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特定健診、メタボの疑問

 今年4月から、医療の制度が変わった。後期高齢者医療制度があんまりひどいので、こればかりが論議されているが、しかし、もう一点。特定健診なるものがはじまる、お腹の周りを測るらしい。メタボリックシンドロームと診断されると指導があるらしい。こんな話は聞かれたことがあるかも。

 医療の現場にいる私自身、この特定健診がよくわからなかった。知りたいと、いろいろと資料を調べていたが、やっとその全容がわかった。そして、びっくりしたので。

 これまでは、お勤めをしている人は、勤め先で健康診断を受ける。そして、勤務のない方、またはパートなどで、職場での健康診断を受けることができない人たち、主に国民健康保険に入っている人、また、広島市などは、健康保険に入っている人の扶養家族に対しては、「基本健診」なるものが行われていた。

 そのこれまでの基本健診と、特定健診の何が違うのだろうか。これを比べてみてびっくりしたのだ。

 これまでの基本健診は、血液で行っていた検査が「総コレステロール、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロールというもの)、中性脂肪、GOT、GPT、γGTP(これらは肝機能) クレアチニン(腎機能)、血糖、それと血液一般(白血球、赤血球とか、ヘモグロビンや血小板など、貧血や血小板減少症や、はては白血病などがわかる)」以上だった。

 特定健診では、何を調べるのか。まず肥満チェック。お腹の周り(へその高さで)を計る。男性85センチ、女性90センチ以上で、かつ、

中性脂肪が150mg/dl以上またはHDLコレステロールが40mg/dl未満。血圧130/85mmHg以上。空腹時血糖値が110mg/dl以上。これらのうち、二つ以上が当てはまる人。この人がメタボリックシンドロームとされ、生活の改善の指導を受ける。食生活の改善、運動を習慣付けること。禁煙などの指導で、肥満を改善しなければならない。

 私は、住民に対しての説明のどれを見ても、「血液の検査があります」とだけで、その特定健診の血液の検査の内容がわからなくって、それが知りたかったのだ。

 そして、わかったこと。「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉)、中性脂肪、GOT、GPT、γGTP(肝機能)、血糖(食事をしていたら、HbA1c糖尿病の検査の一つ)」これだけだった。基本健診より、腎機能、そして、何より血液一般が消えている。

 特定健診は、住民の健康診断ではなく、ただ、肥満を減らす目的のための健診であるといってもよい。血液一般がなぜないのだろう。私は、婦人科医だから、特に女性にとって、貧血の有無がとても大切だとわかっている。これまでの基本健診で、貧血を指摘されたといってくる人は多くいた。それが削られた。

 厚生労働省は、メタボ健診で住民をやせさせることで、将来的に2兆円の医療費が削減できると踏んでいるらしい。でも、これまでだって、血圧が高い、コレステロールが高い、太り過ぎという人たちには、医療の現場でも、食生活の指導などは行われていたわけだし。単に、お腹の周りを測ることで、こんなに簡単に医療費が減るものだろうか。なにやら、5年で見直しをして、それで効果が上がらなかった人には、ペナルティーを嫁すというような、恐ろしいことまで言われている。

(お腹の周りを測るのを自分でやってみた。お腹を引っ込めると、8センチは違う。何センチだったかは言わないけれど)

 まったく、もう、厚労省は、何を考えているのだろうか。今日のテレビでは、終末期の医療を望むか否かをあらかじめ個人に尋ね、その誓約書なるものを出させるということまで、暴露されていた。それも、こと細かく。点滴は望むか、人工呼吸は望むかなど。その場にならなければわからない事だっていっぱいあるし、お年寄りに、終末期だなどと尋ねることさえ、とても失礼でかわいそうなことだと、私は思う。それに、お年寄りの医療が、あたかも無駄だというような捉え方はおかしい。点滴で体がしんどいのがとても楽になってほっとするという経験は、多くの人にあるだろう。お年寄りだって、しんどいときは楽にさせてあげたい。それを年寄りの医療は、無駄な延命という捉え方はすべきでない。

 厚労省、国民の健康に責任を持つべき省であるはずなのに、一体、どうなってしまったのだろう。自公の政権が長く続くことが、こうまで国民を愚弄することになったということなのだろうか。

広島ブログ

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コメント

こんにちは。
特定健診も4月からというのにまだバタバタしています。

男女それぞれ腹囲の基準がありますが、身長の低い高いでは差がないため背の高い人にはとても不利です。

こんなことは、本来国の仕事のはずなのに、保険者にさせて、目標に到達しなければ、補助金カットのペナルティが保険者に課せられます。そうなるとやがて保険料に跳ね返るので健診は受けてもらわないといけません。

どうなるのでしょうか? 本当に効果があるのかととても疑問です。


話しは変わりますが、「ファン・ジニ」私も気になっていました。
河野先生のブログを読んで、私もタオル片手に見ることにしました。

投稿: いつも見ています | 2008年4月29日 (火) 20時07分

おなかの周りは自分で測れるけれど、
血液検査は自分では出来ません。
私は勤め人ではないので、
基本検診できちんと調べてもらえるのはとてもありがたかったのですが、残念です。


それと・・・おなかの周りを測られるのはちょっと抵抗が・・・。
妊婦時代は、わくわくしながら測ってもらっていましたけれど、
今はちょっと抵抗ありますね。
ダイエットをきっちりやって
ウェストをしぼってから検診に行かないと、
心に傷が残りそうで(笑)。

投稿: Hoch | 2008年4月30日 (水) 14時39分

ウエストが身長の半分以上という基準を当てはめたらかなり正確にメタボを検出できるという話は聞いています。

ただ、筋肉質でウエストが太い人と脂肪で太い人は違いますし。

基準はかなり疑問符ですよね。

ちなみにノルウェー人の友人に日本人は85センチだと病人扱いだと言ったらたまげてました。

投稿: さとうしゅういち | 2008年4月30日 (水) 22時28分

いつも見ていますさま
いつもありがとうございます。やっぱりペナルティーですか。具体的に目標はどうなのでしょうか。そして、どんなペナルティーなのでしょうか。なんとも、恐ろしい、不気味なもの感じるのですが。欧米人に比べて、日本人は、肥満率は10分の1暗いだとおもうのですが。本当にやせる指導をしたら、みんなやせるという、効果があるものなのか。そして、医療費が二兆円もへらすことができるのか、どうも信じられません。また、そのうち教えてくださいませ。
 ファン・ジニ、すっごーいドラマです。どうぞ、見てくださいね。 河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年5月 2日 (金) 00時04分

Hochさま
もう、基本健診でなく、特定健診なので、これで健康診断ができたと思うのは、間違いですね。健診代わりにうちに来てください。それくらいの検査はしますよ。お腹の周りを測られるのは、なんか抵抗がありますよね。私、昨年のドックで計られました。そのときは、臨時のダイエットをして臨んだので、セーフでしたが。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年5月 2日 (金) 00時08分

さとうしゅういちさま
おっしゃるように、筋肉質か、身長はどうなのか、などでずいぶん異なると思うのですが、何らかの根拠があることなのでしょうね。南下、諸悪の根源は肥満にあり、と決め付けられているようで、気持ちが悪いです。また、教えてくださいね。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年5月 2日 (金) 00時13分

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