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選挙から一月

私は、全共闘世代である。大学時代は学生運動真っ盛りだった。私は救援対策の役を担っていた。逮捕者が出た時には、差し入れに行ったり、弁護士事務所の事務員のように保釈の申請書を書いたり、面会に行ったり。あのころはまだ貧しかった。学生の多くが食べるにも事欠いて、私が食べ残したラーメンを「僕に食べさせて」と食べる学生もいた。私は実家から通っていたので、家に帰れば食事は常にある、恵まれた存在だった。お正月、実家に帰ることも出来ない学生達を何人も家に連れて帰って、母がみんなにおせちをごちそうしてくれたこともある。

 そんな一人、逮捕され、裁判を抱えていた学生に、ある日「僕の下宿に来て」と言われたことがある。ついて行った所は、学生向けの木造の貧しいたたずまいの一部屋だった。そこには、部屋には全く似つかわしくない大きなエレクトーンが置いてあって、驚いた。当時はまだエレクトーンは珍しい頃だ。そして、彼は私に背を向けて、エレクトーンの前にすわり、弾き始めた。素晴らしい演奏で、本当に私はびっくりして、ただ呆然としていた。彼がこんなものを弾くなんて、全然知らなかった。そして、弾き終わると「これ、明日売る」と言ったのだ。本当に貧しい生活で、アルバイトで学費も生活も自分でしていた人だったから。エレクトーンを売るしかなくなったのだろう。

 私は何も言えず、ただ曲を聞いただけで。本当に気の利いた一言でも言えば良かったのだけれど、胸が詰まってしまって。ただ「ありがとう」だけで帰ってしまった。

 指一本触れることもなく、握手すらすることもないままの彼との出来事であったが、そのうち、私の記憶の奥深くに潜んでしまっていた。

 そして、選挙戦のまっただ中。ブログのコメントに応援のメッセージと、なんだか、昔の私を知っているような記述、そして、最後に「永遠の片思い」と書いてあって、どきっとした。だれだかわからないままに、彼のアドレスを開いてみた。それは音楽関係のホームページで、しかも大変な活躍をしている団体で。コメントの主は、その主催者であった。そして、改めて名前を見て、アッと、その出来事を思い出した。そう、あの彼がこんなに立派になってる!

 私は返事を書いたけれど、それっきりだ。つかの間の心の交流で、それだけで、私の胸はいつまでも温かい。

 今日は、選挙から丁度一月。もう、ずいぶん前のような気がする。思いがけず、何人もの方が職場に来てくださった。応援してくださった方々だ。皆さん「一月ですね」と。そして、私が元気なのを見て、「良かった良かった」と安心して帰って行かれた。皆様、本当にありがとうございます。心はまだ時々ずきずきとするけれど、元気に日々を過ごしております。沢山の方々に感謝しながら働きつづけています。

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コメント

世間は狭いですね。

よいお話でした。

わたしはまだ人生を河野先生の半分しか生きてませんが選挙の前に十年ぶりに大学の同級生から電話がかかり嬉しいものがありました。

私がかつて最初の新党騒ぎ(笑)を起こしたときついてきてくれた唯一の男でしたんで嬉しいです。

投稿: さとうしゅういち | 2007年8月29日 (水) 23時50分

 あの時代、我が文学部には「フラレタリア同盟」なるグループがあった。もちろん何処かの党派の細胞でもなければ、サークルでもない。

 勝手にそのように名付けられた同じ運命をたどった男?達の総称である。振られても振られても諦めきれない委員長(現・某市役所の偉いさん。これって今ならストーカーと言われるのかも知れませんね (笑))。「告白」する勇気が無くて(振られるのが怖くて)、ただ側にいられればいいやと、何となくいつもガードマンのようにまとわりついていた副委員長(某大学教授。これもストーカーかな?!)。相思相愛なのにいつもすれ違っていて、結局それぞれの道を歩いたもう一人の副委員長(現・某高校教諭)。

 そして実は、かの有名なshiozyもこの有力メンバー!(本人には自覚がなかった可能性があるので、とぼけるかも知れませんが・・・)。その他諸々、何で文学部はこんなに、振られる、片思い、うじうじが多いんや!と恨みたくなるくらい同盟員は多かった!

 そしてもちろん言うまでもなく、みんな、それぞれの伴侶を見つけてそれぞれの人生を歩んでいるが、何処かに「69年のあの熱い思い」が種火のように残っている。

 私もまた、河野さんの応援に便乗して、そっと片思いの彼女(河野さんの高校の後輩かな?!)に選挙応援のはがきを書いた(公私混同かも・・・ごめんなさい(笑))。

 1ヶ月が過ぎて、河野さんにはまだまだ沢山の思いがつまっているに違いないが、何故か私には「敗北感」「挫折感」がない!すがすがしいと言っては言い過ぎかも知れないが、こんな素敵な仲間がいることを知って、充実感すら感じる今日この頃です。

 連日の講演、お仕事、あまり無理をなさいませんように(と言っても団塊の世代にはこの言葉は虚しいか・・・)。
 

投稿: yaasan | 2007年8月30日 (木) 00時01分

今日でで選挙から1ヶ月たったのですね。手伝った私としては、ずい分前のような気もするし、ついこの間のような気もしますが、河野さんご本人は、その後いろいろうるさいこともあって、大変でしたね。でも、1ヶ月目にお手伝いの人たちが、河野さんを案じて訪れてくださったとのこと。良かったですね。今日のブログの「温かな心の交流」を読んで、まだまだ若く柔らかな心をお持ちの河野さんだから、皆さんに愛され、支えられていらっしゃるのだと思いました。私も見習いますね。

投稿: eastwaterY | 2007年8月30日 (木) 00時16分

さとうしゅういちさま
本当に、昔の友人というのは、いいですね。すぐに前の状況に戻って話しが出来ます。いろいろな人たちと再会できたのは、今回の選挙で何よりうれしかったことです。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年8月30日 (木) 23時53分

yaasanさま
久々に笑いました。プロレタリアもじってフラレタリアですか。さすが文学部ですね。shiozyさんはこのコメント欄、読んでいるかしら。そんな青春時代を過ごして、本当にあっと言う間にこの年齢になってしまいました。でも、今、つくづく生きてて良かったなあ、と思っています。当時の私の友人達、何人も自ら命を絶ってしまいましたから。こな風にほのぼのしたものを感じることが出来るのも、生きていればこそなのですね。いつも、暖かいコメント、ありがとうございます。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年8月31日 (金) 00時00分

eastwaterYさま
ホントにいつもあたたかなコメントありがとうございます。いつか選挙をともに闘ってくださった方達と会をもちたいなあ、と思っています。いろいろと話をしたいです。河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年8月31日 (金) 00時03分

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