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研修会(2)子宮内膜症について

子宮内膜症というのは、子宮の内膜と同じものが、子宮の外、腹膜や子宮の筋肉の中とか、卵巣の中に出来て、そこで月経の時に出血を起こします。そのため、とても強い月経痛、月経でない時の腹痛、性交痛、排便痛などを起こします。さらには卵巣の中で出血を繰り返すことで、卵巣の中にまるでチョコレートを溶いたようなチョコレート嚢腫ができたり、腹膜に強い癒着が起きて、不妊になったりもします。

 本当に強い月経痛で、以前でしたら、麻薬を使わなければならないほどつらい人もありました。でも、今は、単なる鎮痛剤を使うだけでなく、いろいろな治療法が出来ています。例えば、半年ほど月経を止める偽閉経療法、ピルによって排卵を止める偽妊娠療法など。最近では、低用量ピルの効用が注目されています。月経痛は楽になるし、子宮内膜症の進行を止めると言われています。

 子宮内膜症は年齢が嵩んで閉経すると、月経痛がなくなるので、治ると思われがちです。でも、閉経後もこの病気が持続し、月経痛はなくとも、性交痛や排便痛が持続する人もあります。

 さらに、要注意なのは、卵巣チョコレート嚢腫が悪性化することがあることです。卵巣明細胞癌、卵巣類内膜癌という種類の卵巣癌です。日本産婦人科学会のアンケート調査では、手術摘出した卵巣チョコレート嚢腫の3.41%に卵巣癌の合併が認められました。

 だから、内膜症性の卵巣嚢腫がある人は、たとえ閉経した後でも、定期的に卵巣のチェックをしなければなりません。もし、急速に大きくなるとか、超音波で卵巣の中に増殖病変などがみつかれば、手術をしなければなりません。

 卵巣チョコレート嚢腫は、4センチを超えたら、そろそろ手術を勧め、10センチになれば必ず手術を、と昨日の研修で言われました。これまでは私たちは、7センチで手術を勧める、と言われていましたので、あたらしい基準を示されました。もちろん、勧めたからと言って、みなさんがすぐに手術を受けられる訳ではないのですが、これら悪性化することがあるということをちゃんと説明したうえで、お勧めしなければなりません。それでも、手術はいやな方には、必ず三ヶ月に一回の定期健診を受けてもらうように、それだけは守ってもらわなければなりません。

 昔は生理痛がひどかったけれど、もう閉経したから、私は大丈夫と思っている人が結構いらっしゃるのではないかと思っています。その警告をしなければ、と思ったので、ここに書かせてもらいました。

 それにしても、医療というのは、どんどん変わります。新しくデータがでる度に右往左往しなければならない状況は、私たちに取っても、患者さんに取ってもしんどいことです。それからもう一つ、女性はこのように生理的な現象なのに、それがつらい人が多くいるのだということを、男性諸氏にもぜひ分かって戴きたいのです。強い月経痛の人が、廻りの理解を得ることが出来なくて、そのことでさらに苦しんでいるという現実を知っていただきたいと思います。

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コメント

本当に医療は日々進歩しているなぁ、と実感してます。でも河野Drたちのように右往左往して楽になる手助けをして下さる医療関係者がもっともっと増えて欲しいと切実に思います。
今思えば私が出産した時の担当Drは明らかに勉強不足でした。私も妊娠中勉強不足でした。だから今一生懸命学習してます。時々、くじけそうになりますが(笑)
私と同じ事が起きないように経験をしゃべる事が大事だと実感してます。でもなかなか上手く伝わらないし、血を吐く思いで口に出さないといけないので少しつらいですけど、明日があるんだっ!と奮い立たたせます。
これからもどんどん教えて下さい。

投稿: きり | 2008年2月 5日 (火) 01時35分

こんにちは。
わたしは21歳のとき、卵巣の内膜症で、8センチだったので手術をしましたがすぐに再発しました。
それでも、手術によって排便痛がなくなったので、手術してよかったと思っています。
閉経後はもう放置していていいものと思っていました。定期検診は大事なのですね。

不妊症にもなり治療は辛かったですが、無事に妊娠出産できてほっとしています。
内膜症と不妊症は同時に治療できないので、たくさん悩んで考えました。
治療法の進化についていくのは大変ですが、自分の体を守るために関心を持ち続けようと思います。
いつか、妊娠機能を損なわず完治できる方法が見つかることを願っています。

投稿: なぎ | 2008年2月 5日 (火) 12時41分

きりさま
いつも適切なコメントをありがとうございます。と思ったら、何かしんどいことがおありだったのですね。ご事情は分かりませんが、どうぞ、つらくならない範囲で、今の姿勢を貫いて欲しいと思います。これからもどうぞ、教えてくださいませ。お返事が遅くなってすみませんでした。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年2月 7日 (木) 00時15分

なぎさま
ずいぶんつらい内膜症の体験をお持ちなのですね。本当にこのつらさは、どうしてあげたらいいのか、と思います。ご指摘のように、これから赤ちゃんを産みたい人には、とにかく内膜症がひどくならないように、不妊にならないように、と苦心します。なぎ様、お子様に恵まれてよかったですね。どうぞ、これからも健診をつづけられて、お命を大切になさいますように。ありがとうございました。お返事が遅くなってすみませんでした。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2008年2月 7日 (木) 00時25分

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