女性ホルモン、男性ホルモン(1)
以前、私の咳が止まった理由を女性ホルモンのクリームを塗ったから、と書いた。更年期以後の女性のホルモン補充療法は、今や大変にポピュラーな治療になった。
ほんの少し前まで、更年期は病気ではなく、誰もが通る道とされていた。そして、何か自分の物を持っている人は更年期の症状は軽くて、子育てばかりをしていた人はこどもが巣立った後、喪失感で症状が強く出る。だから、何か生き甲斐を持ちなさい。さらには、あなたは一家の太陽なのだから、朝から不機嫌な顔をしないで、笑顔でご主人を送り出してあげるように、なんて、本当に言われていたのだ。
そんなの、絶対ウソ。精神論ではない。女性ホルモンの果たす役割はとても大きくて、それが急に出なくなると、体調が不良になって当たり前なのだ。卵巣が働きを停止すると、脳から、卵巣を刺激するホルモンが大量に出る。卵巣に「働けー」と命令をするホルモンだ。それでも、まだ卵巣が働かないと、脳は必死でホルモンを出す。そのホルモンを出す場所のすぐそばに自律神経を司る所があって、一緒に混乱し、自律神経失調状態になる。これが更年期障害だ。
その自律神経失調症と、女性ホルモンが出なくなったための粘膜症状。これがミックスされる。私の咳は粘膜の症状だった。粘膜は、外陰部、膣、子宮、膀胱、そして、口、目などに存在する。喉のエヘン虫になったり、目が乾いて目薬が欠かせなくなったり、度々膀胱炎を起こしたり、痒かったりひりひりしたり。そして、性交痛も起こって、これがしばしばカップル間の不仲の原因になったりする。
これらを一気に解決するのがホルモン補充療法だ。ほんのわずか、最低限のホルモンを補うことで、脳は、卵巣が働いてホルモンを出したと勘違いし、静かになる。自律神経も正常になって、めまいや頭痛や不眠やうつなども改善されて来る。粘膜症状も改善されて、楽になる。
前にも言ったが、世界的にはもう当たり前になっているホルモン補充療法が、日本では、ホルモンは悪というイメージが強く、抵抗感を持つ人が多い。決して怖い物ではなく、とても体が楽になるのだから、しんどいしんどいと言いながら毎日を過ごすよりもいいのではないか、と思う。漢方は、自律神経失調症には効くが、粘膜症状には効果を持たない。
そして、ホルモン補充療法は、私が言ったクリームは亜流であって、内服(一日一回飲む)、パッチ(お腹や腕などに貼って、2日か3日に一回張り替える)、膣錠などがある。そして、この度二つの化粧品会社がホルモンを含んだジェルを出す。化粧品感覚で、腕に塗りなさい、と言うスタンスなのだろう。
それぞれがそれぞれ使いやすい方法を、ドクターと相談しながら選べばいい。若い人たち、更年期なんて私はまだまだだわ、と思っていても、人生なんてあっという間なのだから。本当に、すぐにそんな時期が来るからね、その時のためにも知識を持っておくというのは、とてもいいことなのですよ、と伝えておきたい。
明日は、男性ホルモン、男性の更年期やうつなどについて話します。

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コメント
こんにちは。いつも読ませていただいています。
選挙が終わってから精力的に書いてこられたブログの内容、とても参考になりました。
今回のクリームのことも、前に書いてあったのを読んで、薬局で探してみました。ネットで調べてみましたが、まだ販売されていないのですね。販売開始が待ち遠しいです。
これからもここで勉強させていただきます。
投稿: いつも読んでいます | 2007年11月 7日 (水) 22時47分
ホルモンもはじめ、色々なことがTVや雑誌で氾濫し、また人から人へ伝達ゲームのように情報が捻じ曲がって伝わっています。
病院でお医者さんに聞いた情報は、なかなか他人には話せないですよね。
先生がこうして書かれることによって、正しい情報が得られるのは、多くの人にとってとてもいいことです。
私もここで更年期のことを知ることができます。
近いうちに役立つでしょう。
11日はミヤカグさんで手作りのイベントがあります。もしお時間が許せそうなら、行ってみてください。私は午前中ぐらいに行く予定です。
投稿: やんじ | 2007年11月 7日 (水) 23時37分
いつも読んで下さっている方さま
いつもありがとうございます。あの、初めに書いたホルモンの軟膏、もうずいぶん前から売り出されています。大東製薬工業株式会社の「バストミン」という軟膏です。でも、地味な会社で、大々的に宣伝をしませんので、多くの薬局においてないかも知れません。本社は東京豊島区南長崎、工場は山梨にあります。会社に電話をして、お住まいの近くで置いてある薬局を聞かれたらいいと思います。もし広島の方でしたら、私のクリニックにこられたら、置いています。また、何かありましたら、ご連絡下さいませ。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2007年11月 8日 (木) 00時43分
やんじさま
いつもありがとうございます。
11日は、広島のYMCAで講演をしますので、みやかぐ
さんには行けそうにありません。Yでは、保育園や幼稚園の子どもたちの保護者の方に話します。そのころから意識して子育てをすると、だいぶ違うと思います。また、何かイベントがあったら教えてくださいね。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2007年11月 8日 (木) 01時08分
私は元々卵巣からのホルモンが少ないようで、ずっと生理不順に悩まされていました。
ここ2年ほどはピルを飲んでいたので楽だったのですが、経済的なことからピルをやめて今3ヶ月目に入ります。
最近、目が乾く感じでよく充血しています。アレルギーでもなさそうだし、思い当たるふしがなかったのですがこの記事を読んで、もしかしたらホルモンが足りてないからかも…と思いました。
私の場合、またピルを飲んだら収まるかもしれませんね。経済問題はそろそろ落ち着いてきますので、再開しなくては。
投稿: 文月 | 2007年11月 8日 (木) 08時22分
文月さま
そうですね。ピルを止めて、自分の卵巣の働きを取り戻すのに、少し時間がかかっているのかも知れません。止めた後の生理はあるのでしょうか。私、文月さまの年齢は知らないのだけれど、まだお若いようだから、pillでホルモンをおぎなうか、またはもともと弱かった卵巣の働きをしっかりさせる、自力でホルモンを出させるという治療もあります。それだと、保険は利きますので、経済的にはいいかもしれませんね。また、何かあればご連絡下さいね。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2007年11月 8日 (木) 10時32分
生理痛にしても更年期障害にしても、
「誰にでもあることだから、がまんがまん」という時代はもう終わりますよね。
先生がこうして書いて下さることは、
ガマンし続けてきたものにとって大いなる福音です♪
しんどいのに
「笑顔で送り出して」なんて言われ続けたら、
笑顔になれない自分を責めて、自己評価は下がりまくり。
悪循環になってしまいそうです。
ガマンせずに先生のところへ伺って本当に良かった!
このところ、調子が良くなってきてるんです。
(お薬を忘れずに飲むようにしてから・・^^;)
体調が良いと、こころも元気になれる。
それを実感しています。
投稿: Hoch | 2007年11月 8日 (木) 14時05分
Hochさま
調子が良くなって良かった。ほっとしています。また、来られますよね。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2007年11月 8日 (木) 14時44分
もちろんですっ!(^^)
これからもどうぞよろしくお願いします。
投稿: Hoch | 2007年11月 8日 (木) 17時30分