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北山郁子先生の本「不敗の農民運動家矢後嘉蔵」

 愛知県渥美半島に北山郁子先生という、産婦人科のドクターがいらっしゃる。私の大先輩で、かつ大好きな先生だ。先生は、地域に根ざした医療を行うかたわら、私たちと立場を同じくする性教育にも取り組んでこられ、そして今の教育界の現状を憂いてもいらっしゃる。

 先生は、渥美半島の火力発電所の建設をめぐって住民運動を戦ってこられた。その住民運動の中で、反火力運動全国連絡会をも作り上げている。

 その北山先生から、お手紙と、そして分厚い本が届いた。わあ、先生も性教育か地域医療の本を出されたのだと喜んで開けたら、ぜんぜん違う。

「不敗の農民運動家矢後嘉蔵ー生涯と事績」という、箱入りの、表紙は布の装丁の、全510ページのものすごく立派な本だ。

F1000052  お手紙によると、矢後嘉蔵さんは、先生のお父様であり、先生がこれを20年かけて書き上げられたそんな本であった。もっとも、お一人の力ではなく、お父様の話を聞き書きしていた方が急死なさって、その後を受けたものでもある。また、農民運動に詳しい方の解題も掲載されている。

 一つは、経済史の岩本由輝東北大学院大学教授による「大正・昭和農民運動史ともいえるほどの「矢後嘉蔵の土着の思想と永小作権」。もう一つは、仲井富元社会党本農民部青年部長による「農民運動家矢後嘉蔵の戦前・戦後」と言うもの。

 矢後さんは、富山で活躍された農民運動家である。戦前は、左翼として逮捕されたり、逃げ回ったり、また逮捕された人の差し入れや支援などを、また戦後は、合法的に農民運動として裁判を中心に戦ってこられた。裁判は、次々と勝利し、だから、「不敗の運動家」なのだ。社会党の党員として、市会議員や衆議院議員をもつとめているが、あくまでも農民運動の姿勢は崩していない。

 日本農民組合富山大会のスローガンを見ると、「闘争と並んで建設を」「農民に食料の分配と価格の決定権を」など、今の「事故米」の事件と対比すると、すごく重い。また、「全国公害研究集会」や、「原子力潜水艦寄港阻止大会」など、生き生きとした写真も掲載されている。

 幼い頃の家庭の様子なども先生の筆で書かれている。お父様だけでなく、お母様も、家宅捜索に来た警察官に、「人のうちに土足で上がるとは何ごとですか!と毅然と言い放つ、でも天真爛漫な、楽しい方だったようだ。

 そうだったのか。北山先生の、あのあくまでもやさしく、でも毅然とした行動は、このようなご両親の元ではぐくまれたものであったのだ。よくわかった。

 このような、地道に運動をしてきた人が日本にも沢山いる。その方たちの力で、目に見えなくともどれだけの人々が救われてきたことだろう。また、今日の日本を作るためにも、どれだけの功績があったことだろうか、と思う。

 また、こんなすごい本を上梓されて、私はますます北山先生を尊敬し、好きになった。少々毛色の違う分野だが、もっとじっくり、ゆっくり読んで私の血肉にしたいと思う。

 

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コメント

「農民に食料の分配と価格の決定権を」←ここにとても共感しました。
先月あった北広島のオフ会で、僭越にも農家の方々を前に、同じ趣旨の話をしました。
今の農家に足りないもの、それは「決定権」です。
品質も価格もすべて流通側に握られています。
生産者が自ら品質と価格を決められない現実。ここに農家の弱点があるように思えます。
酔った勢いで、「この作物だけは、都会のものには売ってやらないぞ」そんな作物をひとつ作るべきだと主張しましたが、真意は伝わりませんでした。。。
農協やスーパーなどの川下に決定権を握られている現状を変えないと、農家の自立は果たせないと思っています。
矢後嘉蔵という農民運動家の慧眼に敬服です。

投稿: shiozy | 2008年9月18日 (木) 22時12分

shiozyさま
ありがとうございます。私、本当にこれまでの農業政策が破綻してほしいと思っているのです。国の策はろくな物ではありません。減反や、野菜の過剰生産による破棄など、農家の方たちの苦労を踏み潰すのもだと思います。その一方度の事故米の扱い。ひどいものです。私も生産者が決定権を持つべきだと思っています。だから、それを読んだとき、本当にどきっとしてひざを打ちました。同時に世の中には読むべき本が沢山あるのですね。時間が足りません。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年9月21日 (日) 01時34分

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