高齢の方の産婦人科医療(3)血尿、膀胱炎にもホルモンが有効です。
月経があるころは、卵巣から卵胞ホルモンが出ています。これがいわゆる「女性ホルモン」というものです。この女性ホルモンは、子宮や膣や外性器や膀胱、口、目などの粘膜、濡れている部分を守ってくれます。
閉経から長く経つと、その女性ホルモンが守ってくれなくなったところ、膣や膀胱などの粘膜が薄くなって出血しやすくなります。口の場合は、喉がいがいがして、えへん、えへんと言わなくてはならなかったりします。目が乾いて涙の成分の目薬が離せなくなることもあります。
定期健診で尿に鮮血が出ていると指摘される人が多くなります。閉経後には膀胱の粘膜が薄くなるので、尿に血液が出るのは、いわば当然なのです。心配は要りません。ただし、あまりに多量であるとか、肉眼的に血尿であるとかであれば、検査をちゃんと受けなければなりません。
もうひとつ、膀胱炎にかかりやすくなります。膀胱の粘膜の抵抗力の問題でしょう。尿が近くなって、トイレに行ってもあまり出ない。出ても少量で、きゅっと痛みが起こる、排尿の後、まだ残った感じがする、時には、血液が混ざることもあります。そして、抗菌剤で治療をしても、何回でも繰り返したりします。
何回も繰り返す人は、膀胱に腫瘍が出来ていないか、一度は検査を受けたほうがいいでしょう。それで異常がないとなれば、これはホルモンのためと考えます。この場合も、ホルモンを補うことで、膀胱炎を繰り返すことはなくなります。
ホルモン補充療法は、更年期医療と思われているかも知れません。でも、私のところでは、むしろそれ以降の方にこの治療をすることが多いのです。とても切実な訴えでいらっしゃる方に、何とか楽になってもらう方法は、ということで行っています。
私のクリニックでホルモン補充療法をしている方の最高年齢の方は87才です。それまで、膀胱や性器が気持ち悪くて仕方がなかったのが、とても楽になったと、喜んでいらっしゃいます。そして、元気にあるサークル活動を楽しんでいらっしゃいます。
日本では、なぜか「ホルモンは癌になるよ」と言われて、敬遠されるようです。では、いつもホルモンを出している若い人は、みんな癌になるの?といいたくなります。決して若さを保ちたくて、この治療をしているのではなく、つらいから、その治療をしているのですね。
高齢の方も、気持ちよく生活して行った方がいいに決まっています。つらければ、どうぞ、産婦人科で相談なさってくださいね。
この治療については、理解のない他の科のドクターもいらっしゃいます。ある精神科の先生が、「自然に枯れていけばいいじゃないですか。」といわれたことがあります。その一方で、沢山の精神科のお薬を処方していらっしゃったりします。
ああ、まだまだだなあ、と思います。
次回は、子宮や膣が下がる、子宮脱や膀胱脱についてお話しします。
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