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ドクハラ

 診療の場では、毎日さまざまな女性達に出会う。初めて出会う人もいるし、長い付き合いの人もいる。

 14才の時からもう15年付き合っている人がいる。初めは、陸上部でのハードなトレーニングで無月経になっての治療だった。そこから、いろいろとあって、一人子どもを生んで、でも相手の暴力、DVで苦しんだあげく、やっとの思いで離婚。それから一人でこどもを育て、またこの度新たな出逢いがあり、結婚。彼女にとって第二子を出産する。妊娠の34週まで私のクリニックで健診をした。そして第一子を生んだ病院に紹介し、出産を依頼した。あらかじめ彼女自身が出産の予約は取っていての転院である。大きな病院は土曜日の診療はない。うちでは、土曜日も夕方まで診療をするから、仕事をしている人には都合がいい。だから、産休に入るまで健診は当方で、という人は結構いる。

 紹介状を書いてしばらくして、その彼女が話があるとやって来た。そして私の前で涙ぐんだ。診療に行ったら、もう、薬はのまなくていい。すぐに産んでもいいから、と言われた。彼女はハードな仕事をしていて早産気味で子宮の収縮を押さえる薬を処方していて、そのことも紹介状に書いている。そして、胎児の体重はどれくらいですか、と尋ねたら、それには答えないで、「胎児の足が長い。お父さんが違うからだろうな」と言われたと。子連れで健診に行っていて、上の子の前でそう言われたと。それだけは言って欲しくなかった、と泣く。一子と二子の父親が違うからと言って、それはないだろう。まして、それをこどもに聞かせることはさらにないだろう。全く、無神経というか、意地悪というか。で、もうそこには行きたくない。どこか今からでも産ませてもらえる病院があるだろうか、という相談であった。もちろん、もっとやさしく対応してくれる個人の医院に紹介した。

 別の女性。とてもとても苦労してやっと一人の子を得ることが出来た。そして、この度リウマチになってしまったと。かかりつけのドクターが大きな病院のリウマチ科に紹介してくださってそこで診療を受けた。そしたら、なんの病状の説明もなく、副作用の説明もなく、ただ、薬を飲むように、ということであったと。で、それらを尋ねたら、「飲みたくないのなら、飲まなくていいです。でも薬を飲まないのだったら、うちには来なくてもいい。」と言われたと。で、もうそこには行きたくなくって。私がひどいリウマチに罹って、その体験記を本に書いていた、そのドクターはどこなのかを私のクリニックの受付で尋ねて、そこに行ったと。そしたら、もう、診察の方法から違って、すごく丁寧に見てくださって、詳しく説明してくれて、すっかり安心してそこで治療をしてもらえる、ということであった。「まあ、私はあなたがそこにかかったなんて、知らなかったわ。いえばちゃんと紹介状を書いたのに。」といったら、「河野先生が本に書いていた、それを読んでここに来ました」と、自分で言いましたから、という。

思わず「きゃーっ、どうしよう。」と言った。私の治療の体験記ではあるけれど、そのドクターの診療や会話など、かってに書いている。そしてそれを何の連絡もしていない事に、ハタと気づいた。で、あわてて「かってに書いてすみませんでした」と手紙を書いて、本のそこの部に付箋を付けて、彼女に先生に渡してもらうようにことづけた。冷や汗をかいてしまった。まあ、ドクターの悪口を書いた訳ではないし、こんな素晴らしいドクターがいるということを書いたが故に、彼女はそのドクターに出会うことが出来たのだわ、とかってに自分でいいわけをする。

 それにしても、あまりに会話に無神経なドクターがいるものだ。これからは医学部では、コミュニケーション学とか、アサーションとか、会話の講座を作るべきだと思う。患者さんにとっては言葉一つで病状が良くなったり悪くなったりもする物なのだから。そう、私自身にもいいきかせながら今後の診療もしたいと思う。

 秋葉事務所では今、宛名書きや袋詰めなど、単純な作業で大わらわだ。ボランティアの人も次々来てくれる。中には、通りがかりの人で「何かお手伝いさせてください」と飛び込んで来てくださる方もあって、うれしいことだ。ただ、日によって人が多かったり足りなかったりする。それがボランティア選挙の難しいところでもあるのだが、仕方のないことだ。

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コメント

診断できる医師の少ない脳脊髄液減少症の患者は、多かれ少なかれ大抵の人がドクハラを受けているようです。
整形外科・内科・婦人科。。。
あっちこっちで「異常なし」「気のせい」
あげく精神科に回されてしまうのです。
私はいわゆるドクターショッピングはしていませんが、整形外科での「異常なし」には困っていました。

昨年、脳脊髄液減少症の検査を予約している段階で自宅療養中に脱水症状らしき症状になり地元の医院へ行ったとき、検査を受けることを医師に言うと「ああ、あれね」と、すごくバカにしたような言い方をされて傷つきました。
思考力理解力は落ちるし、鬱にはなりやすいこの病気・・・でも、幸い(?)お気楽な私は一時的には傷ついても引きずることはほとんどありません。
でも、症状がもっと重い人や鬱状態の人は、意思や看護師の些細な一言でどん底に突き落とされたような気持ちになってしまいます。

心身ともに弱っている人と接する仕事というのは、それだけ気遣いが必要なんですけどね~

投稿: アクビちゃん | 2007年3月14日 (水) 13時09分

アクビちゃん様の言葉はとても重いです。私はブログにあんなことを書いたけれど、これは単なる言葉使いの問題ではなく、社会的に弱い立場にある方(高齢者やこども等)や、病んでいる人たちに対する対応の仕方がちゃんと教育出来ていないということなのでしょうね。それには、ドクターになる人の性格や価値観いろいろとあるとは思いますが、でも、ある程度の人格を持った人でいて欲しいと思います。
どうぞ、またおつきあい下さいませ。
             河野美代子

投稿: こうのみよこ | 2007年3月14日 (水) 18時11分

アクビちゃんの経験は重いです・・。本当に。
わたしは子宮筋腫でした。最初の病院では「異常なし・気のせいじゃない?」
「自分で体調を悪くしている」「大げさに言ってるんじゃないか」と散々でした。
次の日、他の病院へいくと「筋腫があります」と・・。
調べると内膜症もあり、一体最初の病院はなんだったんだ・・と思いました。
「生理痛が重いのはあなたの子宮は曲がってるからでしょ。しょうがないよ」と・・。
これも「この程度ならなにも心配ないですよ^^」と。
同じ医者でこれほど違うのはななんでだろ?と思いました。今は完治したので心配はないのですが、
もう少し言葉に配慮があってもいいような気がします・・。

投稿: ふか | 2007年3月14日 (水) 22時09分

ドクハラについて先生が書いてくださるのは
とても嬉しいです。元気で病院へかかる方は滅多にいらっしゃらない訳ですし 何かしら不安を抱えて受診をします。恐怖心を煽るだけならまだしも言葉の暴力は辛いですね。何度かありましたが
今ではドクハラ先生に会うと「じゃ、結構です」っとその病院へ二度と行かないようにしています。まっ、母は強しですね。
すみません、今日ドクハラについて ブログを書く際に河野先生のブログへリンクを貼りました。適切でない場合は申し訳ございません。

投稿: masami | 2007年3月16日 (金) 13時00分

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