あまりにひどい患者さんで。疲れました。
今日は、診療でひどくくたびれました。とても聞き分けのない患者さんとのやり取りで、どっと疲れてしまいました。それは、緊急避妊のくすりを求めてきた人です。でも、緊急避妊の有効な期間、72時間を過ぎています。過ぎていては、効果がなく、無駄ですし、もし妊娠していたら、胎児によくありません。でも、それでもだせと言い張ります。出してはならない薬は出せません。
ずいぶんといろいろと言われました。「私は、命を粗末に考えるような人間ではないのです。」これ、私ではなく、彼女が言った言葉です。命を粗末にしないのであれば、妊娠したら、その赤ちゃんを産めばいいのです。しかも、彼女は、この薬を求めてくるのは二度目です。一度目の時に、一回きりだから。これからは、必ずピルを飲んで防衛するように、とよくよく言っていたし、それをカルテにも書いていたのです。でも、彼女は来ませんでした。忙しくてこれなかったと。そして、あまりにひどいことを次々と、面と向かっていわれたので、もう、本当に疲れました。「あなたには、責任があります。責任を果たしてください。私が受診に来ているのだから。私に責任を果たす義務があります。」
医師という仕事は、どんな人にも向き合わなければなりません。呆然とするようなことを言う人にも向き会わなければなりません。
緊急避妊があるから、と気楽に考えられては困るのです。後で避妊すればいいや、と。これは、大量のホルモンをどーんと飲みますので、体にさまざまな影響を与えます。それでも、最近もありました。複数の人に輪姦されたというような悲惨なときには、たとえ体によくなくても、妊娠、人工中絶という二重三重のダメージをうけるよりは、という、それで出すお薬です。
私は、意地悪をしようと思って断ったのではありません。もう、有効な時間が過ぎていたからなのです。大変な剣幕で、それでも、どこかほかの病院を紹介せよ、といわれるので、紹介しました。ひどい捨て台詞で帰っていきました。きっと、そちらの病院で、はじめから、日を偽って薬を出してもらうでしょう。「どうして私をたらいまわしにするんですか。」「一時間の違いがどれほど大切なのか、あなたはわかっているのですか。」これも、みーんな彼女が私に言ったことです。有効時間を過ぎて来たことは、頭にはないのでしょう。でも、これには、私は反論もしないで、じっと聞いていました。言えば言うほど、ますますひどいことを言われるのが落ちです。
こんな人は、自分が悪かったとは、思わないものです。とにかく、人のせいにして、人を攻撃する。そして、これからは、きっと、私の悪口をあちこちで言いふらすでしょう。
それでも、私は、無駄で有害な薬を出したくなかった、仕方がないことです。本当に疲れました。私の愚痴を書いてすみません。診察室でのことはあまり書いてはならないのかも知れません。でも、最大、彼女の個人情報については、触れないように考慮したつもりです。私だって落ち込むことがあるのだから。これくらいの愚痴はゆるしてください。

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コメント
初めまして、こんばんは。
トラブルメーカーに出会いましたね。
そういう人とは関わりたくないものです。
傷ついた気持ちはなかなか取り去ることが
できないしょうが、
できるだけはやく忘れることが肝心ですよね。
わたしは言葉の攻撃を受けた身ではないので、
こんなことを書くと腹立たしく
思うかもしれませんが
彼女自身、とても混乱してたんだと察します。
それに精神的にまだ未熟なのでしょう。
彼女もおんなじ目にあえば、
人の気持ちが分かるようになって、
あの時、悪いことを言ったなって反省すると
思いますよ。
余計なことを書いて不快にさせてたら
ごめんなさい。
投稿: rosemaria | 2008年4月18日 (金) 20時50分
コメント失礼いたします。
クレーマー対応お疲れ様でした。緊急避妊薬を出されなかったのはクレーマー対応の面から見ても正解ではないでしょうか。
