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若者の無知(5.避妊)

 私はすべての患者さんに性交の有無と、有りなのなら、避妊の方法を尋ねます。そして避妊がもし不確実であるのなら、「このママでは妊娠するだろう。そしたら、産めますか?」とたずね、もし産めないのなら、これではいけないのでは、という警告を行います。

 私はすべての若者が避妊を学んで大人になることを悲願にしています。すべての、と言うからには、だから、義務教育で、ということなのですが。でも、今のカリキュラムでは、すでに述べた様に避妊は高校で「家族計画」として教えるようになっています。高校だと、高校に行かない子や中退する子は、こんな大切なことをちゃんと学ばないまま、社会に出、性を実行するようになってしまいます。知らないまま実行することの悲しさを、私は、いやと言うほど診て来ました。「ほとんどの人がいつかは、きっと避妊が切実になる時が来るから。だから、今、避妊の話をしておくよ。」と言って私は若者達の避妊の話をします。具体的には、4月27日のブログに書きましたので、繰り返しませんが。

 話す内容です。私が診た10代の少女達が1000人になった時点でのデータです。1000人のうち、709人に性交の経験がありました。その彼女たちの避妊法と、そのうちの実際何人が妊娠していたかという妊娠率を調べました。女性は10代ですから、10才から19才まで、職業ではやはり高校生が一番多い。そして、たとえ生理痛で来ても、過去に性交の経験がある人は全部このデータに入れていますので、若干妊娠率は低く出ています。ですから、絶対数より、比較を聞いてほしいのです。そして、相手の男性です。私は若年の性というと、いつも女の子の事ばかり言われるのが不満です。相手もちゃんと見ないといけない、と。だから、私は、必ず相手についても尋ねます。

 10代の少女達の性の相手の男性は半数を超えて、20才以上の大人です。職業で言うと、圧倒的に、4人のうち3人、75%が社会人でした。

 一番多いのが避妊していなかったと言うもの。避妊していなかった人の妊娠率は38%。次に、コンドームを使ってはいるけれど、「使ったり使わなかったり」するというもの。コンドームは多くの人が使ってはいますが、でも、毎回ちゃんと使っていない。実にちゃらんぽらんな使い方をしているのです。この人たち妊娠率が34%。避妊していなかったという人とたった4%しか差がありません。と言うことは、一回でも手抜きをすると、ずっと避妊していないのと同じような意味になってしまうんだよ、ということなのです。そして、これまた、困ったことなのですが、すでに述べました。アダルトビデオの影響だと思います。膣外射精。これの妊娠率が29%。やはり100人中30人近くが妊娠していました。

 さすがに、コンドームを毎回かかさず、ちゃんと使ったと言う人は、ぐっと妊娠率は低く、それでも13.5%という数字が出ました。この方達はお気の毒で、「どうして?ちゃんと避妊していたのに。」と嘆きます。どうしてと言っても。コンドームの避妊率は一年間で85%と言われています。100カップル中15カップルに妊娠が成立すると言うことですね。それと本当に近い数値、13.5%と言う数値が私たちの所でも出ました。

 中には、コンドームが破れたとか、はずれてしまったという気の毒な方もいます。もしも将来、レイプされたとか、コンドームが破れたとか、ハプニングが起こった時、その時には出来るだけ早く、遅くとも72時間以内にできれば48時間以内がいいのですが、産婦人科に駆け込みなさい。緊急避難としての緊急避妊薬を処方して下さるでしょう。でも、「避妊しないでセックスしたから、薬を下さい。」では、ダメですよ。これが避妊法だと思ったらいけません。大量のホルモンをどーんと飲みますので。はきけがしたり吐いてしまったり大変なのだけれど、それでも、レイプされた、妊娠、中絶という二重三重のダメージよりは、それよりはせめて妊娠だけでも防ぎましょうとしてあるものなのだから。

 それから、安全日、危険日、いわゆる荻野式。これほどダメなものはありません。人間の体は機械じゃないのだから。機械だって時々は故障するのに、ましてや、女性の体は微妙なホルモンで左右されているのだから。それも、脳から出るホルモンに。ちょっと憂鬱なことがあったなら、ぐっとホルモンの出が押さえられたり、わあっと興奮すると、わあっとホルモンが出たり、ということが、日常的に起こることなのです。だから、女性の体はいつでも妊娠可能な体と思っていつも避妊しなければならないものなのです。安全日危険日で避妊したという人は少なくて、9人しかいなかったので、統計的意味を持ちません。(危険な時だけコンドームという人はコンドーム時々という所に入れましたから)だから参考までにですが、9人のうち、実に7人が妊娠していました。77.77%。こんなの、避妊とは言えません。

