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性の健康とバッシング

 先日行ったばかりの大分で、その直後、県議会でひどい性教育の攻撃がされました。そして、県教育委員会が「遺憾に思います」と答弁をしたと知りました。その前に事実無根のプリントがくばられ、議会での追及も、根拠がないことを事実として例を上げて行われています。私もプリントを手に入れましたが、これは全国で行われているのと同じ内容で、宗教団体がからんでいます。全国で使われたでっちあげ満載のパンフレットと同じ内容ですから。

 そして、「新しい歴史教科書を作る会」が作った教科書を出版している会社が、また新しく「性教育の攻撃をする」本を出しています。これは、おそらく、これからまた地方議会で追及するための資料として使われるのでしょう。これには、沢山の人の実名が書かれています。私の名前も書かれているそうですが、気分が悪くて、読んでいません。これまで受けたバッシングから、おおよその内容は検討がつきます。

 性教育は、「セックスの仕方を教える教育」で、子どもたちをそそのかすという、まことに見当違いの攻撃がされつづけています。それを国会でも地方でも議員が追求するものですから、文科省も教育委員会もその「人数は少ないけれど、お金があって声の大きい人たち」のいいなりになっています。

 昨日の続きになります。性の健康とは、(WHOの定義、2005年、小宮山訳)「単に病気・機能障害・衰弱がないことでなく、性に関して身体的、情緒的、精神的、社会的に満ち足りた状態のことです。性の健康には、それを強制、差別、暴力の無い、悦びに満ちて安全な性的経験を持ち得ることと同様に、肯定的に敬意をもってセクシャリティや性的関係にアプローチすることが求められます。性の健康が達成され、維持されるためには、あらゆる人の性の権利が尊重され、守られ、満たされなければなりません。」また、国連もこれを定義し、「性の健康のケアは、単に妊娠・出産や性感染症に関する相談やケアにとどまらず人生と人間関係を豊かにするものであるべきである」としました。(IPPF国際家族連盟も支持)

 これらをふまえて、性教育のテーマ、教育課題としての位置づけは「ノーセックスの選択も含め、避妊、人工中絶、HIV/エイズ、多様な性、性と人間関係、性と人権など性教育、健康教育としてトータルに包括的に扱う」ものです。

 これに対し、バッシングをする人たちの位置づけは、「禁欲教育(結婚まで純潔という)を基本に、道徳教育、生活指導の課題として位置づける」というものです。

 かれらの主張を読んでいると、まるで「結婚まで性行動をとらなければそれでシアワセになれる」という幻想を持っているようです。そして、避妊を教えることも禁じていますので、もうアメリカでは完全に破綻していると、先日のエイズ学会にサンフランシスコから来ていた小林まさみさんに聞きました。

 なんにも教育されていないと、その防衛の方法も知らないままで、結果、妊娠、HIVの感染を引き起こしているということが、データではっきり現れている、と。アメリカでは、宗教的に人工中絶が出来ない立場の人は、妊娠すると産まなければならない、若年の出産が日本とは比べものにならないほどの数です。それでも、アメリカでは、その人達のフォローのために、子連れで教育が受けられる高校も沢山あります。日本では、そんな高校も無く、おまけに、避妊は教えず、中絶は「殺人」と教え込まれますので、いざ「妊娠、でも育てられない」となった時に、どうにもならなくなってしまいます。

 何度も繰り返しますが「知らないままに行動を取る、知らないからこそ、行動を取る」若者達を見て来ています。

 私、総理大臣すら「昔はそんな教育は無かった。教育を受けなくとも、ちゃんと大人になったし、子どもも生まれている」という大人達が、では、本当に「性の健康」に定義されているような、豊かな生活を送っていますか、と聞いて見たいと思います。何より大切なのは、人間関係を豊かに作って行く事だと思うのです。びっくりするような大学を出て、超エリートの人が、パートナーとみじめな関係しか作れない、そんな姿も見ています。ドメスティックバイオレンス「身近な人からの暴力」単に肉体的な暴力だけでなく、言葉の暴力で傷つく人たちも沢山見ています。

 今回、狭い所で、偏見を持って性教育を捉え、攻撃する貧しい人たちに対し、地道に実践をしている人たちがこんなにいるということで力をもらいました。私もめげません、ということでお返ししたいと思います。

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コメント

性の原理主義者への対応は難しいですね。
かってアメリカの、あまりに生真面目なプロテスタントの一派は、その教えが、性を禁止した教えであったがために、絶滅してしまったという話を聞いたことがあります。
悲惨な現実を、少しでも良くしようという河野さんの努力には頭が下がります。
見たくないものは見ない、見えないというのでは何も解決しないのですが。
そういう人が多いのも、事実ですね。
困ったことです。

投稿: ゲン | 2007年12月28日 (金) 15時57分

ゲンさま
お久しぶりです。コメントありがとうございます。やってもやってもちっとも変わらない社会にうんざりなのですが。めげないで継続することが何より大切なのでしょう。いつも読んでいただいてありがとうございます。またお会いしたいです。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年12月28日 (金) 23時12分

先生、こんばんは
難病って治らないのですか?