もし、ダメと知りつつ処方したら、「効かなかった、どうしてくれる。金を返せ、損害賠償をせよ。」などと言い出しかねないでしょうから。
投稿: めかちゅーん | 2008年4月18日 (金) 21時47分
先生、ほんとうにおつらかったですね。
先生が日々どんなに命を大切になさっているのか
私達は知っています。
その先生が、ぎりぎりの現場で
どうしてこのような言葉を浴びなければいけないのかと思うと、
胃袋がぎりぎりと痛みます。
ましてや、
前回も同じようにお薬を求められていたとか。
忙しかったというのは、
何の言い訳にもならないと思います。
本当に命を粗末にしないような人のであれば、
自分の言葉の矛盾にすぐに気づくことでしょう。
今回も、そしてきっと前の時も
いまもいっぱいいっぱいで
誰も自分のことを信じてくれる人がいなくて、
ぎりぎりのところで自分を正当化したかったのではないかと、
本当に心が痛みました。
この人は、きっとひとりぼっちなんだろうな・・・。
妊娠という事実の反対側には、絶対に男性がいるはずなのに。
そのパートナーが半分を背負ってくれれば、
彼女だって、もっと落ち着いて考えられるだろうに。
避妊薬を飲むのも、中絶手術をするのも
いつも女性ばかり。
男性の側が変わらないのなら、
自己と、そして未来の防衛のために、
女性はもっと毅然とNO!を言わなければならないですね。
投稿: Hoch | 2008年4月18日 (金) 21時51分
立場は違いますが、私も似た経験があります。辛いですよね。しばらく落ち込んだ気持ちから抜け出せなくてしんどいですよね。少しでも早く先生の気持ちが晴れますように☆
投稿: ハムハムさくら | 2008年4月18日 (金) 23時34分
昨今のモンスターペアレンツと呼ばれるクレーマーのことを思い浮かべました。
誰もが自己中心的な考えを持って、相手に押し付けてくる時代です。
強く言ったものが勝つのだけは やっぱり嫌ですね。
もちろん相手の立場を考えることは必要ですが、ダメなものはダメ!
断固としたこの姿勢を貫き通してくださいね。
投稿: チェリー | 2008年4月19日 (土) 00時26分
こういう人が増えている時代だと思います。受診してこられたというのでは、避けることのできないことですし。
「責任」とか「義務」の言葉を出して、攻め口調できて、自分のことを忘れている。こういう人、本当に増えていると感じていました。それが、医療現場で、しかも処方を強要?するような形まで使うような時代というか、そういう方なのですね。
医師として、また診療の現場で忘れるなんてこともできないでしょうし、また今後も同じ人が来ても拒否もできないですし、・・・ここで愚痴って、愚痴ってせめてもの発散場所にしてくださいね。
投稿: しゅんぼうママ | 2008年4月19日 (土) 07時37分
聞き分けのない患者さんへの対応、本当にお疲れさまです。
緊急避妊薬の有効性、確実に処方しても75%くらいだったと記憶しているのですが、それに加え時間を過ぎて来て、それでも「薬さえ飲めればなんとかなるだろう」と思っているのでしょうか。
避妊に対するきちんとした知識も、万が一の時の対応や覚悟もないのに、安易に欲望で動いてしまう…そう考えるとなんだか情けないです。
投稿: みやび | 2008年4月19日 (土) 12時41分
初めまして、河野先生の事は小学時代から性教育で存じております。書き込みの内容の主旨とは外れてしまうのですが、先週とある産婦人科でとても不愉快な思いをしたので書き込みさせて下さい。
私は、3月の初めに妊娠の兆候があり実家から近い病院を掛かり付けにしようと受診しました。
でも、残念な事に妊娠7週目で初期流産をしてしまいました・・・それから1週間後から陰部と乳首の痒みがあり、その病院には旦那さんが休みの時しか車がないので公共の乗り物で行くにも不便な場所にあったし、次回の受診まで不安だったので、家から近い病院に急きょ行きました。
