満載です。
もう一冊、『障害児(者)のセクシャアリティを育む』”人間と性”教育研究協議会・障害児サークル編(大月書店)も紹介したいのです。障害児サークルの方たちはやはりこれまで永年、セミナーや例会を積み重ね、かつ障害児への性教育の実践をしてこられました。その集大成と言ってもいいでしょう。「障害児が示す性的な行動を問題行動として否定的にとらえる見方は依然として根強く、障害児は幼いころから性について抑圧的なメッセージを受け続けています。私たちは、障害を持っている子どもたちが、ヒューマンで豊かなセクシュアリティを育みつつ育てられることを願ってこの本を書きました。」「人間の育ちを性の視点からとらえ返し、障害児の養育にかかわる人たちが方の力をぬいて子どもに向きあえるように」と。この本にも様々な実践が満載です。 私はこの二冊の本に心打たれながら、多くのことを学ばせてもらっています。
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コメント
河野先生初めまして
ブログ読ませてもらっています。
私は19歳の短大生です。
前々から雑誌などで先生の悩み相談などを見ていました。
先生はどんなことでも親身になってくれて、包み隠さずハッキリと答えてくれる所が好きです。
私自身もとても助けられました。
今の大人は子どもが知りたがってる本当のことをあやふやな形で教えているような気がします。
河野先生みたいな大人が周りにもっとたくさん居てくれたらいいのになって思います。
私もあと1年で20歳ですが、またまだ子どもな感覚から抜け出せそうにありません。
これってダメなことですかね…?
河野先生、これからもたくさん大切なことを伝え続けていってくださいね。
先生のおかげで何人もの方が救われていると思います。
お体に気をつけてくださいね。
応援しています(*^_^*)
投稿: チョコ | 2008年10月23日 (木) 20時59分
チョコさま
コメントありがとうございます。若い人からのこのようなコメントはとてもうれしくて、励まされます。これからもこのブログでいろいろと情報を発信します。覗いてくださいね。こども感覚結構。無理して大人になろうとしなくてもいいのですよ。自然体でね。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2008年10月23日 (木) 23時32分