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医療崩壊(4)医療事故

   あらゆることに事故はつきものである。医療もしかり。人は完全ではないし、医療も常に完璧ではない。あってはならない事ではあるが、しかし、人のすることである以上は皆無とはならない。

 全国の多くの病院で今、「ひやり、はっと」要するに、ひやりやはっとした、医療事故一歩手前の出来事を報告するように義務づけている。そこから、何らかの事故を起こさないシステム作りが考えられる。単に個人の問題でなく、医療事故を減らす為のシステムとしての改善への取り組みである。

 また、現在問題となっているC型肝炎の問題。これでも、当時は、お産で大量の出血があった場合には、多臓器不全にならないために、何よりもフィブリノーゲン製剤を使うように、と指導されていた。20年以上経つと、これがC型肝炎の原因となると分かった。このように、医療は恒に完璧ではないし、事故とは言えずとも、時間と共に、また医療の進歩とともに、新たな展開となり、流動的なことでもある。

 事故が起これば、当然トラブルとなる。医師として、私も事故や間違いがあった時には、とにかく隠さないで、きちんと説明をする事、そして誠意を尽くして、謝罪すべき事は謝罪をし、補償すべきものは補償をするいう、こんな当たり前の事をしたいと思って来た。素直に「ごめんなさい」を言うことが出来る、これが医療者側と患者さん側との信頼関係を作る基礎となるものであると。そう考えて来た。

 しかし、現実はそうはいかない。患者さんの側の激しい怒りの前に、ただうなだれるしかない。そんな医療の現場から逃げ出したくなる。

 さらに、現在、医療事故には、民事の補償だけでなく、刑事事件として逮捕、追求される時代となった。医療に警察や検事が関与する。

 福島県で、侵入胎盤の女性が亡くなり、医師が一年後に逮捕されるという事態が起きた。これには、日本中の産婦人科医が怒った。私自身も震え上がった。侵入胎盤は難しい。私でも、またどんなベテランのドクターでも、その患者さんを助ける事が出来たかどうか確信をもてない。全国の産婦人科医が逮捕は不当であると署名をした。

 この事件以来、全国の産婦人科医が一人で勤務している病院から、医師は一斉に引き上げた。二人以上の医師が勤務するところでしかお産を取り扱わなくなった。また、前々回に述べた広島県の病院の産婦人科の集約化、これは、三人以上の医師がいる所でのみお産を扱うということになっている。

 また、民事にしろ刑事にしろ、裁判に訴えた、または逮捕されたとの発表があるなり、マスコミにはまるでそのドクターが極悪非道な医師であるかのような報道がなされる。訴えられた者は、その報道がつらい。せめて、民事では、そのドクターに過失ありとはっきりしてから報道されるくらいの配慮があってしかるべきなのだが、訴えられた時点で、まるでそのドクターに責任ありと決まったかのような報道がされる。

 勤務が過酷な上に、常に民事訴訟や刑事事件で訴追される可能性がある科となったら、誰も産婦人科医なんてなりたくないと思うのは、極めて自然なことだ。

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コメント

最近、目がゴロゴロしたり充血するなと思って、いろいろ調べていたら、翼状片と症状が似てます。
広島市内の眼科のこと、よく知らないので教えてください。
全く違うコメントですみません

投稿: 花かんざし | 2008年3月24日 (月) 21時53分

本当に大変なことが身近に&自分の身におきているのだと感じます。もっと多くの人に実態や原因等々知ってもらえたら、いろいろ変わるだろうし、また国も動くかざるえないこともあるだろし、、、と思うのですが。本当に恐い現実です。

投稿: さくら | 2008年3月25日 (火) 01時49分

花かんざしさま
ごめんなさい。お返事が遅くなりました。眼科のことは私自身が責任を持ってお伝えするのはとても難しいのですが。でも、私が行っているところをお教えするのでいいのでしょうか。眼科も耳鼻科も整形外科も私はバスセンターの上に行っています。そこが私にとって近くて行きやすいというのもあるのですが、しっかりした先生たちだと思います。これで勘弁してくださいませ。後に何かあっ時には、アドレスを教えていただければ個メールのほうがいいと思います。どうぞよろしくお願いします。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年3月28日 (金) 00時57分

さくらさま
よく、医師が悪いとばかり報道されますが、実は、こんな現実なんだと知ってほしかったのです。みんなが関心を持っていろいろに声を上げれば、何とか改善の方向に行くのではないかと思うのですが。コメント、ありがとうございました。お返事、遅くなってごめんなさい。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年3月28日 (金) 00時59分

最近の医療はすごい進歩したと思います。1000グラム程度でも助かるのが今なのですから。それだけ、でもお医者さんは難しい仕事になっている。

ところが、乱暴な言い方かもしれないが、運悪く助からなかったことで犯罪になってしまうわけです。

あんまり個人をつるし上げすぎると、結局、馬鹿らしくなってやる気がなくなります。

医学部いける能力がある人なら、東大文系に行って、大手企業に入れば、30過ぎれば年収1000万くらいざらですからね。国家公務員でも実際、ものすごい多忙なのは一部です。しかも、つるし上げられるリスクもそんなにない。

よほど献身的でなければ、医者になる人がいなくなってしまうと思います。

中国の文化大革命で、中国は優秀な将軍をつるし上げて皆殺しにしたら、ベトナムにさえ(といったらベトナムに失礼ですが)にボロ負けする人民解放軍になってしまった。カンボジアのポルポトしかり。インテリを皆殺しにしたら、国家の再建まで30年を要しました。

感情論で、叩くことの不毛性をとみに感じます。システムとして今後いかに教訓を生かしていくか、ということをしていかないと駄目ですね。

投稿: さとうしゅういち | 2008年3月28日 (金) 21時40分

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