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後期高齢者医療について、そろそろ終わりでしょうか。

 診療が終わって、みんな帰った後の診察室、に一人残っています。とても緊張しています。明日は、お寺の先生の前座を勤めます。私、さんざん講演はしているのに、この緊張は一体何なのか、と思うほどに。自由にのびのびと話せばいいと思うのだけれど、どうにもいけません。スライドの点検をしていますが、それだけでどきどきしています。

 私は医学を受け持ちます。先生が心を受け持たれます。私、心をはなれて医学だけで話す、なんて経験がないので。どうなることやら、です。

 私、これまで後期高齢者医療の話を書いて、たくさんのコメントを頂きました。でも、私は、常に警告しているのですが、支払いが高齢者の方たちに負担をかけているという、それは、ほんの小さいことなのです。年金から天引きされる、だの、まだ保険証が届かないなどということに目を奪われていると、これは政治家の思うつぼなのです。

 それよりも、一体、国が何を目指しているのか、ということをちゃんと見極めなければ。厚労大臣が「いいことがいっぱいある。いい制度です。」というのを聞いて、何がいいのか、さっぱりわかりません。

 一ヶ月に600円を払えば、どれだけ病院にいっても、それ以上の負担はありませんなんて。月6000円で一人のお年寄りを診なさい、といわれても。たとえば、私は調べました。それでは、胃透視もできません。バリウムを飲んで胃のレントゲンを撮るのが、四つ切5枚しか撮らなくても、6970円です。6000円をはみ出してしまいます。これに再診料などを加えると、もっとはみ出します。医師は、はみ出しても赤字になっても、医療をするでしょうか。

 おっぱいにしこりができた、乳がんかも、と思っても、マンモグラフィー、上から一枚、横から一枚、おっぱいは二つありますので計最低4枚写真を撮らないといけません。これに再診料を入れると、もう6000円をはみ出してしまいます。悪性が疑われても、組織診すらできません。医療の質の低下を招くというのは、こういうことなのです。これを、厚労省は目指しているのです。

 その、ひとり月6000円の医療を行うために、かかりつけ医として、何人の患者さんを集められるか、という競争が起こると、医療関係のサイトには出ています。

 それに、もう言いましたが、お年寄りのための療養病棟としてのベットが、現在36万。これをもう厚労省は指定をして、15万までへらせよ、という指示をしています。お年寄りの入院ベットを強制的に削除して、だから、家庭での療養をさせるという魂胆です。人生の最後を過ごされる人を、家庭で手厚く介護してあげられればそれが理想でしょう。でも、そのためには、大変な手とお金がいります。政治家のような一部のお金持ちはそれも可能でしょう。

 若い人から、この後期高齢者医療制度について、若いものに付けを回すのでなく、お年寄りもお金を払うのは当然だという意見が寄せられています。とんでもない。この制度は、若い人たちにも負担を強いる制度なのですよ。国が払うべきお金を削るために、お年寄りと若い人たちに負担をさせる方法が決められている、それがこの制度なのですよ。

 先日、障がいを持ったお子さんを育てている方がこられて、嘆かれました。「障害者自立支援法」、これも、障がいを持った人に作業所に通うことすら負担金を求める、その負担金が払えなくて、作業所に通うのをあきらめた、という人もいます。そんな悪法を撤回させるべく、頑張って署名活動もなさっているのですが、いま、この悪法のことが忘れ去られようとしている、と。どんどん遠いところに追いやられようとしている、と。

 どんどんと弱いものいじめをする今の国のあり方そのものを、しっかり見つめなければいけないと、そう私は言いたいのです。

 お金はどうすればいいのか。だから、国のあり方そのものを変えていくべきだと思うのです。飛行機一機買うのを減らせば、大きな艦船一つ買うのを減らせば、また、イラクでの自衛隊の活動のためのお金、在日米軍への思いやり予算、たくさんの天下りの法人への予算の垂れ流し、いっぱい減らせるところはあると、そう思うのです。予算の使い方、その優先順位のつけ方、そこから発想をかえなければ、と思うのです。国民の命と健康を守るために、何が大切なのか、と、そこから思いなおさなければ。

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コメント

こんばんは。
この制度については本当に心が痛みます。若いころは戦争で苦労された年代の方々に、安心して老後を過ごさせてあげたいものです。弱者を切り捨てようとするこの国は、いったいどうなるんでしょう。子ども達が大きくなっても、憲法9条が守られている平和な国であってほしいものです、って、ちょっと話しがずれちゃいましたね。
明日は、Kちゃんが誘ってくれたので、私も講演に行かせていただきます。楽しみにしています。

投稿: じんじん | 2008年4月20日 (日) 00時50分

そうですねぇ。私も一つ一つの事に目を奪われていても何の解決にもならないと思うのです。それと、この2年間、野党はどうしていたかにも目を向けるべきです。あらゆる所で国としての先行きが崩壊している。その結果、医療の崩壊に至ったわけですから小手先の政策、反対運動ではどうにもならなくなっているなあと思うのです。今回の名古屋高裁の判決に対しても政府は知らん振りを決め込んで堂々と「今までどうり」と、記者会見をするのですから司法判断も踏みにじる位の強気で国民に負担を強いるのは目に見えています。イデオロギーを超えた政党(?)の出現しかないかな?いや今の政党では私利私欲しか目に入らないからむりかな?と、他力本願な場合じゃないですね。本当に。

投稿: 初ちゃん | 2008年4月20日 (日) 09時31分

はじめまして。
一つ違う内容が書かれてありましたので・・・。
600点の中に再診料、投薬料、在宅、処置等は含まれません。
なので、患者さんの負担は、包括の部分と出来高の部分があり、月600円だけで済みますよ!という話ではないんです。
知れば知るほど、不思議な制度です。

投稿: | 2008年4月20日 (日) 10時27分

本当にすごい制度ですね。新聞等で安くなる人等、値段表だけ乗せてたりするけど。マスコミ、コメンテーター(中には、いい制度ですよと言ったり、誰だったかな??女の人)
団塊の世代の為ですね!!!