投稿: 泣き虫 | 2007年12月28日 (金) 23時31分

河野先生、こんばんはー
☆私は80年代後半、二人の若者から、「**さん、セックスは神聖なものですよ!」と真顔で言われて、仰天したことがありますー我々、団塊世代は「性解放」の時代でしたから…
☆その後はまともな性教育が始まったようで、安心していましたが、「ゆとり教育」の終わりで、教育がまた反動化しているのでしょうか?
☆先生のおっしゃるような状況だとすると、米国ー宗教右翼の主導する、「禁欲性教育」と連動していると思われますー
☆しかし彼らが支える、Bush政権は、後一年で終わりますーその後に期待したいですね(日本は米国の影響を受ける国ですから)
☆戦いは消耗するものですが、頑って下さいー高知から応援していますー「元」空き三角(お忘れでしょうか?)

投稿: my9 | 2007年12月29日 (土) 04時31分

先ごろ、父親に性的虐待を受けていた子ども達のニュースが流れていました。
その「人数は少ないけれど、お金があって声の大きい人たち」は、間接的に、そういった父親の「手助け」をしていることに気づいていないのでしょうね。

投稿: 六郎 | 2007年12月29日 (土) 09時38分

うーん。

早速攻撃ですか。。

この問題には、まず、本当に「電波」としかいいようのない誤解を悪意を持って広げようとしている、自称「保守」の方々が手におえません。(実際は「保守」ではなく「ネオコン」に分類されるのですが)。

しかも、声が大きい。

私は、年表を頭の中に書いてみて、株価暴落でぼろ儲けしようとする人がいるとき、こういう方々が出てくるということに気付きました。

1996年 「自由主義史観」一世を風靡
1997年、新しい歴史教科書をつくる会発足
山一證券、拓銀倒産、金融恐慌発生
1998年 自殺者3万人突破。
      労働者派遣法改悪。

2002年 
 9月ころ:豊中市で三井マリ子さんへの攻撃開始などバックラッシュ攻勢激化。
 9月30日、日米首脳会談の結果を受け、竹中金融大臣就任。「不良債権処理」加速化強行。
        
2003年 
1月(から翌年3月。)日銀が、アメリカ国債を大量購入。引き換えに、円を外資が大量入手。
4月、株価が7600円まで暴落。その後底値を拾って外資が買占める。

6月 竹中大臣が2兆円を投入し、りそな銀行救済。株価上昇へ。外資ぼろ儲け。

(なお、竹中大臣は在任中、靖国に参拝していました。)

外資というより、国際的金融ヤクザのリーダーの中にはキリスト教右派がおり、某日銀幹部も同じ信者で同じ教会に通っているということがあります。

状況証拠だけですが、あまりに怪しすぎます。

 大嘘をばら撒いて、人々の目を釘付けにしておいて、裏でぼろ儲けしている人がいる。そうでなければ、説明がつかないのです。

 本丸はしかし、逮捕されることはなく、逮捕されるのは村上ファンドなど、「青年将校クラス」です。

まあ、政治家でも、「庶民には道徳を説き、自分たちはぼろもうけ」と言う方々には要注意ですね。ある意味、道徳など関係なかった昔の田中の角さんとかのほうが罪はなかったかも(笑)。

性教育への攻撃を再び激化させているとなれば、この世界経済を牛耳る金融ヤクザが次に何を企んでいるかもちょっと実は心配なんですよ、私は。

長期政権が続き、魑魅魍魎がヘドロのように溜まり、さらにそれが、沈殿して固い岩盤のようにこびりついてなんでもありの体制維持を図っているのがこの国ではないでしょうか?

投稿: さとうしゅういち | 2007年12月29日 (土) 21時56分

泣き虫さま
どうしましたか。難病になりましたか。私も、難病になって県知事から難病指定をしてもらいましたが、治療で治りましたよ。難病と言ってもいろいろとありますので。主治医に治るのかどうかをお聞きになるのが何よりと思います。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年12月30日 (日) 04時31分

my9さま
お久しぶりです。改名されましたか。わたしとmy9さまは同じ段階の世代だと思いますが、でも、私の所では、性解放なんて、ありませんでしたよ。一部の男性だけではありませんか。でも今の日本の動きは、いわゆるネオコンです。彼らがどんな考えを持ってもある意味、自由なのですが、でも、それに行政が動かされるというのが、とてもいやです。頑張らないといけないのですが。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年12月30日 (日) 04時36分

六郎さま
コメント、ありがとうございます。その通りです。私が裁判をしたのは、そもそも、実の父親に一年間レイプされつづけた小学6年生のことがきっかけです。彼女は、13才未満ですから、本人の同意のあるなしに関わらず、レイプなのだと。日本の法律ではそうなっている、と私が発言したのをねじ曲げて、当時のPTA協議会の会長が悪意に満ちた文章を雑誌に載せました。私の現場では、ロリコンの被害者を多く診ています。そんな大人社会でもあるのですが。まだ情報を発信しつづけますので、どうぞこれからもよろしくお願いします。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年12月30日 (日) 04時42分

さとうしゅういちさま
うーん、なるほどそういうことですか。まさにさとうさんでしか出来ない分析ですね。勉強になりました。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年12月30日 (日) 04時43分

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