若者の無知(1.性は生殖)
若者は無知である。無知であるからこそ、行動がとれる。知れば知るほど行動は慎重になるはず。と、私は言いました。では、どこがどう無知なのか。
何よりも、「性は生殖である」ということ。これが分かっていない。「いいか?性というのはね、本来生殖行為なの。望むにしろ望まないにしろ、たった一回だって、例え無理矢理レイプだって妊娠はする。妊娠する行為なんだよ。これをしらないといけません。」と私は生徒達に言います。「一回のセックスで妊娠する確率はどれくらいだと思いますか?ここに、妊娠が可能な年齢の女性が100人いる。その100人がみんな一回ずつセックスをしてきたとする。周期的には月経中の人も後の人も前の人も、いろいろといたとして。さあ、その中の何人に妊娠が成立するでしょうか。」元気のいい学校の生徒だと、「5人」「3人」といろいろと声が上がります。
「30人。一回の性交で妊娠する確率は30%と言われています。100人中30人の女性がたった一回で妊娠する。それくらい妊娠と直結する行為なんだよ。何回も何回もしているうちに、たまたま運のいい人か、悪い人が妊娠するものらしい、なんて考えていると、とんでもない。」
生徒達は、何よりこれにびっくりしたと言います。だって、これまで言って来たように、H雑誌やHビデオなどには、妊娠や避妊のかけらも出て来ないのですから。
先日の高校生2年生と3年生のカップル、一月前に中絶をしたのに、その二週間後の性交で、また妊娠しています。その彼が私に言いました。
「僕は分からんじゃないですか。彼女が大丈夫だというからですよ。」
「分からんじゃすまないでしょう。高3にもなって、現実に一回妊娠させてるんでしょう。だって、彼女は堕ろしたばかりなんだよ。かわいそうに思わんか。もう二度とそんな思いはさせてはいけないとそう思わない?」
でも、彼は、「一度堕ろしてつらかったから、今度はもう産みたい」という彼女に、「そんなことを言う女とはもうつきあえん。」と言います。彼の母親は、「うちの子の妊娠だと、どうしてわかるんですか。証拠があるんですか。」といいます。
現場では、こうなのです。こんな状況が繰り返されているのです。もし、一回目の中絶を私の所でしたのなら、私は、絶対にこんなに立て続けに妊娠をするようなことはさせていません。二度と繰り返さない様、後のケアをちゃんとします。私は、彼女に、「人を見る目がなかったね。」と言いました。「だって、彼と彼の親に会って、これはダメだと思ったよ。痛い勉強をしたと思わないと仕方ないね。」と話しました。彼女も無知。彼も無知。でも、その結果を背負うのは、ひたすら女性なのです。
無知の第二点。それは、「妊娠は女性のみがするんだよ」という、この当たり前のことがちゃんと分かっていないということなのです。これを次回お話します。(延々と性教育について話しています。もう、うんざりですか?すみません。どうぞ、もう少しお付き合い下さいませ。)

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コメント
3人目を妊娠したのが分かった時、嬉しくて旦那に報告すると「あの時、大丈夫って言うたじゃんか…」と、予想に反してブツブツ言われたので、思わず「何言うとるん!子どもは一人じゃ出来んのんよ!」と怒ってしまいました。
私の場合は旦那だったから怒れるし、話し合いも出来るし(旦那は金銭面の不安があったみたいです)、結局は安心して産めるけど、付き合ってる彼氏に「お前が大丈夫って言うたから…」って、自分の責任は無いみたいに言われたら、落胆どころじゃないですよね…。
私は今思うと、性に関してかなり無知でした。でもなぜか慎重派でしたよ。親と命の大切さ、子育ての大変さについて話合ってたからかも。性についての話はしなかったけれど。
あと私の付き合った人は、何も言わなくても避妊をしてくれていました。やっぱり相手を見る目も、かなり重要ですね。
こうの先生、引き続き性教育のお話、お待ちしています。今度は私ら親が、子どもに教える番ですから、勉強しておかないと。
投稿: りんご | 2007年9月10日 (月) 11時05分
夏休みに、仲良しの3家族で健康科学館に行ってきました。
その時、子どもたちがくいいるように見つめていたのが、
性教育ビデオ。
その日の上映は、
精子が卵子に到達していのちの誕生!というストーリーのものでした。
たくさんの精子が泳いでいました。
それが男の子キャラと女の子キャラ。
どれもクローンのように同じ顔ですが、
みんな励まし合って泳ぎ続け、卵子を目指すのです。
とうとう中の一人がたどりつくと、
他のキャラ・・じゃない、精子が、
「せっかくがんばってここまできたのに、中には入れないのね・・」