きっちり、見てないと大変です!(見ても、解りにくいのが多いです)

投稿: 美奈 | 2008年4月20日 (日) 11時20分

 75歳とか行ってるけど、アッシのようにもう65歳
になりもう直ぐそこのこと、先行き心配ばかり。
先生の話聞いてたら、老後が不安材料ばかりで
どうなるんでしょうね。@それにしてもレース綺麗
忙しいのにすごいですね。気分転換にはいいかも
気をつけられて・・・又

投稿: yoshijii | 2008年4月21日 (月) 12時22分

こんにちは。
こちらでは「初めまして」ですが、私の心の中では河野先生はいつも身近な尊敬できる女性として存在しています。
今回の医療制度には本当にあきれるばかりです。
これほどひどい制度を国民に強いるために、かけられた費用は一体おいくらなんですか?と問いたいです。
私の両親は年々知人が旅立って寂しくなっていますが、体を労わりつつも、私達にとって無二の存在として健在でいてくれています。
でも、この制度では何か異常を感じても今までのような検査はしてもらえなくなるだろうと嘆いていました。

話は少し変わりますが、近年まで医療費削減のためにも「早期発見のための検診」を呼びかけていましたが、その内容も変わりつつありますね。
たとえば、乳がん・子宮がんの検診補助は偶数年齢に限定されてしまい、早期発見の機会を逃すことになりかねません。
また、私は例年、社会保険事務所から会社への案内に従い夫婦そろって検診を受けていたのですが、今年もそのつもりで申し込んだところ、「配偶者の方は多分6月以降にご案内があると思います」とのことで申し込みできませんでした。
今年から検診を扱う管轄が変わったため、自己負担などの内容も大きく変わったものと思われます。

長寿を誇った日本の医療の根幹を大きく揺り動かす「しくみ」が、次々と広げられていきます。
そこはかとない不安ばかりが広がります。
政府は「お金」の使い道を真剣に考えてもらいたい、と切望します。


投稿: 明奈 | 2008年4月21日 (月) 16時57分

はじめまして。先生の文書の中の「政治家の思うつぼ」を読んで、そうなんだよと思いました。すみませんが、わたしの拙いブログに引用させて頂きました。
 でも、怒っている人が多いのに、なかなか政治を変えることができない日本人とはどういうのでしょう、と考えます。

投稿: meme | 2008年4月22日 (火) 05時31分

初ちゃんさま
本当に、何とかしなければ。私たちのこどもたちが熟年になるときには、すさまじい国になっていることでしょう。政界がダイナミックに再編されれば少しはましになるでしょうに。初ちゃんさまに教えていただいたように、ニュージーランドに移住したくなりますね。でも、現実の今、どうしたらいいのでしょうか。
すくなくとも、私は私の現場から、情報を紹介し続けたいとおもっています。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年4月22日 (火) 23時12分

どなたかお名前のない方さま
コメント、ありがとうございます。私の書き方がよくなかったですね。いわゆる保険点数で言ったら、それだけの点数のものを、医師がはみ出してでもするだろうか、という意味で書いたのですが。ほかの人であれば、6000円を超えるだけの収入になるのですから。でも、この包括性は、医師の側の拒否感が強そうで、実際、どこまでできるかわからない情勢ですね。また、教えてくださいませ。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年4月22日 (火) 23時30分

美奈さま
これだけわかりにくい精度で、実は、コメンテーターなる人も、ほとんど中身がわからないままに言っているのだと思います。私、ずいぶん勉強しましたし、ほかの方たちよりも、医療者としてより情報があると思うのですが、それでもわからないことがいっぱいなのです。私たちも、勉強して、だまされないようにしないといけませんね。これからも情報を発信しますので、時々は覗いてみてくださいね。コメントありがとうございます。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年4月23日 (水) 00時00分

yoshijiiさま
本当に。私もyoshijiiさまとあまり年が違わなくて、不安でいっぱいですよ。でも、そうなる前に政権を何とかしないといけませんね。どうぞ、お疲れになりませんように。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年4月23日 (水) 00時05分

明菜さま
御両親がご健在でありがたいことですね。でも、本当にご両親のご心配どおりのことになりそうです。検診も高齢の方には、義務でなくなりました。もう、お年の方は、別に早期発見でなくともかまわないということなのでしょう。それから、若い人の検診も、メタボのための特別検診なんていいますが、何、へその上を巻尺ではかるだけなのですね。ひどいものです。でも、政府に考えてもらいたいといっても、今の政府ではそれを期待できないのではないかと思います。もう、さっさと変わってもらったほうがいいのではないか、そあ思います。コメント、ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年4月23日 (水) 00時14分

memeさま
ご紹介、ありがとうございます。ブログ、見させていただきました。岩木さん、花巻の温泉と、懐かしい地名が出ています。私、花巻には、何回も講演に行かせて頂きました。結局、このような政権を選び続けている国民の責任なのですよね。これからも、時々は覗いてくださるとうれしいです。ありがとうございます。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年4月23日 (水) 00時17分

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