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若者の無知(6.避妊、経口避妊薬)

 経口避妊薬、ピルは女性が欠かさず飲んでいれば確実に避妊できる、という面で女性にとっては大きな福音です。1999年9月やっと日本でも当時の厚生省がその販売を許可しました。欧米に遅れること40年です。やれやれやっと、と思ったら、もう、びっくりしました。マスコミが「副作用」の報道をどっさりとしたのです。まるで、ピルイコール副作用、みたいに。

 欧米の女性達の40年間にの渡る犠牲のおかげで、ホルモンはとことん改善され、量も減らされ、ほとんど副作用を考えなくともいい所まで来ています。 ただ、飲んではいけない人というのがあります。例えば「35才以上でタバコを一日15本以上吸う人」「コントロール出来ない高血圧の人」とか、ずらりとと病名が並んでいます。それが分からなかったからこそ、それまで犠牲が出たのです。でも、それらが分かった今、健康な若い女性が飲むのには、ほとんど副作用は考えなくともいいところまで来ています。少なくとも、「人工中絶の副作用」に比べれば何百分の一だと言ってもかまわないでしょう。

 それと、副効用として、月経痛の改善や量を少なくするということで、子宮内膜症の方などは、ピルによって救われた、と言われます。実際今内服している方達に全国の産婦人科医が一斉にアンケート調査をしました。それによると、ピルによって改善した事は、1.月経が規則的になった2.量が減って楽になった3.月経痛が改善したと言うものが上位三位で、その次の四番目にやっと「男性任せでなく、自分の意志で避妊が出来る様になった」と、避妊が出て来ます。

 今、ビルを処方している多くの医師は、受験生には夏ごろから、ビルによる月経のコントロールを勧めています。月経がきつく、試験とぶつかりそう、と言って直前に来られたのでは、いわゆる中用量ピル、ホルモンの多いピルでコントロールしなければならず、体に負担がかかってしまいます。それよりも、低用量ピルでコントロールをしたほうがよほど楽に無理なく出来ます。

 でも、まだ低用量ピルについて、大人達の理解が得られていません。月経がとてもきつい高校生がピルでコントロールをしていました。それによって量が減って貧血が改善されました。痛みも痛み止めで対処出来る所まで来ました。それで何とか楽になっていたのに、それを知った保健室の先生が強く止めて、本人が途方にくれたこともありました。

 恋人のいるO.L.の方がピルを飲んでいることが母親に知れ、怒って止められたため、飲むのを辞めざるを得なくなりました。そしてあっという間に妊娠してしまい、中絶をせざるを得なくなったこともありました。

 ビルは妊娠を防いでくれます。「もしも、将来確実な避妊がしたいと思ったなら、その時にはピルの処方を求めて産婦人科に相談に行くのも選択肢の一つである」ということを私は、若い人たちにも知ってもらいたいと思います。

 ただし、ピルは望まない妊娠は防いでくれますがHIVなどの性感染症の予防には全く無力です。

「これからの君たちの時代だから、望まない妊娠はしない、させない。のと同時に性感染症の予防ということも本気で考えなければならないと思います。」

「結婚しました。妊娠しました。赤ちゃんを産みます。母子手帳をもらって来ました。性感染症に罹っていました。こんなのが、今、とても多いよ。」

「独身時代に性感染症に罹っていることを知らないまま結婚し、妊娠した」「性感染症に罹っていることを知らないまま結婚し、妻に移してしまった」「こんなことは防ごうと思ったら防ぐことが出来るのだから」

 「性感染症の予防は?二つですね。一つは?セックスをしないこと。完璧な予防だね。そして、もう一つは?確実にコンドームを使うこと。コンドームはHIVなどの性感染症を防いでくれます。」「だから、君たちはコンドームのないセックスはしないこと。コンドームのないセックスは、ふたりで、さあこれから赤ちゃんを作りましょう。妊娠を目指しましょう。と言う時の為にとっておきなさい。」

 「でも、わかりますね。コンドームは性感染症は防いでくれるけれど、妊娠は100%ではありませんね。これは、いかに妊娠しやすいか、という証でもあります。だから、もしも将来君たちカップルの双方がどちらか片方ではぜったいにダメですよ、双方が強く性を望む、そして、実際、セックスもできる状況になったとしたら、とにかく、二人で話し合いなさい。自分達は今、妊娠を望むのかと。もし、ダメなのなら、コンドームプラスもう一つ。世界的には、避妊は確実なピルで、性感染症の予防はコンドームで。この両建てで行くべきとなっています。でも、そこまでは言わないとしてもコンドームプラスもう一つ。もう一つはふたりで話し合って決めなさい。そして、毎回欠かさずコンドームプラスもう一つをきっちり実行して、初めて確実な避妊と性感染症の予防の予防が出来るでしょう。」

