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医療崩壊(2)大学の医局に医師がいなくなった

 大学の医局に新人のドクターが入局しなくなった。

 2004年より、厚生労働省は、大学を卒業し医師免許を取った者に二年間の研修を義務づけた。それまでにももちろん研修医というのはあったが、ある科に入局して、そこで研修を行っていた。しかし、今回の新しい制度では、大きい研修病院でいろいろな科を回って、研修をすることとなった。大学病院でローテーションをしながら研修をする者は大変少なくなった。東京などの都会の大病院が人気で、そこで研修をしようと望むなら、試験を受けなければならないほど新しいドクターが殺到する。

 二年の研修を終えても、あらためてどこかの大学に入局するよりも、そのまま大手の病院に残るなり、そこが無理なら、また試験を受けて、どこか別の病院で働かせてもらう。それら、大病院で勤務医を続けたいと望む者が多くなった。

 大学は、当然人手不足になる。大学では、文科省の方針もあり、基礎の研究が重視される。新人はほとんどが大学院生となり、研究をして博士号を取る。同時に臨床もしなければならない。当然、勤務は過酷となる。

 さらに、大学の使命として、これまで、地方の大手の病院に医局から医師を派遣するという大きな役目があった。いわゆる、大学の教授が人事権を握る、白い巨塔とも揶揄されて来たものである。その人事権が働かなくなった。入局者が少なく、派遣出来るだけの医師がいなくなったから。

 広島大学の産科婦人科学教室でも、今医局にいる医師は教授まで入れて、15人だそうだ。私たちの時代は常時30人はいた。この少ない人数で、手術、癌の化学療法、お産などの入院患者を診、救急患者を受け入れ、外来診察をし、さらに研究もしなければならない。外の病院に医師を派遣するゆとりはない。

 これは、全国の大学で起こっている現象である。どこの県でも、産婦人科医がいなくなって、お産が出来なくなったという病院が存在する。

 広島県でも、国立大竹病院、庄原日赤病院、JA府中総合病院、JA吉田総合病院、福山市民病院、県立安芸津病院、さらに広島市の福島生協病院、マツダ病院などがすでにお産を中止しており、さらに四月からは御調総合病院、呉市の大病院、呉共済病院までもがお産を取りやめることになった。あの、呉共済病院の産科がなくなるなどと、誰が想像しただろうか。

 これにより、たとえば県北の東城町に住む人などは、お産のためには、60キロも離れた三次市まで車で通わなければならなくなった。冬の凍結の時期は、それこそ命がけで車を運転すると聞いた。県西部の人も同じ状況になった。大竹市の人は、廿日市市か、お隣の山口県に行かないと、お産が出来ない。

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コメント

私の住んでいる町でお産ができなくなって、5~6年くらいたつでしょうか。健診に隣の町や市へ通うのも、お産入院する時も、家族の負担等、大変です。

先日、知り合いに頼まれて呉共済病院でのお産中止に反対する請願書に署名をさせていただきました。
反対しても、現実的に難しいとは思うのですが、これから子どもを産もうとしている人にとって、産みにくい世の中になっていることは間違いありません。

では具体的にどうすればいいのでしょうか?
私たちにできることって何かないのかな?と思います。

投稿: チェリー | 2008年3月23日 (日) 00時46分

私は福祉業界で働いていますが、医療で働く人の現状と未来はそのまま福祉にもあてはまります。先日来救急医療の崩壊というか、お医者さんの激務の様子がよくテレビで報道されていますが、命が即関わるので私たちより壮絶に思います。アメリカ型の訴訟社会やリスクマネージメントが不幸なことに医療や福祉の現場で働くものの首を絞めています。そしてそれは直接患者や利用者へのサービス低下、特に低所得者、高齢者、障害者に著しく表れています。私も給与は低いですが、若年層の働き手は暮らしていくのでやっとです。こんなことで良いわけありません。

投稿: おとぎぞうし竹本 | 2008年3月23日 (日) 08時05分

医療制度や薬事法などの改革が必要ではないのでしょうか?
一番の問題は、厚生労働省の改革だと思います。
また、地方分権や中央集権問題とも関ってくるようにも思います。

投稿: やんじ | 2008年3月23日 (日) 15時10分

このような医療状況では、少子化が止まるわけありませんね。就学前のこどもの医療費を無料にしている自治体もありますが(これはこれでいいことです)、それ以前の出産が、まず無事にできるのかどうかが不安です。うまく言えないのですが、今の行政の対策は少子化にも医療体制維持にもピントがずれているように感じます。
私達にできる事ってなんかありますか?あるとすれば何でしょうか?

投稿: momo | 2008年3月23日 (日) 15時57分

チェリーさま
呉共済病院の産科の閉鎖は、本当にザンネンなことです。これには、いろいろとウラもあるみたい。署名活動はやはり遅すぎましたね。もっとずっと前から言われていたことで、廃止に動いてしまっていますので、今さらと思います。少子化の時代、少しでも女性達に子どもを産んでもらいたいのなら、もっと国が根本的な対策を取らないといけないのです。私たちに出来ること、一番効果的なのは、やはり政権交代、それしかないと思います。行政全体が、国民のための行政とならなければ。もう少しこのシリーズを続けますので、ぜひ読んで下さいね。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年3月23日 (日) 18時35分

おとぎぞうし竹本さま
いつも読んで下さって、コメントもありがとうこざいます。お仕事、お疲れさまです。お互い大変な業界にいますね。経済的には、医師はもっと恵まれていますが。でも、過労から、産婦人科医は早死にです。命をすり減らしてお金をもらっていると思います。もう少し、続きも読んで下さいませ。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年3月23日 (日) 18時39分

やんじさま
そうですね。選挙の時にも必死で訴えたのですが、政府全体が、国民の命に責任を持とうとしていません。医療も、福祉も、介護も。どんどん切り捨てられていっています。これを国民としてしっかり見つめなければ。そこから始まると思っています。(25日楽しみにしています)河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年3月23日 (日) 18時59分

MOMOさま
コメントありがとうございます。本当にこのままでは、どんどん子どもがいなくなってしまいます。私たちに出来ること。それは、やはり国民一人一人がしっかり意識を持って、おかしいことはおかしいとはっきりと言う。国民の声を政治の場にとどけなければ。為政者は、本気で私たちの命をみていません。これからも読んで下さいね。感謝です。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年3月23日 (日) 19時04分

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