と、よよと泣き崩れると、仲間の男のキャラがなぐさめる・・・、
そんなストーリーだったと思います。
子どもたちは、本当にひと言も発せず黙って見ていました。
その時に思ったのです。
いのちの誕生の不思議に興味を持ったのなら、
商業的なものにまみれた情報が入ってくる前の今の時期に、
「おふくろ、うぜえよ」などと言い始める前の今の時期に、
親として、基本的なことをしっかり伝えておこうと。
ちょうど「はだしのゲン」のテレビ放送で、
ゲンが妹が生まれてくる時にお産を手伝ったシーンも
一緒に見ていたので、
赤ちゃんが生まれるということ、
息子が生まれてきた時のことをいろいろ話しました。
作中のゲンと同じ学年ということで、
ふざけたりてれたりせず、真摯な面持ちで聞いてくれました。
きっと年頃になったら、彼もいろいろな情報の中で、
悩んだり傷ついたりすることもあるでしょう。
だから、一番基本的なところだけでも、
親の私から伝えておきたかったのです。
・・・まだ、早かったでしょうか?
そうそう。健康科学館での様子、自分のブログに書いています。
ちょっと笑えるシロモノも発見して写真にとっておきましたので、
お忙しいとは思いますが、よろしかったらご覧下さい。
http://ameblo.jp/ganymed/entry-10042310775.html#cbox
投稿: hoch | 2007年9月10日 (月) 11時34分
何かあるといつも先生の医院でお世話になっております
今回のお話はとても考えさせられました
男も親もひどいなとおもいました。。。
2度も妊娠して不安なのに
さらに追い討ちをかけられるように好きな人からの信じられない言葉。。。
一番傷ついてるのは彼女なのに
彼の母親も同じ女ならわからないのかな…とおもいました。
本当に悪いのにつかまったね。。という感じですね。
1回の性交で妊娠する確率は30%という数字には私も驚きました。
私はいつも彼に「ちゃんと避妊して」といいます。
やっぱり女の側からもきちんと自衛しないとだめだとおもっています。
投稿: りり | 2007年9月10日 (月) 15時12分
>もう、うんざりですか?
とんでもない!
もっとゆっくり、たくさん話してください。
私は小学生の時と高校生の時に
河野先生のお話を
直接耳にする機会があったので
その点は本当に恵まれていたと感じます。
ただ
それでも世間のあやふやな情報に
時折左右されて迷った事がありました。
今の子供たちが
きちんとした性教育から程遠い状況にいる事を
先生のお話で初めて知り
本当に驚くと同時に
学校で出来ないというなら
他の方法を考えないといけないな、と
子供のいない私でも
危機を覚えます。
我が子でなくても
近所の子、見知らぬ子、親戚の子たちと
いつそんな話をする機会が
訪れるかわかりません。
そんなときに
照れずに
うやむやに適当にあしらったりせずに
まっずぐありのままを話せる様に
なりたいと思います。
投稿: 海 | 2007年9月10日 (月) 16時16分
河野DR.若い子ってこんなもんですね。
もっともっと命の大切さを、教えてやってください。
女性の命、子どもの命・・・
皆さん、この先生のブログ見てくれるといいですね。
投稿: yoshijii | 2007年9月10日 (月) 17時48分
私は こういう本音で、偽りのない 真実を 隠さず教えてくれる 大人に出会ったことがありません。
河野先生は、自信を持って 続けてください。
そして、私たち 大人が 子どもたちに伝えることが 大切だと思います。
これからも たのしみにしています。
投稿: チェリー | 2007年9月10日 (月) 20時31分
はじめまして。広島市内在住の中学・高校生の子供を持つ父親です。河野先生のお話しを、保護者や、子供たちに聞いてもらいたいのですが、講演会などをお願いすることは可能でしょうか? また、可能であれば、どちらへご相談すれば良いでしょうか? ご連絡を頂けましたら幸いです。
投稿: いっちゃん | 2007年9月10日 (月) 23時58分
りんごさま
コメントありがとうございます。そう、お連れ合いにそんなことを言われて、でも、あなたがとてもしっかりしていたので、心も傷つかなくてすんだのですね。「俺にまだ妊娠させる能力があるかどうか試しただけだよ。」と言われて、泣く泣く中絶をした奥様もいらっしゃいましたよ。やっぱり、妊娠した時には、相手の人にもまず大喜びして欲しいですよね。話し合った結果がどうなるにしても。実は、私たちの現場では、若い人だけではない、大人の人同士のトラブルも結構あります。若い時から、ちゃんとコミュニケーションを取るトレーニングをしておかなければ、と思っています。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2007年9月11日 (火) 01時50分