「それくらい厳しいものなのですよ。甘いものではないよ。そして、大切なのは、そこまでできるか?出来る関係であるか?と言う事だと思います。もしも、二人でそこまできっちり話し合って実行出来るとしたら、その二人はコミュニケーションの取れ合ったいい関係なんだろうね、と思います。でも、若者の多くは、妊娠したらどうする?しない為にはどうする?という話し合いすらしないままに、行動が先行している、とても貧しいセックスをしている、と、そう思います。」

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コメント

低用量ピル、安心して使えるのですね。
ピルの副作用が怖いイメージがあって、
今まで使いませんでした。
近々クリニックへ伺っても良いでしょうか?

ピルへの正しい知識も、早く広まると良いですね。
まず大人たちへ、そして若い人達へ・・・

投稿: emi | 2007年9月21日 (金) 11時46分

ピルはあわない場合があることもよく知っておかなければ、大変です。私は月経周期が早くで貧血だったので 市内の婦人科に行くと ピル(オーソという名前)を処方してくださいました。その時には副作用等説明はなく安心して飲める感じでした。
10日ぐらい飲んだ後 腕・腿に小さな発疹。少しかゆい。治ったり出たり。湿疹はお腹にも出始めました。暑いし汗で湿疹かな、 何か食べ物かと思ってました。ピルはそのまま続けて一週間服用しつづけました。そして 朝起きたら 指、手首、ひじ、足の指、足首、膝の激痛と浮腫。何の病気なのかと思いました。痛くて歩くのも大変でした。
原因がわからず考えたのが 【薬疹】???
すぐに婦人科に電話、中止してくださいとの支持。
しかし、じんましんの症状出た後もピルを一週間も飲み続けたおかげか 体重は一夜にして 浮腫で四キロ増。症状もかなりひどい。
お腹もパンパン。肝臓も痛くて腫れて。もとにもどるまで 約二週間かかりました。
決して万人に安心という薬はないと確信しました。
薬疹も飲んだその日に出ればきっと気が付いたのですが、10日くらたたった後だったので 気がつくのが遅れました。 処方されるときには 必ずこのような説明はほしいと思いました。もう怖くて ピルは飲めません。

投稿: ぷくぷく | 2007年9月21日 (金) 20時04分

河野先生こんばんは
☆ピルについても書いてくれましたねーここまで書かないとちゃんとした性教育講座にはならないですよねー
☆私自身は、男でもあるし、年齢的にも避妊に関係ない年になりつつありますが、政治家や官僚、メディアが、欧米ではあたりまえのピルについて、教えまいとしている「非合理主義」にがまんがならないのですー
☆先生、できるだけ多くの女性、カップルにピルを処方してあげて下さい。そういうお医者さんが増えると、自然と「ピル鎖国」状態は解消されるでしょう

投稿: 空き三角 | 2007年9月21日 (金) 20時39分

emiさま
私は、あなたのような方には低用量ピルがピッタリだと思いますよ。どうぞ、いつでもいらっして下さい。ご相談に乗りますよ。ピル処方はまず本を読んで勉強してもらってからですが。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年9月23日 (日) 00時48分

ぷくぷくさま
大変な目に合われましたね。ピルに対してのアレルギーが出たのですね。このような発疹が出る方というのは、1000人のうちの3人の頻度であるのですが、その一人になってしまったのですね。そして、アレルギーのある人は「ピルを飲んではいけない人」の第一番目に記されています。ただ、初めて飲まれた時には、アレルギーがあるかないかが分からないのが難点です。飲んでいるうちにもしも発疹が出た時にはただちにストップしなければならないのですが、内服が続いた為に大変なことになられたのですね。私が書いたように、「飲めない人」というのがあって、すべての人が飲める訳ではないのです。もう、あなたはこれからは、「飲んではいけない人」の中に入りますので、決して飲めません。それから、このような副作用の説明もなしに、処方をするドクターというのは親切ではありませんね。どうぞ、これから、どこ病院にかかっても、産婦人科だけでなく、内科でもどこででも、「ピルのアレルギーがあります」ということをおっしゃってくださいませ。それから、同じコメントがお名前をかえてありましたので、一つだけアップさせて戴きました。貴重な体験のコメント、ありがとうございました。 河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年9月23日 (日) 01時03分

空き三角さま
こんばんわ。この前のコメントの私の返事読んで戴けましたでしょうか。順番にきっちりと話したかったのですが、この間ブログも読んで戴けましたでしょうか。まだまだバッシングがつづくであろう情勢です。が張りますので、どうぞ、これからもよろしくお願いします。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年9月23日 (日) 01時08分

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