コンドームのお話(4)アダルト・ビデオで学んでいる。
このごろ、大人も若者も性の仕方が変わって来ました。これにはA.V.アダルトビデオの存在が大きく関わっていると思います。A.V.は、セックスの仕方を学ぶ物ではありません。あれは、大人の娯楽として作られた、演技の世界なのです。でも、実際、今、A.V.のまねをする人がとても多くて、教科書になっているような感があります。
私は、ああ、A.V.でセックスの仕方を学んでいるんだ、と、気づいた時があります。それは、「セックスで出血する」と言って来る人たち。この人達は、みんな膣の中に傷を作っています。中にはバスタオルをまたに挟んで、それが血液でぐっしょりになるほどの大出血をしていた人もいます。そう、男性が指を入れて、中を引っかき回す、そのため爪で傷を作っているのですね。膣はとても柔らかく、傷つきやすいのです。また、血管に富んでいて、出血しやすい所です。せっかくペニスの先は柔らかく、丸くって、傷つけない仕組みになっているのに、爪なんぞでひっかいたら、とても危ないのです。
これは、明らかに昔にはなかったことです。アダルト・ビデオのまねなのですね。実際、指なんぞを入れられたって、女性に取っては全然いいことではないのですが、A.V.の女優さんはみなさん、とても感じた演技をします。それに、男優さんは、女優さんを傷つけないように、爪をとても深く切っています。でも、A.V.の中で「さあ、みなさん、こうして爪を切りましょう」なんてしません。
私は、大阪のテレビ局で、吉本の番組に出たことがあります。吉本の今田さんと山口さんの二人が司会で、「性の悩みに答える」というものでした。その時に共演したのが、カリスマA.V.男優と言われている加藤鷹さんです。(テレビの共演です!A.V.の共演ではありませんからね!ちょっとザンネン!?)そして、丁度この指の話になりました。そしたら、加藤さんが両手の指を拡げて、私やみなさんに見せて下さったのです。本当に爪がないくらいに深く切ってありました。そんなことも知らない男性が、ただA.V.のまねをして、女性を傷つけています。今は私は分かっていますので、出血すると言って来た患者さんには、「彼氏が指を入れた?」と聞きます。そして、「指なんかいれたらいけん!危ないのに。」と言います。
日本のA.V.は、コンドームを使いません。いえ、実際、撮影の現場では使っているのだそうですが、使っていることは絶対に見えないように、あたかも使っていないように見せることが必要なのだそうです。使っていることが見えると、それは上映を許可されないのだそうです。
A.V.では、外で射精をしています。いわゆる膣外射精。でも、これは、避妊の仕方を見せているのではなく、一つの物語が完結したということの証拠のために、そう見せているのだと。でも、A.V.の男優さんによっては、射精している風に見せるために、小麦粉を溶いて、それを注射器で飛ばすのだと。中には、女性のお腹の上だったり、ひどいのになると、女優さんの顔にかけたり。そんなまねをされたら、女性にとってはとても不愉快です。
多くの若者達は、実は大人達も、膣外射精をすればそれで避妊になると思っているようです。ましてや、性感染症の予防なんて、本当に頭にはないようです。若者達は「外出し」「中出し」などという言葉を作ってしまいました。これには、明らかにA.V.が大きな影響を与えています。
膣外射精の妊娠率は26%。私のクリニックでの10代の女性の(10代の性の相手の男性は半数を超えて20才以上の大人であり、75%が社会人です)の場合は妊娠率は29%でした。A.V.はあくまでも演技の世界なのだということを、私は生徒に講演する時には必ず言う様にしています。

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コメント
指入れの浸透についてですが、AVの存在と同時に、Gスポット幻想の存在が上げられるのではないでしょうか。
この記事を読んだ後、確認の為いくつかの性技指南書を立ち読みしてみたのですが、Gスポットの刺激について書かれていました。しかも、探り方が指を中に入れ、指の関節が何やらといった記述内容でした。
AVの演技とGスポット幻想が相乗効果となって指入れが広まってしまったのではないでしょうか。
また、刺激は強いほどより強い快感が得られるという幻想も根強く残っているから乱暴な行為を是としてしまうのでしょう。
所謂顔射については、女性の屈辱感ばかりではなく、髪につくとなかなか取れない上に、眼に入ると大変な痛みを伴うといった実害もあるそうですね。
これについては、一部男性の持つ歪んだ支配欲が背景にあるように思います。AVの中にレイプ物が相当数あることと同じ意味なのでしょう。
自慰行為の範疇で自らの寝室から絶対に外に持ち出さないのなら、どのような性癖であろうと個人の自由でしょうが、他者に危害をもたらす行為は厳に慎まねばならない事は言うまでもないでしょう。
外に出す、というのは、ただ単にコンドームを着けるのが面倒臭いと思う男のショボイ言い訳ですね。
投稿: めかちゅーん | 2008年1月28日 (月) 20時00分
めかちゅーんさま
一次、Gスポットについては騒がれましたが、その後、静まっています。私もずいぶん本は読みましたが、女性が自分のGスポットについて書いた物にはお目にかかりません。一部の男性の幻想ではないかと思っています。敢えていえば、クリトリスの裏側にあたる部分で、そんなの、外からの刺激の方がはるかに直接的でしょう。今、若い人たちはGスポットなんて知りません。それよりも、中を乱暴に引っかき回す一方で、だから、とても深い所に一杯傷を作っています。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年1月30日 (水) 02時36分
わたしは宮淑子氏の「メディア・セックス幻想」でAVの世界の虚構を知りました。
先生のおっしゃる通り、男性は間違った性技を身につけるんですね。
もう「あがって」しまったわたしですけど、性への興味は尽きません。
どうも元理系女子なので、科学的に掘り下げたいと思ってしまうのです。
ペニスがなんであんな形をしているのか。
包茎は病気ではなく、それが普通ではないのか?
だって、もし必要ないなら包皮など、とうの昔に淘汰されて、なくなっているでしょうに。
小児のか弱い、未使用の亀頭を守るんだというなら、大人だって同じでしょう。
オス猫の亀頭に棘があるのも、不思議です。
機械関係の仕事をしておりますと、ねじやコネクタにオス・メスがあるのも不思議です。
アメリカ製の部品にもmale,femaleとありますので、世界共通なのねと感心しました。
不思議でもなんでもないですね。
見たまんまですから。
とりとめもないことを長々と書きました。
また読ませてください。
大変勉強になりました。
投稿: なおぼん | 2013年11月 8日 (金) 21時47分