Hochさま
ブログ、読みました。とても楽しそうでした。それに、決して早すぎることはありませんよ。遅くて遅すぎることはあるのですが。それに、Hochさまは日常的にしっかりお子さんとお話をしているしね。またたのしい話を聞かせて下さいね。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2007年9月11日 (火) 02時56分
りりさま
コメント、ありがとうございます。ブログも読ませていただきました。こんど、クリニックに来られた時には教えて下さいね。診療していると、「前の彼はコンドームを使う人だったのだけれど、今の彼は使わない人なんです。」という方がいます。本当に彼まかせなのですね。女性は自分の意志をちゃんと言わないと、ねえ。 河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2007年9月11日 (火) 03時13分
海さま
コメント、ありがとうございます。小学校の時って、何だろう。私、小学生には講演をしないことにしているから、何か特別な時だったのでしょうね。でも、高校生の時にも聞いて下さってありがとう。そしてこのブログも読んで下さってありがとうございます。しっかりとした知識を持って下さいね。それと、嫌らしい事ではなく、大切な事なのだという意識を持っていればちゃんと向き合えると思います。よろしくお願いします。 河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2007年9月11日 (火) 03時25分
yoshijiiさま
つづいてのコメント、ありがとうございます。多くの人には読んで戴きたいのですが、でも、私の力のみでは限界があります。もっと、すべての大人たちがちゃんと意識を持って子育ての中で伝えていかなければ、と思っています。今後もよろしくお願いします。
河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2007年9月11日 (火) 03時31分
チェリーさま
ありがとうございます。このようなコメントを戴くと、勇気づけられます。だって、本当にバッシングで、裁判までしなければならないような状況なのですもの。今後とも、どうぞよろしくお願いします。
河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2007年9月11日 (火) 03時33分
いっちゃんさま
ありがとうございます。もちろん、よろこんで!私のクリニックにお電話下さいませ。講演をと言っていただければ、担当のものがいますので。ただ、私の希望としては、対象が生徒なのか、保護者なのか、はっきりさせて戴いた方が話し易いです。ということは、別々の方が、、、。それから、学校は、生徒に話を聞かせるのをいやがるかも知れません。そしたら、保護者対象の方がやりやすいかもしれませんね。そこで、生徒にも聞かせたいという保護者の声があがれば、生徒にも実現するかも知れません。ご相談なさってみて下さいませ。クリニックの電話は082-242-1505です。木、日、祭日は休診しています。どう゛そ、よろしくお願いします。河野美代子
投稿: こうのみよこ | 2007年9月11日 (火) 03時42分
彼女が大丈夫って言うから・・・
彼女が(子供を)欲しいって言うから・・・
と言い放った人を知っています
しかも2人も!!
加えて言うなら、こんな呆れたコトを言い放ったのは残念な事に30代半ばのいい年した大人なんです
彼女が(子供を)欲しいって言うから・・・と言っても結婚しているわけではないんです
子供が出来て責任をとれるわけでもないのに
避妊もせずに性交してどうするの?
子供じゃないのに・・・
それくらいの事がわからないのかしら?
中絶して傷つくのは体だけではありません
ワタシは中絶こそしていませんが流産(それも2度)しました
流産の処置をしたあとの傷は1ヶ月もすれば治りました
でも心の傷はいつまでも残ります
河野先生にも『(初期流産は)母体側に何かがあるわけではないんだからね』と言っていただいても未だに生まれてこなかった子供に対してゴメンネという気持ちでいっぱいです
(元気な子供にやっと巡り合えた今でも気持ちは同じです)
ましてや中絶となれば、もっともっと心の傷は深いのではないでしょうか?
傷つくのはいつも女性だということを
今の若者にしっかりわかってほしいです
投稿: あっこ | 2007年9月11日 (火) 18時58分