11才の少女の出産が映画になると。
性行動が低年齢化していることは、私のデータだけでなく、全国同様だったようだ。あちこちのドクターから、同じ結果で驚いたとの声が寄せられた。
私は、ずっと言い続けている。若者達は情報の渦の中にいる。その情報をまき散らしているのは、また、大人達なのだが。若者達を直撃している情報には、性はリスクを伴うものだということは、全く出て来ない。それらも含めて、真正面から性をしっかり教えることが必要である、と。教えないと、若者達は、それらの情報のみから性意識も形成してしまう。若者達は無知だ。無知だからこそ、カジュアルに行動を取る。知れば知るほど行動は慎重になる、と。
こう言っても言っても事態は変わらない。教育界は逆に行くばかりだ。肝心なことは教えない。そして、性行動を取ると、妊娠するよ、性病にかかるよと、脅しておきさえすれば、若者達は行動を取らないであろうと。中絶は殺人、不妊症にもなる、やってはならないこと、と。こんな上っ面の脅しだと、若者達は自分自身の事として実感を持つことは出来ない。だから、カジュアルに行動をとり、結果、当然のごとく妊娠しても、中絶はいや、赤ちゃんを殺すのはいや、産んで育てると、育てる実力もないのに泣き叫ぶ。
私は、30年近く訴え続けているのだが。
このたび、11才の少女が出産をする映画が作られていると聞いた。漫画が原作なのだそうだ。子どもたちだけで妊娠、出産、子育てをする映画なのだと言う。テレビドラマでないだけまだましなのだけれど。妊娠した女が状況によっては、どんなにしんどく、出産がどけだけ大変で、そして、ましてや子育てには経済的なことも含めてどれだけ様々な労力が必要なのか、ということをすっ飛ばして、妊娠や出産を語って欲しくない。
実際、若ければ若いほど、妊娠した女は、産む産むと言う。産んで育てることの生活の実感がないからか。産めば何とかなる、と。中学生の我が子が、突然、子どもを産むと言い張った時、その親は本当に大変だ。どう説得すればいいのか、と。だって、中絶は殺人と聞いて育った子が、殺人はいやだと言うのは当然のことである。どこに住むの?家賃はいくら?生活費は?電気、ガス、水道、食費、いくらと考えている?出産の費用は?何より、誰がどこで働いて、いくらお金が頂けるの?この様なことを私は一つ一つ問いつめて行く。
私も11才の少女の出産を取り上げたことがあるが、それはそれは大変であった。本人も、家族も、われわれ医療者も。産ませ方一つ取っても、本当に大変だった。
そのような現実をどう取材しているのか知らないが、映画という娯楽の一つに11才の少女が出産するという事を取り上げるという。漫画の世界ではなく、よりリアルな映画の中の現実として。実際子どもに手を出すロリコン男達が、こぞって見に行くのではないかと、気が重い。

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コメント
明けましておめでとうございます。知らないことが多くいつも読んで勉強させてもらっています。笑いもあって^^。昔、テレビでフレンズというフランス映画?を見たことをおもいだしました。中学生ぐらいだったかな。あれも強烈で、、当時クラスの女の子たちとポールミシェールと言い合いハグしたのがはやりました。、、、先生は見ました?出産シーンを初めて見たのも、11PM、しっかり性教育を受けたいな~と40代でも思います。。。先生頑張ってね!先生の講演を聞いたのは、83でした!今のほうが若く見えますね^^なぜ?^^
投稿: しんちゃい | 2008年1月10日 (木) 11時03分
本当にその通りだと思います。
9歳の娘をもつ親としてはとても恐ろしいです。
最近の事件をみていて毎日無事帰ってきてくれるかも不安なのに、今後どのように性について教えていくか悩みます。
周りにもほんとに若い子が子供を産んでいて、知らない子なのに心配でなりません。
自分の時とはずいぶん世間がかわってきたので経験もさほど役に立たないような。。。
慎重になってしまいますね。
投稿: mejiha | 2008年1月10日 (木) 14時23分
しんちゃいさま
コメント、ありがとうございます。