 こんなものなのですよ。多くのカップルが沢山こどもを産まなくなった今、避妊というのは、とてもとても大切なものなのだけれど、でも、未だに100%安全で100%確実な避妊法というのは、ザンネンながら、まだないのです。ピル、経口避妊薬、これは、女性が確実に飲んでいれば、まず確実に避妊ができる、と言う意味で、女性には大きな福音なのです。次回、ピルについて話します。

(今日、福岡空港から、ソウルに行きます。台風が心配なのですが。ソウルのホテルから、ブログが送れるでしょうか。パソコンはもって行きます。どうしても、今週中に性教育について、きっちり話し終えておきたいので。ピルのこと。出会い系サイトのこと。それから、大人の性についても。ソウルで頑張ってためして見ます。送れなかったら、ザンネンだけど、帰ってからまた送ります。)

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コメント

大人の私でも、知らせてもらえない情報でした。もっとオープンに提示すべきでしょう。
避妊は閉経するまでずっと必要です。数人子どもを産んだら、今の世の中育てきれないから避妊しなければなりませんもの。
中学生のうちに基本を教われば、一生使える知識ですよね。
必要な知識なんだから、一般的に広く認識させないといけませんよね。

投稿: 文月 | 2007年9月16日 (日) 14時23分

 はじめまして。高校時代(遡ること15年ほど前…)に先生の講演を拝聴した者です。
 当時は冒頭の映像に軽くショックを受けましたが((^-^;)何せ、本当に無知だったもので。)、あの時に先生のお話を聞くことができたことを今になっても本当に幸せだったと思っています。 そして、偶然こちらのブログに巡り会え、先生のお話をもう一度聞けることに感動すら覚えています。 どうぞ、自信が無くなりそうなんておっしゃらないでください!
 私の中には、あの時から先生のお話がずーっと流れております。お陰様で、夫ともよい関係を築くことができております(^_^) もちろん、先生に教えていただいたことは子どもにも少しずつ(年齢に合わせて)伝えていこうと思っています。

 もう一つ…実は、同じ高校時代に長谷川先生にも教えを頂きました。 クラス全員が先生を慕っておりました。 河野先生の本を拝読しましたところ、長谷川先生は永眠されたと知り、ご冥福を祈るばかりです。 本当に優しい先生でした。みんな大好きでした。

 話が前後しますが…次回のピルの話、楽しみにしています。今とても知りたいことです。

投稿: うさこ | 2007年9月17日 (月) 01時20分

野球で相手チームの三割打者といえばしょっちゅうヒットを打たれてる観があります。

いい加減な避妊の妊娠率(打率)とはかくも高いのだと驚きますね。

こどもが欲しかったらそれでよいがそうでなければ・・

相手の男性が社会人が圧倒的というと、この人は社会人として恥ずかしくないのか疑ってしまいます(怒)

入社試験に科目で義務づけますか(笑)

投稿: さとうしゅういち | 2007年9月17日 (月) 02時24分

私は今、66歳ですから、当然のように「純潔教育」という教育しか受けておらず、家庭教育においても性教育ましてや避妊などについて教えられていませんでした。
しかし、私は結婚後ストレスのために拒食症のようになり、無月経を経て不妊のためのホルモン治療をあちこちで受け増した。その結果、失敗も多く薬を飲まなければ生理がなくなりました。その後、夫の仕事で外国へ居住すること2年間、その間は、薬を飲まずそのままにしていたら、1年半後に自然に生理が始まりました。そして・・・結婚20年目41歳の時に不妊の原因が分かり(プロラクチン異常)、治療をしたら、すぐに妊娠しました。だから、私にとって、それまでは避妊の必要はなかったのです。それどころか、多くの産婦人科を転々として言われたことは、妊娠は7つの関門の一つでもダメであれば妊娠をしない、ということでした。
したがって、今日の河野さんのブログを読んで、これほど簡単に妊娠するとは知りませんでした。診察を待っているときにカーテン越しに「中絶します」という人の声を聴き、いつも情けなく涙していたことを思い出しました。41歳だったので、これ以上出産しないようにといわれ、それ以後閉経するまでは、夫が避妊してくれました。

