コンドームのお話(3)人工中絶とHIV
ある時、ある大学の教授がエイズの統計に関わる講演の中で、「コンドームを使え等と言うから、性が乱れるのです。」と言われて、こけそうになったことがあります。今、性教育に反対する人々は、これと似たような考えでしょう。コンドームを教えることは若者をそそのかすことになる、と。その方達は、セックスは誰がする物と考えといるのか、不思議に思うのです。
それだけでなく、私は今、多くの人たちが誤解をしていると思うのです。望まない妊娠をして、人工中絶を受けるのは、若い人たちである、と。だから若者の性が乱れて困ると思われているのでしょう。
ここに、最新の統計があります。2005年度(平成17年度)の母胎保護統計、日本の人工中絶の統計です。
総数 289127件
20才未満 30119 20~24才 72217 25~29才 59911 30~34才 59478 35~39才 46038 40~44才 19319 45~49才 1663 50才以上 28 不詳84
と、こうなのです。30代の方が28万件の内10万件以上、中絶の手術を受けているのです。これに比べると、10代は3万件と少ない物なのです。避妊というのは、若い人だけの問題ではないのです。
それでは、性感染症は?厚生労働省のエイズ・サーベイランス(エイズ動向委員会)の最新の発表を見ます。2007年7月2日~2007年9月30日までの三ヶ月間のHIV感染数者数と、エイズを発症して見つかった人の統計です。日本国籍の男女別、年齢別統計を見ます。
HIV感染数者 エイズ患者
男 女 男 女
10~19才 4 0 0 0 20~29才 70 5 15 1 30~39才 88 5 36 0 40~49才 48 1 21 1 50.才以上 24 3 23 2
さらに、感染したのは
国内 感染者男性 216 女性 10 エイズ発症 男性 83 女性 2 国外 11 3 8 2 不明 8 1 4 0
お分かり戴いたでしょうか。あらゆる年代の方が人工中絶を受けているのだし、HIVにもそれもほとんどが国内で感染しているのです。いくつになっても、女性に取って人工中絶を受けるのはしんどいことですし、性感染症にかかることも、ましてHIVに感染することは、その個人にとって大変なことなのです。
性の問題は、若い人だけの問題ではないのです。私は、だから、一生を豊かに過ごすために、早い内からの性教育が必要だとしつこく言い続けているのです。では、今、コンドームと性感染症の関係は、日本ではどうなっているのでしょうか。次回述べます。

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コメント
この統計で感じたのは「まさか」ではなく「やはり」でした。
巷間いわれている若年層の中絶批判は増加率に着目しているので、中絶問題=若年者の問題と錯覚してしまいがちなのですが、実数では所謂『いい大人』によるものが大半なのですよね。
第一、30代ともなれば分別や思慮もあり、知識も豊富な世代のはずで、これをみる限り『性知識なんて゛全部゛自然に覚えるもの』という主張の空虚さがわかります。
投稿: めかちゅーん | 2008年1月26日 (土) 07時51分
おはようございます。連日拝読しております。
以前、別の方の講演会で同じようなデータを見せていただいたことがあり、「日本人の避妊はコンドーム一辺倒であり、また、妊娠してから産むか産まないかを考える傾向がある」と話されていたことを思い出しました。
コンドーム一辺倒な上、それの使い方がままなっていないという事実もありますね。
そして、セックスは命が生じる行為であるという意識の薄さ…。
もっと大人がしっかりしなきゃ、とつくづく思います。
投稿: うさこ | 2008年1月27日 (日) 07時33分
めかちゅーんさま
そのとうりなのです。大人達は自分たちのことを横に置いて若者の悪口を言っています。大人が自分たちの性を見つめることから始めないと。いつもコメントありがとうございます。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年1月27日 (日) 19時38分
うさこさま
コメント、ありがとうございます。そう、大人がしっかりしなければ。大人が全うになって初めて、子どもたちにもキチンと伝えることが出来るのでしょうね。これからもよろしく。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年1月28日 (月) 03時16分