昔私の話を聞いて戴いたのですね。20年以上も前。実物を見たら、今はだいぶ年取ってます。あのころは、若かった!これからもどうぞよろしくお願いします。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年1月10日 (木) 20時36分
mejihaさま
コメント、ありがとうございます。まず、性を教えるというよりも「からだ」をしっかり教えてあげてください。私がここにもシリーズで書いたように。質問が出た時に、逃げないでごまかさないで、おめめを見ながら、本当のことをちゃんと答えてあげる。これが大切なことだと思います。9才なら、初経ももうすぐですね。家庭での性教育は、子育てそのものです。頑張って下さい。学校にも、「性教育をやって欲しい」と保護者の声を伝えることが大切だと思います。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年1月10日 (木) 20時41分
コメント失礼いたします。
この映画に関してですが、正しい性知識の普及という面で少々まずい面がでてきているようです。
主にネット界隈でありますが、この映画をもって行き過ぎた性教育が云々といった言説がでてきているように聞いています。
もちろん、このような作品が性教育の一環でないことは言うまでもないことですが、それを知っていても、これを口実に真っ当な性教育まで叩きにくるような輩もいそうです。
最初から娯楽作品として制作するならまだしも、なまじ愛だの命だのといった綺麗事を並べるために、あらぬ方向まで飛び火するのではないでしょうか。
もし作成するのであれば、医師の監修や、出産シーンの大幅変更(きちんとした分娩施設で行う)といった配慮が必要でしょう。その結果としての原作からの乖離はやむなしと思います。
また、今更というものですが、実写ではなくアニメ化のほうが良いように思います。原作の絵柄はいわゆる『萌え系』の絵とは大きく異なるため、一般の方にメッセージを伝え安いように感じます。また、アニメであれば、被写体は架空のものであり、チャイルドポルノの容認になりにくいと思います。
最後に、先生とは論を異にする部分ですが、ロリコン男云々とありましたが、今回のような件で気をつけねばならないのは、性犯罪の増加よりも性的搾取の容認ではないかと考えます。年少者がポルノの被写体とさせられることは重大な人権侵害です。
ロリコン男性諸氏は自らの欲求は活字なり漫画なりCG相手で発散して下さい。ということです。
長い上に駄文、失礼いたします。
投稿: めかちゅーん | 2008年1月10日 (木) 22時34分
めかちゅーんさま
お久しぶりです。コメントありがとうございます。お返事が遅くなってすみませんでした。私、そもそもこんなものを映画にするその意図が分からないのです。どうしてこれが娯楽になるのでしょう。誰がこんな物を見て、楽しむのでしょうか。で、結局は、ロリコンの人?私の現場では、性犯罪のむごい被害にあった子どもたちを沢山診ています。究極は殺人、性犯罪の果てに殺されてしまうのですが、殺されない所での被害は決して少なくありません。漫画やCGの範囲で、発散出来ることなのなら、なぜ現実にこのようなことが起こるのでしよう。性はまさに人間関係なのですが。その関係を作ることができないのでしょうが、力で幼い子が犠牲になるのが耐えられません。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2008年1月13日 (日) 02時11分
先ず、此処で議論されている「映画化された漫画」の作者名が「さそうあきら」、作品タイトルが「コドモのコドモ」であるのは明らかなのに、その名前を出さずにああだこうだと謂っていることが大いに疑問です。
>この映画をもって行き過ぎた性教育が云々といった言説
は専ら匿名で匿名掲示板で流れているようですね。「あの筋」、つまり(宗教)右派やヤクザ(国家の別働隊)が発信している事は自明です。
佐草晃教授は一年前に教え子を殺害した犯人を捜すため漫画を書き下ろしたパンフレットを配布しています。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%c0%e9%cd%d5%c2%e7%ba%ee
投稿: 赤木大介(akakiTaisqe) | 2008年1月20日 (日) 21時05分