投稿: eastwaterY | 2007年9月17日 (月) 17時52分

はじめまして。30代後半の主婦です。さかのぼって拝見しましたところ、公立高校の教師がクビになった。とありましたが、もしかして広島の西の果ての高校ではなかったでしょうか。実はわたし、この高校にかよっており、大好きな先生がいらっしゃったのですが、その方に河野先生のお話をたくさんしていただきました。17歳の私は当時の彼(現在の夫)に恥ずかしがらずに「妊娠はしたくない」とつげ、彼もわかったくれてそうなってからもずっと避妊はしてくれていました。しかしある日何かが突き刺さるような痛みがあり、立てなくなってしまい、救急車で運ばれ、子宮外妊娠と診断され、左の卵管を切除しました。その後その彼と結婚し、現在は11歳、8歳の男の子、10ヶ月の女の子を授かり、しあわせにくらしています。
話がそれましたが、避妊はしていても、妊娠したり、私のように(まれでしょうけど)子宮外妊娠なんてことになったりしないように、中学生くらいから、しっかりと性教育はしていただきたいと思います。私も子供たちに今から少しずつ、教えていきたいとおもいます。先生、お忙しいとは思いますが、応援していますのでがんばってくださいね。長文失礼しました。

投稿: はな | 2007年9月18日 (火) 22時08分

先生お疲れ様!
忙しい合間にこんなに沢山の記事をUPして下さってありがとうございます。私もふと気づいて、昨夜自分のブログに「皆さん読んで」と言う記事を書きました。一番上の孫が小5、もうぼちぼち娘が話してるかもしれませんが私も一人の大人として話そうと思っている矢先、ここに来て一気に読んで自信つきました。
私も性教育は早く始めた方がいいと思っていました。と言うのは「反抗期」になると親の話が素直に聞けなくなる時期なのでそれまでにはきっちりと話したいなと思っていました。私が学校で習ったのは小学校5年生。初潮もこの頃だったので、親からもすぐに話をしてもらってこの時期を難なくクリアーしていきました。親に習い私も小学生の時から初潮のための準備をし、祖父母共々お祝いをして「妊娠する身体になった事」の話をしました。笑っちゃうのは息子が「お赤飯炊いて祝おうよ」と、言ったことです。続き楽しみにしています。

投稿: 初ちゃん | 2007年9月19日 (水) 21時45分

文月さま
コメント、ありがとうございます。お返事、遅くなって済みませんでした。昨夜遅くに帰って来て、今日は、朝からハードに診療してました。私は本当に当たり前のことを言っているつもりなのですが。それが過激だとかで、バッシングされてしまってとてもザンネンなのです。でも、子育てをしている方達は、分かって下さると思うのですが。やはり、しっかりおとなの方達に情報を発信して行こう思います。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2007年9月20日 (木) 02時20分

うさこさま
ブログを読んで戴いて、そしてコメントも書いてくださってありがとうございます。きっと、呉の高校の生徒さんだったのですね。その後も度々話しに行っていましたが、もう、お声がかからなくなりました。父は、三年前に亡くなりました。まだ時々寂しくなります。でも、父のことを覚えて下さっていて、本当にうれしいです。ありがとうございました。また、時々ブログ読んで下さいね。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年9月20日 (木) 02時25分

さとうしゅういちさま
コメント、ありがとうございます。
本当にそうなのです。社会は女の子達がふしだらに、とそう思っているようですが。男性と女性と両方見なければ。でも、その男性達だって、まともな教育を受けていないのですから。一体、だれの責任なのでしようか。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年9月20日 (木) 02時30分

eastwaterYさま
ご苦労なさったのですね。でも、ご苦労のおかげでお一人でもお子様を持たれて良かったですね。まだまだこのような情報を今週中発信させて戴きます。よろしくお願いします。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年9月20日 (木) 02時34分

はなさま
コメントありがとうございます。そうなのですか。私の話をして下さった先生ってどなたなのでしょう。私が書いたクビになった先生は、中部地方の県の国語の先生なので、広島の西の高校とは違うのです。でも、広島にそんな先生がいらっしたことを知ってとてもうれしいです。子宮外妊娠というとても大変な事態を乗り越えられて、今、良かったですね。どうぞ、これからも情報を発信しますので、よろしくお願いします。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年9月20日 (木) 02時39分

初ちゃんさま
コメントありがとうございます。それに、ブログで宣伝して下さって重ねてありがとうございます。このブログの発信で少しでも性教育に対しての理解がふかまれば、と思って書いているのですが。どうぞ、今後もよろしくお願いします。  河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年9月20日 (木) 02時41分

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