そして、症状は無いものの一応カンジタの塗り薬と乳首の塗り薬を頂きました。
それでも陰部の症状はひどくなるばかり・・・
で、いつもの病院の検診の時にその事を伝え、また別の陰部、乳首共に違う薬が出ました。
それでも症状は改善せず、陰部に猛烈な痒みがあり夜も眠れず、なおかつ薬を塗ると余計に痒みが走りました。
そして、また診察に行きました。
「今回はまた違う薬を出すから、乳首の薬(ステロイド剤)と併用して使って」
と言われ受付で出された薬が、急きょ行った病院から出たカンジタの薬で全く同じ物だったので、
「こないだもらったばかりで家にあるし、効かなかったんですけど、先生にこれでいいのか聞いてもらえますか?」
と言ったところ、
先生が、剣幕な顔をして、
「じゃけ、この薬とお乳の薬を一緒に使えよ~ろ~が!!!!」と怒鳴られ、
私が、
「前もらった薬と同じで効かなかったので・・・」
そして先生が、
「その時は一緒に付けてないじゃろ!!」
と他の患者さんの前で大きな声ですごく怒った顔で怒鳴りちらされました。
薬で分からない事や不安な事があるから聞いたのに
こんな言い方される意味が分からず、呆然としました。
そして、症状は変わらず、、、
これからまた新たに出産も関わるし、家から通うのに
不便でないかかり付けの病院を探すのにこんな事があったのでとても不安や不信感が募り躊躇しましたが、
痒みがひどいので、2日後に新しい病院へ行きました。確かに内診でも問診でも異常が分らないと言われ
ヒスタミン剤を内服で処方されました、服用してからその日から痒み、かきむしった事の腫れが今はすっかり落ち着きましたので良かったです。
怒鳴られた病院は患者さんも多く流行っていますが
私はもう2度と行きません。
書き込みが長々となりました、乱筆乱文で申し訳ありません。
河野先生が、同じ産婦人科の先生と言う事もあり
言わずにいられなかったので、読んでくださりありがとうございました。
投稿: あんず | 2008年4月19日 (土) 19時44分
忙しくても性交する時間はあったのでしょうか。
忙しくてコンドームを買う暇も着ける暇もなかったんでしょうか。
忙しくて性交すると子供が出来る事を考える時間もなかったのでしょうか。
きっと、そういう男性と付き合ってるんですね。
悲しいお話ですね。
投稿: まゆ | 2008年4月20日 (日) 12時58分
みなさま
たくさんのアドバイス、ありがとうございました。私も、産婦人科医になって36年。かなりベテランの部類に入って来ましたが、まだまだ修行が足りませんね。おおらかに、包容力を持って患者さんに接しているつもりなのですが。つい、かりかりすることもあります。これからも、また何かありましたら、この場で愚痴をこぼすかも知れません。その際は、またどうぞ、よろしくアドバイスをくださいませ。このたびは、感謝しています。まとめてのお礼ですみません。ありがとうございました。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年4月23日 (水) 00時55分
私も医師ですが、同じ様なことに最近よく
出くわします。
この国の医療はもうダメですね。
きちんと良識があり、ものが分かる人にしか
良質な医療が届かなくなる時代が来るでしょう。
まともな医師はこんな怒りを覚えるような
人間には関わりたくないと思っています。
相手にしないようにするか縁をなるべく
早めに切るようにしたほうがいいですね。
投稿: どうしようもない | 2010年8月27日 (金) 20時04分
どうしようもない様
古い記事なのですが、コメントいただいてありがとうございました。その後も、まだまだ疲れる患者さんが続いています。医師というのは、どうも、あまりいい仕事ではありませんね。疲れきったら、やめること、今はそう考えています。くぢを聞いてくださってありがとうございました。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2010年8月28日 (土) 20時07分